第39話
「ミーユ、飲み物をお願い出来るかい?」
「かしこまりました、ご主人様」
「それで、一体どうしたって言うんだよ?ミーユが何かしたのか?」
テーブルについて話し合いが始まった。ハルキは何の話し合いか今ひとつ理解していないが。
「ハルキ、あなたはやはり鬼ですか?私達はミーユちゃんを鬼に渡す訳には行かないのです」
「グウェン、ハルキはその言い方じゃわからないよ。ハルキ、ミーユちゃんは私達が貰い受ける。良いだろう?」
「いや良い訳ないじゃん。せっかく買った奴隷で、やっと家も借りて新しい生活も始まったのになんだよ、貰い受けるって」
「ハルキはミーユちゃんを妾にするですか?奥さんにするですか?私はするですよ!」
「グウェン、落ち着け。ハルキ、私達はそのくらいの気があるという事だ」
どんな気だ。
「二人とも、何か勘違いしていないか?俺は宿からここに引っ越したばかりでまだミーユにあまり仕事させたりしてないぞ。確かに奴隷の使い方なんてわからないけど、酷い扱いした覚えは今の所ないんだけど。
ミーユ、ミーユも隣に座ってくれ。この二人に何か変な事でも言ったのか?」
飲み物を配ってミーユがハルキの隣に座り答える。
「ご主人様、私は不満などございませんし、万が一あったとしてもそれを口にするなど致しません。それにご主人様が仰ったようにお仕えしてからまだ殆どお役にたてておりませんし」
「ほら、ミーユもそう言ってるだろ?ご飯だって昨日初めて作ってもらった位なのに、酷い事なんてしてないよ」
「ご飯が美味しすぎるのです。掃除や洗濯も完璧なのです。ハルキが奥さんにしないのなら私達が奥さんにするのです。だから譲るのです、ミーユちゃんを私達に」
「お前ら、家事が出来なさすぎておかしくなってるのか?もしそうならメイドでも雇えば良いだろう?なんだよ奥さんにするって」
「私達はもうミーユちゃんの家事がなければ生きていけないんだ。そうさせたのはハルキじゃないか!
だから責任をとって私達にミーユちゃんを譲るべきだと言ってるんだ」
「言いたい事はなんとなくわかった。
断る。
じゃあ帰ってくれ。家の事もしたいから依頼は四日後から受けようと思うんだけどそれで良いか?」
「ハルキ、話は終わってないです、交渉の余地があるです」
「そうだ、ハルキ。なんなら掃除と洗濯と三日で八食分でも構わない、どうだ、この条件なら」
「いや一食減ったくらいで家事の殆ど全部じゃないか。しかも昼の弁当まで数に入れてるし。ミーユ、一体何食べさせたんだ?変なキノコでも盛ったのか?」
「ご主人様あんまりです。エミリー様にもグウェン様にも普通の食事をとって頂いただけです。
お部屋の方も当たり前に片付けただけですし」
「あっ、ミーユちゃん!グウェン様って言わないでって約束したです、エミリーにもです。ちゃん付けでって約束したです〜」
「ハルキが言わせてるのか?ハルキ、いくらなんでもそこまで干渉するのか?」
「いえ、エミリー様、グウェン様。ご主人様は何も仰っておられません。ですがご主人様のお仲間の方をちゃん付けで呼ぶなど本来なら許される事ではございませんので」
この後も延々と帰らずにミーユを褒め称え、ハルキに交渉し続ける二人。
最後はハルキが折れて三日に一度、ミーユが二人の家に家事をしにいく事になった。一応二人がメイドか奴隷を使うまでという事になったがあの二人にそんな気はなさそうだ。
二人が帰って少し落ち着き、ハルキがミーユに声を掛ける。
「ミーユ、ごめんね。なんか仕事増えちゃって。その分はちゃんと二人からガッツリ貰ってミーユに渡すからね」
「お金など結構です、ご主人様。私の方こそ申し訳ありません。ご主人様の為に使うべき時間を違う方の為に使う事になってしまって。その分の時間は十年経った後にお返し致しますので」
ミーユ、どこまでも出来た奴隷である。
「そんな事しなくて良いから。またちゃんとあいつらにも交渉するし、メイドもドーラさんに頼んで早めに見つけてもらう事にするよ」
「ありがとうございます、ご主人様」
こうしてミーユの引き抜きはエミリー達にとってそれなりの成果を上げて終わる事になった。
いつもありがとうございます。話があまり進みませんが、これからもよろしくお願いします。
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