第9話
「おはよう、ハルキ、ドーラさん」
「おはようなのです〜」
後ろからエミリー達の声がした。
「おはよう、エミリー、グウェン。ハルキ、奥で話そう。三人共こっちへ」
朝から応接室へ呼ばれたハルキ達は依頼の内容を聞く。
「ハルキには言ったが領主からの依頼を受けてもらう。内容自体は簡単な話だ。
雲切隼とスライムをテイムしてきて欲しい。雲切隼は五羽以上、スライムは出来るだけ多くという事だ」
「雲切隼はともかく、スライムは何故ですか? 誰でも出来るでしょう」
「以前レイナ姫の前にライムを連れて行っただろう。その強さが領主にも伝わってな。
エミリー達もわかっているだろうが、ハルキを通して得た魔物は他とは色々と違う」
「そうなのです〜。ライムもメチャクチャ強いですし、ミーユちゃんのテイムしてるスライムも凄いのです〜」
「他の者がテイムしてもこうはならない。スライムはハルキが捕まえるだけで強くなるのか、それともテイムしてから強くなるのかはわからんが。
雲切隼はそもそもハルキ意外にテイムした話を聞いた事も無い。エミリー達はハルキが捕まえたのをそのままテイムしているがな」
「確かに他にいないと比べられませんね」
ハルキは納得した様だ。
「雲切隼は今のところハルキにしか捕まえられない。領主の一族とその従者に与えたいから最低五羽欲しいそうだ。
スライムはまだ誰が最終的にテイムするかは決まってないが、ハルキが関わって強くなったスライムを譲って欲しいとの事だ」
「でもドーラさん、それだと私達はいらなくないですか?」
「ハルキと一緒に捕まえたスライムの一部をお前たちがテイムして育てて欲しい。
ハルキがテイムした物とどの位差が出るか知りたいんだ。捕まえるだけで強くなるのか、テイムするから強くなるのか、それともテイムして育てるから強くなるのか。
それを知る為に検証したいんだ」
「そういう事でしたら出来る事はありそうです」
「それに雲切隼を持つのは私とお前達、ミーユとレイナ姫にうちの父。わかっているのはそれだけだ。
うちの父の雲切隼をテイムした時はハルキの雲切隼が勝手に連れて来たらしいじゃないか。
雲切隼を捕まえるのに雲切隼をテイムしている者が多いに越した事はないだろう」
「わかりました。やってみます。期間は決められていますか?」
「早いに越した事は無いが、雲切隼などそもそもどこにいるのかもわかっていないからな。
スライムは領主の部下達が一旦テイムして受け渡す予定だが。渡す時にはそれなりの強さに育っていて欲しいんだ。ハルキは今はスライムは育てていないのか?」
「田舎に後八〇匹程います。ライムには劣りますが、ミーユの連れているのと同じ位の強さですね。ですがそれを連れてくると田舎の家の守りがなくなるので。
街の近くでテイムして、家で育ててみます。
雲切隼に関してはバニラ達に探してもらいます」
こうしてハルキ達は領主の依頼を受ける事になった。バニラやクラウドが示したのは東門だった。
東門を出て何度も入った森への入口を横目に更に進んで行く。
「休憩しよう」
昼前まで歩いた所でハルキが口を開き昼食を取る。
ミーユが今朝持たせてくれたお弁当だ。
「うー、やっぱりミーユちゃんのお弁当は最高なのです」
「お前達朝もミーユの作り置き食べてるんだろう、喜び過ぎだ。そういえば、家は汚して無いだろうな?」
「なるべく何も使わない様にしてるです〜」
「ハルキ、ミーユちゃんが片付けてくれた後をそのまま使う様にしている。時々上手くいかない事もあるが」
上手くいかないとはなんなのか、ハルキはスルーして続ける。
「そのうち越して来るんだから、あんまり荷物を広げない様にな。ミーユが大変になる」
「わ、わかってるよ。大丈夫」
「そういえばスライムなら街の側でも探せばいたと思うんですがどうなのですか?」
「どうなんだろうね。バニラ達はスライムはあんまり気にしてないのかな。雲切隼のいそうな所で待ってる間に捕まえれば良いと思ってそうだけど」
「ワン」
バニラがそうだと返事をした。
「ミーユちゃんはハルキが育てたのを譲ったんですよね。私達はハルキが捕まえたスライムをテイムして、強くなるですかね。それに数もテイムできるかはわからないです」
