第24話
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「ドーラさん、水月荘最近混んでるんですけど、もう一部屋取れますかね」
契約を終えミーユを連れて帰る道すがら、ハルキはドーラに聞いた。
「そうか。すぐに奴隷が決まると思っていなかったから家がまだなんだな。まぁ今から一緒に行くから取れなければ考えよう」
ドーラは考える。普通は奴隷の為に自分と同じレベルの宿など取らない。だがハルキは星の民だ。基本的な考え方も違う。危険がなければやりたい様にやらせるべきだと。
この世界の普通とはかけ離れていたとしても。
宿に着くと部屋はまだ空いていた。
「ドーラさん、どうします?飲み直しますか?」
「いや、ハルキも今日は色々あったからな。明日からはまた依頼を受けるんだろ?それにミーユとも初日だ。今日は私はもう帰るよ。明日またギルドで」
「わかりました。城に奴隷商に一日お世話になりました。ありがとうございました」
ドーラが帰り、ハルキの後ろに立つミーユ。
「ミーユ、今日からよろしくね」
「はい、ご主人様」
「ご主人様、か。まぁとりあえずそれでいいか。部屋に荷物置いたらお風呂入ってきて。そのあと俺の部屋にきて」
「あ、あの、」
「ん?」
元の世界でバイトを雇った時の使い方でミーユに接するハルキ。
「ご主人様、私が本当にお部屋を使ってもよろしいんですか?それにお風呂まで」
「ん?ミーユは奴隷だけど俺には初めての奴隷だからな。奴隷の使い方ってよくわからないから俺のやりやすい様にやらしてもらうよ。とりあえず嫌じゃなければお風呂入ってきて。
俺、田舎者で常識外れの事すると思うからその度に普通はどうか教えてくれると助かる。わかる範囲で良いから」
「は、はい。かしこまりました」
部屋も風呂も普通ではないと思いつつもまだ流石に言い出せないミーユは素直に風呂に行った。
湯船に浸かりながらミーユは呟く。
「なんか、最初の命令がお風呂だなんて、どうなるんだろ私。でもアンディ様がハルキ様が来られた時に絶対に逃すな、奴隷としてハルキ様より良い主人は滅多に無いって指示出してたし…」
頭までザブンと湯の中に潜り、気合を入れ直す。
「とにかくせっかく買ってもらった身だし、出来る限りお尽くししないと」
粗末だが小綺麗な服でハルキの部屋へ向かう。緊張してドアをノックして声をかける。
「お待たせ致しましたご主人様。ミーユです」
「ああ、入って〜」
中へ入ると服を着替えるハルキ。そのそばには狼とスライムがいる。ドキリとしたがなんとか表情には出さずドアの前に立ち指示を待つミーユ。
「とりあえずご飯食べながら話そうか、行こう」
当たり前の様にミーユを連れて今日はここで食べるから、と宿の酒場に行くハルキ。
「何してんの?早く座って」
「いや、ですがご主人様」
「何か変かな?まぁいいや。おかしな事あったら言うのはとりあえず明日からにして。今日はミーユの歓迎会も兼ねてるから。
時間ある時にもう少しちゃんとしたお店でもやるから」
「ワンッ」
「ほら、バニラも座れってさ」
「は、はい」
「お酒飲める?」
「飲んだ事はあります、少しだけですが」
「じゃ、好きな飲み物と、嫌いな食べ物ある?」
「いえ、特には。。。あの、ご主人様、一体どうすれば?」
「とりあえず今日はミーユの歓迎会だから。話は食べながらにしよう。好き嫌いないなら今日は俺が頼むね」
ミーユが現状を受け入れる間もなく食事が始まる。
「それでは、ミーユが来てくれた事に、カンパーイ」
「ワン」
ライムはムニョンとした。
「は、はぁ」
戸惑いを隠せないミーユにハルキが少しずつ慣れてくれれば良いから、と食べ始める。食べようとしないミーユの分も取り分けだした所で流石にミーユが止めに入るがハルキはとりあえず今日はと譲らない。
勧められるままミーユが食事を始めてからハルキが話をしだした。
「ミーユ、来てくれてありがとう。とりあえず紹介するけどこの狼がバニラ、スライムがライム。他にもいるけど俺の従魔だ。仲良くしてくれ」
「ワン」
「はい、お仕えします」
「お仕えってなんか違うけどまぁその辺はおいおい。で、さっきドーラさんとも話してたけどミーユを買ったのは良いけどまだ宿で暮らしてるんだ。
家を借りるまでは洗濯とか雑用くらいしか仕事無いんだよね。昼間は冒険者として依頼を受けるからいない日の方が多いし」
「はい、では何をすれば宜しいですか?」
「その辺ももう少し待って。今日の今日でそこまで考えてなかったんだよね。とりあえず自由にしてもらってて良いよ」
宿に風呂、主と同席の食事にお酒ときて明日は自由。ミーユはハルキが謎で思考能力がなくなる寸前だった。
その後はミーユの過去をハルキが聞いて、ハルキからは家を借りたらしてもらいたい仕事について話をした。内容は家事全般という事だけだが。
「あっ、そうだ。テイムした事ある?」
思い出した様にハルキが聞く。
「いえ、ごさいません」
「そうか。じゃ、明日試して。鳥の魔物を一羽テイムしておいて欲しいんだけど」
「あの、ご主人様。勿論仰る事はわかりますがそんな簡単には無理かと」
「大丈夫でしょ、多分。今の所全員あっさりテイムしてるし」
ハルキの軽い言葉にますます心が落ち着かないミーユの肩にライムがスルスルと登っていった。




