第43話
日が登る頃ハルキは目覚めた。
横に眠るミーユを起こさない様にベッドから降りてそっと服を着る。
昨晩を思い出しながらにやけるハルキ。だがすぐに真面目な顔になり部屋からそっと出ていった。
玄関ではバニラとライム、ミーユのスライムの半数の五匹がトレーニングを待ち構えていた。
「みんな、おはよう。行こうか」
朝日と共に家を出て走り出すハルキ達。いつものルートを周り家に帰るとミーユが申し訳無さそうに立っていた。
「おはようございます、ご主人様。申し訳ありません、奴隷がご主人様より後に起きるなど」
「気にしなくて良いよ、ゆっくり休めたかい?」
「はい」
「ならよかった。今から庭で訓練するから、その後朝食をとりたい。お願いね」
「かしこまりました、ご主人様」
ミーユはすぐに動き出し、ハルキ達は模擬戦を始めた。
色々と考えたハルキはとにかく強くなる事を目指していた。ドーラが言っていた、三〇人いたら良い勝負という今のハルキの強さ。
その辺にいる冒険者達よりは今でも強いだろうと思っていた。だが、上には上がいる。
ドーラですら、ワイバーンがいなければSランクか微妙らしい。本当かどうかはわからないが、もし本当ならこの国の冒険者にはまだ上がいる。
今までのハルキならとっくに諦めて、そこそこ強ければ良いじゃんと努力する事もなかっただろう。元の世界の知識でなんか上手くやれば良い、駄目だったら次。それも駄目だったらその次。
ハルキはその考え方をやめた。
やれるだけやる。もし上手くいかなくても簡単には諦めない。
諦めなくてはならない時が来たら、今までの様に苦笑いで誤魔化したり出来なくなるまで。
元の世界の部活の時の友人達の様に、悔しくて涙が溢れる程に。
ハルキはバニラ達との模擬戦も今まで以上の気合いでやっていた。
「いったーい、痛い、痛いってバニラ。ちょっとストップ」
まだまだ先は長そうだが。
トレーニングを終え、ハルキ達が家に入るとミーユは着替えを用意していた。
「お風呂にも入られるかと思い、走られている間に準備はしましたがどうされますか?」
「そうだね、サッと入るよ。ミーユ、昨晩のままだからミーユも一緒に。バニラ達はまた夜ね」
「ワン」
それで良いよとバニラが吠える。
風呂の中でミーユに身体を洗われながらハルキは聞いた。
「ミーユ、昨日は聞くのを忘れてたんだけど、いい?」
「何でもお聞きください」
「ミーユはやりたい事とか、なりたい職業とか、行ってみたい場所とか、目標とか夢みたいなものはある?」
「目標、ですか……。小さい頃は甘いものやお肉が沢山食べれたら良いなと思っていました。なのでご飯屋さんになりたかったです。
後は自分で狩ったら食べれるかと思って冒険者にも憧れました。後お花屋さんとか。
でも、母が病気になりそんな事も言っていられなくなった時に自分がお医者さんだったらよかったのにと思いました。少しでも助けになればと。
奴隷になると決めてからは正直酷い人に買われなければ良いなと思う程度でした。
まさかご主人様の様な方に買って頂けて、しかもこの様に優しくされるなど、夢以上の現実です」
「そうか。でももしも今からでもやれるなら何が良い?」
「そうですね。やはりお医者さんでしょうか。ご主人様はお強いですが冒険者には何があるかわかりません。ポーションや治癒魔法だけではどうにもならない時が来るかもしれません。
もちろんその様な事はない方が良いですが、その時にご主人様をお助けする事が出来るかもしれません。
なので、もしもなれるとしたらお医者さんになりたいですね」
ミーユはどこまでも出来た奴隷だった。
「そうか。ミーユの夢はお医者さんって事で良いな。また他にやってみたい事とか浮かんだら教えて」
「かしこまりました、ご主人様」
風呂を出てハルキは考える。この世界の医者ってどうやってなるんだろう?そもそも医者の資格など無さそうだから、自分は医者だと言えばもう医者なんだろうか?
「その辺はドーラさんに聞いてみるか」
ハルキの目標の中にミーユを医者にする事が加わった。
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