第30話
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久しぶりに南門に行ったハルキは、初めてこの街に来た時の門番の女性に会う。
「あっ、ハルキくんだよね。色々大丈夫だったの?前に貴族の使いの人が前に探しに来てたけど」
「久しぶりですね。大した用じゃなかったんで大丈夫ですよ。それより街中では流石に中々会わないですね〜」
「本当だね〜、避けてるんじゃなくて?」
「避けてなんか無いですって。会ったら誘う気満々ですよ〜」
「そっか。じゃあ楽しみにしてるね〜」
「はい、会いましょうね」
冒険者なので特に聞かれる事もなく、魔石に手をかざして街から出る。
そこから先はバニラとライムを連れてハルキはひた走る。まずはウワノ村へ。
今のハルキなら日が暮れる前には着くだろう。
門からいくつかの分かれ道を過ぎるともう人は全くといって良い程通らない。ウワノ村のある南方はサノ領でも辺峡で人が殆ど住んでいない地域だ。
逆に北にある王都へと続く道などは村や小さめの街が少しずつ増えてくる。ハルキはまだ向かった事は無いが。
「バニラ、魔物も特に出ないね。クラウドも一旦戻そうか」
クラウド。ハルキが唯一自分の従魔として残した雲切隼の名前だ。誰かに譲る事を考えていた為一羽になってから名付けたのだ。風を切る音と共にクラウドが帰ってきてハルキの肩に止まる。
普段はまだ高い所にいさせているのでたまにハルキの肩に来ると嬉しそうだ。
「そろそろご飯にしようか」
マジックバッグから食事を取り出してみんなで食べる。朝早くにミーユが準備してくれた物だ。ミーユはバニラ達の分もわざわざ作っていた。
食事を手早く終わらせてすぐに走り出すハルキ達。このペースなら余裕で夕方にはウワノ村へ着きそうだ。
結局魔物や強い獣には出会わないままウワノ村へと辿り着いた。
「こんにちわー」
村の入口で叫ぶハルキ。奥から人が現れる。前に来た時最初にハルキが出会った男である。
「おー、ハルキさん。久しぶりだな。サノには無事に辿りついたかい?」
「おかげさまで。向こうではドーラさんにお世話になってます」
軽く挨拶をした後ドーラの父であり村長のドランの元へ向かう。
サノの街で色々ドーラに世話になった礼を言い、サノから買ってきた土産を渡す。ドーラに頼まれた他のウワノ村出身者達からの預かった品や手紙なども一緒に。
「わざわざありがとうの、ハルキ殿。今日はこちらに泊られますかの?」
「一晩お願い出来ますか。後アニャ様の祠にお参りをしても」
「おお、それは良い。早速参りましょう」
アニャの祠にお供えをして祈るハルキ。
(おかげさまでなんとか無事に生きてます。この世界に来て、色々考えました。
自分はこの世界で生きていくと決めました。見守っていてください)
祈りを終えたあとハルキがクラウドに手紙を持たせて放つ。
ドランの家へ戻ると日も落ちかけ、村人達が宴会の準備をしていた。
「ハルキ殿、先程の鳥はなんですかの?」
「ああ、あれは自分の従魔です。ドーラさんのところに飛ばしました」
雲切隼は行った事のある場所や、会った事のある人間には辿り着くのだが、全く未知の場所へは行けたり行けなかったりする。テイマーの能力にもよる様だが。
「ドーラさんも一羽持ってるんで、ウワノ村とドランさんに引き合わせるのに迎えに行ってるんですよ」
一度連れてくれば間違いなく来れるのでドーラがハルキにウワノ村に着いたら連絡するよう頼まれていたのだ。
「あの子がテイムを…アオが死んでからもうしないと言っておったのに。ハルキ殿、ハルキ殿のおかけじゃな。ありがとうの」
「いえ、たまたまですから。それよりもドーラさんのあの強さは何なんですか?手も足も出ませんでしたよ」
「十になる頃には村におる大人も敵わんかったでの。おまけにワイバーンをテイムして。アニャ様の御加護でも受けとるんかのう」
その後宴会が始まり、ハルキは村の人々と話をする。色々話す中一人の男がハルキに言う。
「このところこの辺りでは魔物を殆ど見なくなってな。別に良いんだがなんかおかしいんだよな」
「おう、確かに見かけないな」
他の者達も賛同する。
そういえばハルキも来る途中に魔物を殆ど見かけなかった。普段どの程度魔物が出るかはわからないが、ハルキは魔物を気にしながら行動しているので、それに引っかかってこないのは少ないのかも知れない。
ハルキも少し気にはなったが特に困る事でも無さそうなので流しておく。
そうこうしている間にクラウドがドーラの雲切隼を連れて戻って来た。ドランに会わせて手紙を二つ取り出す。一つはドラン、もう一つはハルキ宛だった。
簡単な礼の書かれた手紙には、無事に帰るようにと書いてあった。
「やっぱり気は抜いちゃダメだよな」
ドーラの手紙に明日も気を引き締めて向かおうと思うハルキだった。




