第29話
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模擬戦の後、ドーラがハルキに家を紹介した。
賃貸だが一軒家、改装は自由で、開発の煽りを受けて一年後に取り壊される予定らしい。なので家賃はかなり割安だ。
ハルキは早めに家を買うんだからから一年で大丈夫だろうというドーラの勧めで軽く内見だけしてそこに住まいを移す事にした。
何よりハルキが気にしていた風呂付きの物件である。南西エリアのままでギルドにも近い。
そして引っ越しの日。
元からハルキもミーユも荷物など殆ど無かったので引っ越しという程でも無かったのだが。
「ミーユはこの部屋を使って。でも家具は足りないから今から買いに行こうか」
前の住人の残していったベッドやテーブル、椅子などある程度の物は揃っている。だが布団や調理器具など足りない物も多い。
ハルキとミーユは商店の多いエリアに向かった。
「ミーユ、これとそれと、後これと。他に要りそうな物は?」
「ご主人様、少し買い過ぎではないですか?無理をせずとも工夫すれば買わなくてもなんとかなる物もございます」
「でもミーユが大変になると困るからね。宿みたいにシーツも毎日交換してくれる訳ではないし」
「家事全般はちゃんとやれますので。食事もご主人様が食べる位の食器はございます。
一年で出なくてはならないのですから、荷物は少ない方がよろしいかと」
「駄目だ、ご飯は一緒に食べるし、シーツの替えも何枚かずつは要る。鍋やなんかも少な過ぎて食べたい物が作れないと困る。
ボールとザルもサイズ色々欲しいし。あっ、物を置けるようになったんだからミーユの服ももう少し買い足さないと。色々必要だなぁ〜」
元の世界の新婚の家具選びの様な事を言いながら次々と物を選ぶハルキ。元の世界では結婚した事もなく、引っ越しは多かったが荷物は少なくしてたのだが。
買い物を終わらせてとりあえず普通に寝る位の支度は整った。
「流石に今からご飯作るのも大変だし、なんか食べに行こうか」
「ご主人様、私が作りますのでご主人様はゆっくりなさっていてくだされば問題ありません」
「いや、今日は外で食べよう。ミーユに話もあるし」
新しい家の近くにある酒場に来た二人。ミーユは相変わらずハルキに言われるまで座ろうとしない。流石に水月荘では座る様になっていたが外の店だと一度は私は奴隷ですのでと断りを入れる。
「ミーユ、そろそろ俺が言いもしないうちに自分の事を奴隷だと言わないでくれ。俺が気にしてないんだから」
「ですがご主人様、私は奴隷です。奴隷と同席して食事をするなどその方が周りの人が驚きます」
「驚かせておけば良い。良いか?今後は席を勧めたら素直に座れ」
「わかりましたご主人様。そうさせて頂きます」
最早何度目かもわからないこのやりとりの後、飲み物が運ばれてきた。
「とりあえず引っ越し祝いだ、カンパーイ」
「おめでとうございます」
どこか噛み合ってない会話が続くがハルキは早速本題に入った。
「早速なんだが明日からしばらく家を空ける。長くても一週間程度だ。引っ越したばかりで慣れてないけど大丈夫か?」
「私は十日程度なら食事などなくても水と塩さえ有ればなんとかいけるとは思いますが」
「誰がミーユをそんな目にあわすんだ、呼んで来い、成敗してやる。
って違うよ、一人で家で待ってられるか?」
「もちろん大丈夫です。ですがどちらに行かれるんですか?私もお供させて頂きますが」
「うーん、ちょっと田舎に一度帰って来るつもりだ。途中でドーラさんの実家にも寄るけど。
道も悪いし一人の方が早いから一人で行くよ。その間留守番しておいてくれるか」
ウワノ村の奥にあるハルキがこの世界にやってきた場所。あの家に一度帰るつもりだったのだ。
今あの家はおよそ百のスライムが守っている。元々アニャの結界も張られているので特に問題はないはずだ。だが、元々は街に来たら冒険者になってすぐに一旦帰るつもりだった。
ウワノ村からサノの街、気付けば二十日程経っている。
家も借りた事だし、置いてきた荷物で持ってきたい物もある。何よりスライム達の様子が気になっていたハルキ。
「まぁ特に用がある訳じゃないから早めに帰って来れるとは思う。でも、心配だからバニラにいてもらおうかと思ってるんだけど」
「ご主人様、私の心配など無用です。ですが私がご主人様に買って頂いてから殆ど何の役にもたっておりません。
家を借りられてやっとお役に立てる事が出来ると思いました。それなのに明日からまたご主人様がいらっしゃらないとなると申し訳なくて。
その間だけでも何か別で働ける所とかございませんでしょうか。本当はご主人様についていかせて頂きたいのですが」
ハルキは悩む。確かにミーユを買ってからも簡単な身の回りの世話をしてもらっただけだ。かといって連れて行くと往復の日数が倍程まで伸びる。
「あっ、そうだ。ミーユ、少し待ってて」
思い出した様にハルキが立ち上がり店の外に出た。すぐに中に戻って来てビールを飲み干す。
「多分すぐに来ると思うから」
数分後、やって来たのはエミリーとグゥエンだった。
「急にハルキの雲切隼が来たから何かあったのかと思った。この子がハルキの?」
「綺麗な子なのです〜」
「エミリー、グゥエン、この子が俺のミーユだ。ミーユ、俺と一緒に依頼を受けてるエミリーとグゥエンだ」
「初めまして、ミーユちゃん。話は聞いてるよ」
「ハルキはいっつもミーユは可愛い、綺麗だばっかりなのです〜」
「初めまして、エミリー様、グゥエン様。ハルキ様の奴隷のミーユと申します。いつもご主人様にお話を伺っております」
「二人にお願いがあるんだけど、俺、明日からしばらく田舎に帰るだろ。その間、ミーユを二人が使ってくれないか?」
「使うって、どういう事?」
「せっかく家を借りたのに俺がいなくなって新居でミーユがやる事ないからさ。ミーユもその間働きたいって言うし。
二人は俺のいない間にも依頼受けるんだろ?家の事とか昼間の間にやってもらったりさ」
「別に構わないですけど、あんまりお金払えませんよ〜」
「お金なんか良いよ。二人も俺と一緒に結構なペースで依頼受けてたから、掃除とか色々溜まってるだろうしね」
「ひ、否定は出来ないです〜」
「じゃあそう言う事で。二人ともよろしく頼むね。あっ、ご飯は同じテーブルで食べる様にしてくれ。それに慣らしてるからさ」
「まともな手作りのご飯…」
「長らく食べて無いのです〜」
「ミーユ、明日から二人のお世話してあげて。出来る範囲で良いから」
「かしこまりましたご主人様。エミリー様グゥエン様、よろしくお願い致します」
「こちらこそ宜しく」
「よろしくです〜」
こうして次の日の朝、ハルキはスライムの待つ家へ、ミーユはエミリー達の家へ、新居を元気に出発した。