確かにハルキがテイムしたものを譲ったミーユは十匹のスライムをテイムした。だが捕まえただけでも果たして皆がそれだけの数をテイム出来るのかはまだ謎だ。
「まぁ、とりあえずやってみよう。ただ、無理はしなくて良いからね。
スライムに関してはそもそも依頼自体は強いスライムが欲しいって話なはずだから。
検証はドーラさんが気にしてるだけだろうし」
「でも、ハルキは大丈夫なの?八〇匹もテイムしてるのに」
「ミーユとウワノ村の人に譲る前は百いたからね。雲切隼も三羽減ったし、特に問題ないと思うよ。
三日で百匹テイムした時も特に魔力の減った感じもなかったし」
「やっぱりハルキは化け物なのです〜」
「確かに。二桁だって滅多に聞かないのにミーユちゃんがスライム十匹に雲切隼でしょ。ハルキはやっぱりどうかしてると思うよ」
食事を終えて少し行った時にエミリーの雲切隼が戻った。どうやら何か見つけた様だ。
「エミリー、何かわかるか?」
「なんとなくだけど雲切隼を見つけたみたい。見つけた場所が結構離れてるから私じゃ感覚共有までは出来なかったけど」
ハルキもグウェンも一旦雲切隼を戻す。
「バニラ、クラウド達でこっちに追い込めそう?」
「ワン」
どうやら何とかなりそうだ。
「エミリー、グウェン、三羽でこっちに追い込んで、バニラ達に捕まえてもらおう。ポーション出して準備してて」
「わかった」
三羽の雲切隼が空高く舞い上がり、バニラがその方向をじっと見つめる。
「ワンッ」
しばらくしてバニラが全力で走り出した。背中にはライムが乗っている。
あっという間に小さくなったバニラを必死に追うハルキ達。
遠くで高く飛ぶバニラとライムの姿が見えた。
ハルキ達がその場にいくと前と同じ様に広がったライムに一羽の雲切隼が突き刺さっていた。
素早くポーションを振りかけたエミリーがそのままテイムする。
「あれ? 私がテイムしてもよかったっけ?」
「問題ない。よし、これで一羽ゲットだな」
「この子もかわいいのです〜」
「前みたいに六羽って訳にはいかなかったけど、初日から良いスタートだな」
「そうだね。よく見つけたね、カッター」
エミリーが帰ってきた自分の雲切隼わ撫でながら言う。
「エミリー? カッターって?」
「私の雲切隼の名前だよ。ハルキはクラウドでしょ。ミーユちゃんのはムーン。私がカッターで、グウェンのが」
「ジュンなのです〜」
「そういえば名前聞いてなかったよな。ドーラさんは名前付けたのかな?」
「ドーラさんは、確かサンだったかな」
ハルキの知らないうちに皆名前を付けていた。当然と言えば当然なのだが。
「それに私達はハルキも含めて雲切って呼ばれてるですよ」
「えっ、何それ?」
「ギルドでは私達が雲切隼をテイムしている事がだんだん広まってきていてね。私達のパーティーをチーム雲切って勝手に呼んでるんだよ」
「ドーラさんを入れるのか議論している人もいるらしいです〜」
ハルキの知らないうちに色々と目立っていた様だ。そもそもパーティーですらないのだが。
「まぁ、呼びたい奴には呼ばせておけば良いさ。
特に困る事もないだろう」
「ワンッ!!」
「ビヨヨヨヨーン」
そこはエンペラーじゃないかと吠えるバニラと、いやいやチームスライムだと伸びるライム。
残念ながらエンペラーウルフはバニラだけだし、チームスライムは少し弱そうだ。
バニラが今日はこれ以上は厳しいと言う声で吠えたので、雲切隼は今日は終わりにする。
近場でスライムを集めようとしたらその辺を動き回っていたライムが三十匹程従えて帰ってきた。
ハルキ達三人は一人十匹ずつテイムしたが、エミリーやグウェンも特に問題は無さそうだ。
だがテイムしたからといっていきなり強くなっている様子はない。若干色は濃くなっている様だが。
ハルキはマジックバッグから猪の肉を取り出し与える。スライム達はあっという間に食べ尽くした。
こうして初日としてはかなりの成果を上げたハルキ達は軽い足取りでサノの街へと帰るのだった。
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