第3話
「領主に会うのに私も行く必要があるのか?」
ドーラとアートの乗る馬車は北へと向かっていた。
「そろそろハルキの事をちゃんと話し合わないとな。ドーラが面倒を見ているとはいえ、ピーター様も落ち着かないんだろう。
星の民の扱いを間違えたら領主といえども立場が無くなる可能性もあるのはお前もわかっているだろう」
「うちの父なんかはあんまり気にする必要無いと言っていたがな。好きにさせて手伝うだけで良いと」
「ドラン殿か。お前も含めてウワノ村の人は星の民の扱いが軽すぎなんじゃないか? いくらアニャ様の土地とはいっても」
「そう教えられて育ってきているからな。それがアニャ様の教えのままだよ」
「そうは言ってもな。成長の速度も種類も伝わっている話に比べて早すぎるんだろう」
「確かにな。このままのペースで成長したら私もそのうちに抜かれるだろう。テイマーとしては最早比べ物にならないしな」
馬車が領主の城に着きドーラ達は城内の部屋に案内された。しばらく待たされて領主の待つ部屋へ通され、話し合いが始まった。
「ドーラよ、実際の所どうなのだ?ハルキは国に敵対する様な事は無いのだろうな?」
「その様な雰囲気は全くありませんね。そもそも人と敵対する事自体を嫌がっている様なので」
周りの空気を読みながら争い事を避ける、キョロ充の基本は軽く見抜かれている様だ。
「それなら良いんだがな。かつては国を興した者もいる星の民だ。その星の民は現れた時から王を名乗っていたらしいが。
ハルキがそんなタイプには見えなかったが、だからといって手放しにする訳にもいかないだろう」
「私はウワノ村に伝わった様にしているだけです。お気に召されないなら直接話されますか? 言い方次第で逆効果になりかねませんが」
「ドーラ、ピーター様を変に脅すな。ですがピーター様も少し気にしすぎの様な気もしますがね」
アートが間に入り、場を落ち着かせる。
「だがアートよ、星の民には目指す事があるという。ドーラ、その辺はどうなのだ?」
「実際の所まだわかりかねます。ですが、私は星の民が好きに生きる手伝いをすれば良いと教わってきました。今のハルキのやりたい事を手助けするだけです。
関係あるかはわかりませんが、ハルキがレイナ姫に頼み事をするはずです。早ければもうソータの元に連絡が来ているでしょう。
気になるならその時にお会いすれば宜しいかと」
「レイナに頼みとは何だ?ドーラは内容を知っているのか?」
ドーラはワイバーンを見たいというハルキの話した内容を伝えた。
「ワイバーンか。ドーラ、どうするつもりだと思う?」
「口にはしませんでしたがおそらく従魔にするのが目的かと」
「出来ると思うか?」
「ハルキにとっては造作もない事かと。スライムだけですが数日で百程テイムした様なので。
しかもその全ての成長が普通ではありません」
「強いスライムの話は聞いたが更に百もテイムできるものなのか。この前レイナに雲切隼も一羽譲ったらしいが」
「ハルキが関わった事でテイム出来たのでしょう。ハルキが捕まえたり、譲ったりした魔物は誰もが簡単にテイムしていますので。奴隷にも十匹続けてスライムを譲った様です。
うちの父にも雲切隼を一羽用意してくれましたし」
「そうか。だが我々のワイバーンを譲る訳にはいかんぞ」
「おそらくその内野生のワイバーンの元へ自分で行くでしょう。その時には手伝うつもりです」
「ワイバーンまで従魔にして敵対などされては困るぞ、ドーラ。その辺はしっかり頼む」
「それもハルキの望む様に、です。その様な事にはなるとは思えませんが」
「連絡だけはちゃんと寄越せ。出来る所はこちらも力を貸す。
それとドラゴンの鱗の事だが」
献上される鱗は一枚だが、更にもう一枚はピーターが買取りたいと言い出した。国王陛下に献上するらしい。
「アート、牙はどうするんだ?行先は決まっているのか?」
「一旦ギルドで買取り保有するつもりです。鱗以上に市中に出回らせる様な物でもありませんし。
すぐに王都の貴族などから打診があるでしょうが、しばらくは手放すつもりはありません」
「うむ、新しいドラゴンの牙など手に入る物ではないからな。ギルドの予算は足りるのか?」
「なんとかですがね。鱗とワイバーンの素材でかなり潤う予定なので。ハルキには悪いですが牙の分の支払いはその他の素材の売却後にしてもらうつもりです」
「そうか。牙も私が買取りたい所だが、他の貴族達に変に目をつけられても困るのでな」
こうしてドラゴンの素材の行先が決まり、最後にピーターが肝心な話をする。
「で、ドーラ。こちらがハルキが星の民だと気付いている事はいつ言うつもりだ?」
「それはやはり向こうから言って来るまでは待とうかと。どうしても先に言うべき時が来たら話しますが、多分ハルキの方から言って来るでしょう」
「そうか。ならワイバーンの件と鱗の献上の際はまだ黙っておこう。
後、鱗の主の紫龍だが。やはりこのサノの南部に住み着いておると思うか?」
「わかりませんが、その可能性は高いかと。人が住んでいない辺峡ですのでなんともいえませんが、かつて私の従魔だったワイバーンも元々ドラゴンに襲われた様だったので。季節によっては前から来ていたのかも知れません。
王都近くに現れたあの時に倒しきれなかったのが無念ではありますが」
かつてドーラのワイバーンであるアオが双頭の紫龍に命を絶たれた。王都の近くの村が襲われた時の事である。
二つの村を壊滅させ、王都に迫る紫龍。本来なら人を避けるはずのドラゴンが何故か村を襲った。
過去にもそういった話はあったが、先に人間がドラゴンに手を出した場合だけであった。そしてドラゴンのエリアから外へ出た者までは執拗に追う事はなかったという。
国中の戦力が集められ、なんとか食い止める事には成功したが、アオはドーラ達を守るため盾になり死んだ。
ドーラは紫龍と、おそらくはいるであろうドラゴンをけしかけた者、その足取りを探していた。
そして遂に紫龍の痕跡を見つけたのだ。
鱗を献上し、牙の存在が広く知られればそのうちドラゴンに何かをした者も近づいて来るたろう。
ドーラは再び対峙するであろうドラゴンとその者を思い浮かべて、小さな笑みを浮かべていた。
その頃図書室でうたた寝をしているハルキの肩に返事を持ったクラウドが舞い降りた。
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