第19話
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「姫、その呼び名は」
ソータの言葉にレイナがハッとした顔をする。
「すまない、ドーラ。昔の通り名であって今は違う事を姫もわかっておられる。色々な所でドーラの冒険者時代の話を聞いた姫がお前に会うのを楽しみにされていてな。つい出てしまったんだろう」
「申し訳ありません、ドーラ様。ソータの言う様にお会い出来るのが楽しみで、ずっと蒼飛竜のドーラ様と言っていたものですから」
「いえ、久しぶりにその名で呼ばれて少しびっくりしただけです、レイナ姫。別に問題ありません。過去の自分も自分です。ただ、もう蒼飛竜もいませんので」
少しだけ遠い目をするドーラ。
「蒼飛竜って」
ハルキが聞く。
「ハルキ、私がギルドで働く前にテイムしていたワイバーンの事だ。名はアオ。アオが死んで、ソータ達と組んでいたパーティーも解散した。
それ以来ずっとテイムはしていなかったのだよ、この前までな」
「そうだったんですか。軽く勧めて申し訳ありませんでした」
「ちょっと待て、ドーラ。この前までだと?あの時俺達のせいでアオが死んで、俺達がどうやってお前に詫びれば良いかわからぬまま、お前はギルドで働きだした。
もう二度とドーラはテイムする事はないだろうと思っていたが」
「ソータ、時は過ぎる。悲しみも憎しみもまた変化するものだ。
それにそもそもお前達のせいではない。私が弱かっただけだ。その話は散々したはずだ」
「ああ、確かに散々したな。だが、変化はしても忘れられるものではないだろう」
「忘れる訳はない。仇を取るつもりも変わらずにあるさ。だが、だからといって腹が減らない訳ではない。嘆いた所で雨の日は雨だ。酒を飲めば酔うし、良い男を見れば抱きついたりもするさ」
「そ、そうか。ちょっとよくわからんが。だが今になって何故テイムを?」
「ああ、さっきも言ったが時間と共に変わる思いもある。ハルキに勧められたのと、後はちょっと珍しい魔物だったのでな」
「珍しい、とは?聞いて良いか?」
「ああ、雲切隼だ」
「はあ?雲切隼ってあんなもんどうやってテイムするんだ、生きてるのは見た事もないぞ」
「それもハルキにわけてもらっただけだ。なぁ、ハルキ」
「は、はい」
「そんな事より、せっかく姫が我々を招いてくださっているのに、昔話を喋り過ぎだ、ソータ。姫が退屈されてるぞ」
「はっ、姫、申し訳ありません」
「いえ、私は楽しく聞いてましたわ。もっと続けて頂きたくてよ」
嬉しそうに笑うレイナ姫に場の空気が変わり、穏やかに食事が再開された。
後でレイナ姫が雲切隼を見たみたいとか昔ソータが飲み屋の女性四人に立て続けに振られた話など、たわいもない話で盛り上がった。
食事が終わり、お茶を飲みながらそろそろ解散か、と言う時に部屋の扉が開く。
「お父様?」
「ピーター様」
椅子から立ち上がり膝をつこうとするソータとリーナ。
「ああ、そのままで。椅子をくれ」
召使いがすぐにレイナ姫の横に椅子を用意する。
「お前がハルキか、娘が世話になっそうだな。父として改めて礼をいう。感謝する」
「いえ、たまたま近くにいたものですから」
「近くにいただけで助けられるものでもあるまい、謙遜するな。
後ドーラ、久しぶりだな。たまには城に顔を出せと言っておるのに全く来ないではないか。ギルマスのアートばかり寄越しおって」
「ピーター様、ギルドで私も忙しくやっていますので。ギルマスの方が動き易いだけですよ」
「まあ良い。だか久しぶりに会ったのだ、これからはもう少し顔を見せろ、良いな」
「時間がありましたら」
「用はそれだけだ、ではな」
領主とも旧知の仲の様なドーラ。ハルキとドーラの顔を見た領主ピーターはそれだけですぐに部屋から出て行った。




