第11話
「おかえりなさいませ、ご主人様。エミリー様もグウェン様も、ご無事で何よりです」
「ただいま、ミーユ」
「ただいまです〜。うー、あれ以来ミーユちゃんはちゃん付けで呼んでくれないです〜」
「ミーユちゃん、ハルキの前でもちゃん付けで大丈夫だからね。もうすぐ一緒に住むんだし」
「エミリー様、グウェン様ももうその話は終わりました。奴隷の私には様付けで呼ばせて頂く方が楽なのです。なのでこれからもエミリー様、グウェン様と呼ばせて頂きます」
「お前らももう諦めてミーユの好きにさせてやれよ。
ミーユ、二人も家で食べたいらしいんだけど大丈夫か?」
「はい、問題ありません。先にお風呂になさいますよね。準備出来ております」
「うん、ありがとう」
「「お風呂っお風呂っ」」
エミリー達がまた歌い出した。
「良いよ、二人共先に入りな」
優しい声でハルキが二人に先に風呂を勧めた。
「「はーい」」
二人が風呂へ向かいミーユは夕飯の支度をする。
しばらくたってエミリー達が湯船に浸かった頃に今日テイムしたスライム達を先頭に家中の従魔達が風呂の前に列をなしていた。
「ハ、ハルキー!」
「これ、みんなどうするですかー?」
風呂から二人が大声で叫んでいた。風呂の入口に顔を出したハルキが笑いながら二人に告げる。
「スライム達は勝手に入るよ。バニラと雲切隼はちゃんと洗ってやれ。最後にお湯を張り替えな」
「の、覗きなのです〜」
「ハルキ、レディのお風呂に入ってきちゃ駄目だよ」
「お前ら最悪なんかされても良いと言ってただろう。風呂覗かれた位でワイワイ言うなよ。
もうすぐ一緒に住むんだから」
風呂から離れたハルキの後ろからスライム達の相手にワチャワチャになる二人の声が聞こえてきた。
「ご主人様、私が従魔達を洗いますのに」
「良いんだよ、あいつらもちゃんと慣れといてもらわないとな。一緒に住むんだから」
「かしこまりました、ご主人様」
ミーユはあくまでもハルキの奴隷であった。
「ふー、なんかお風呂入って疲れた気がするです〜」
「てかスライムもバニラ達も綺麗好きなんだね。それにハルキ、バニラって角生えてきてるよね?」
「ああ、最近少しずつ生えてきたんだ」
「狼系の魔物で白いのは特に珍しく無いから、大牙狼だと思ってたけど、角生えるって違うよね」
「ああ、エンペラーウルフって種類らしいな」
「「……」」
「ハルキ、それドーラさんとかに伝えてる?」
「いや、特に聞かれてないから何も言ってないけど」
「ハルキ、エンペラーウルフはワイバーンなんかよりよっぽど珍しいです。しかもメチャクチャ強いらしくてテイムするなんてあり得ないです」
「うーん、最初は本当に小さかったからな。手の平で抱えられる位に。
そうか〜、バニラ。お前そんなに珍しいやつだったのか〜」
バニラの頭を撫でて可愛がるハルキ。
「ワンッ」
そうだよ、もっと撫でろとバニラが吠える。
「ハルキ、ドーラさんにすぐに伝えた方が良い。ドーラさんの立場でバニラがエンペラーウルフだって知らなかったらまずいかも知れない」
「そんなもんか?」
「冒険者がワイバーンをテイムしてたらギルドの職員は知らないじゃ済まないよ。
エンペラーウルフはワイバーン以上にレアな魔物なんだよ」
「そっかー。じゃあ一応手紙書くよ」
ハルキがサッと手紙を書いてクラウドに持たせる。
「ミーユ、二人に飲み物出しといて。俺は今から風呂入るから」
ハルキが服を脱ぎ出すとミーユが入ってきて手伝い出した。
「二人は?」
「飲み物はお出ししました。ご主人様の背中を流しに行くと言ったら少し固まってましたが、いつもの事ですのでと」
「そうか。どの道これから一緒に住むなら慣れてもらわないとな。逆に嫌ならここに越して来るの諦めるだろう」
「はい、ご主人様」
とはいえ流石にエミリー達に食事を待たせたまま長湯をする訳にもいかず、いつもより早めに風呂から上がるハルキ達。
風呂から上がったハルキの目に入ったのはなんとなくモジモジとした二人だった。
すぐにハルキの側にクラウドがやってきてハルキはドーラからの返事を読む。
「ドーラさん、今から来るってさ。ミーユ、食事もう一人増えても大丈夫だよな?」
「問題ありません、ご主人様」
「エミリー、グウェン、もう少し待てるか?」
「う、うん。待てるよ。ね、グウェン?」
「だ、大丈夫なのです」
「そうか。ミーユ、ビールちょうだい」
どこかぎこちない二人をスルーしてミーユにビールを注いでもらうハルキ。
「二人はビール? ワイン?」
「ううー、飲まないと落ち着かないのです。ワインくださいなのです」
「私はもっと強いの飲む。ウイスキーはある?」
「あるけど大丈夫かー?」
ハルキの言葉も聞かずにお酒に逃げる二人。ハルキとミーユの風呂事情に思った以上のショックを受けていた様だ。
「コンコンコン」
「ハルキ、いるか?」
ノックと共に玄関からドーラの声がした。
「私がお連れします」
すぐにミーユが出迎えて食堂に案内する。
「悪い、今から食事だったか?」
「構わないですよ。ドーラさんの分も用意したのでどうぞ」
「ああ、すまない。それで、バニラは?」
「今呼びますね、バニラこっち来てー」
すぐにやってきてドーラの前でお座りの姿勢になるバニラ。ドーラが額を見て撫でる。
「どうやら本当にエンペラーウルフらしいな」
「ワンッ」
そうだよ、とバニラが吠える。
「ハルキ、バニラをテイムしたのは何処だ? 実家の方なのか?」
「そう、ですけど」
「ハルキ、エンペラーウルフは特別な魔物だ。そして今までエンペラーウルフをテイムした記録は二例しか無い。
ハルキ、もう一度聞く。本当にバニラをテイムしたのは実家の辺りなんだな?間違いないな」
ドーラの余りに真剣な態度にハルキは戸惑う。だが、嘘をついてドーラがまずい事になる可能性もある。
ハルキは心を決めてドーラに伝えた。
「バニラに出会ったのは実家の近くで間違いありません。
でも、テイムはしていません。今も仲良くなって一緒にいるだけです」
ドーラが目を閉じて頷いた。
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