第12話
「そういえばこの前の男の人はどうしたんですか?」
「ああ、彼は元々組んでた訳じゃなくてあの日まで一週間限定でやってたのよ」
「そうです〜、期限内に受けた量が確保できるか微妙だから手伝ってくれって頼まれたです」
「そうだったんですね」
「はいです〜。そういえばハルキは冒険者として新人なのは聞いてるけど年はいくつなのですか〜?」
「俺ですか、十八ですけど?」
「なっ、私らより一つ年上じゃん、タメ口でいこう、タメ口で」
「タメ口です〜」
「わかりました、そうしま、そうするよ」
しばらく歩き森に入り奥にある崖を目指す三人の前でバニラがピタリ止まる。
「バニラが何か見つけたみたいだけどどうする?」
「私達の動きを一度見といた方が良さそうだから、私達二人でやるわ、相手にもよるけど」
「流石にまだわからないな、ちょっと待って。ライム、見てきて」
スルスルとライムが先に行く。ハルキは感覚共有でライムの周りの気配を調べる。
百メートル程先に大きな猿の様な生き物がいる様だ。
「でっかい猿がいる、百メートル位先だな」
「そんなにわかるもんなの?テイマーでも中々そこまでは聞いた事ないね」
「多分この辺りで大きな猿だとレッドマントヒヒです〜」
「多分そうだね、じゃあやるか」
「やっちゃうです〜」
気配を消しながら先へと進む。またバニラが止まる。
「あそこです〜」
「やっぱりレッドマントヒヒか。もう少し寄ってからだね。グウェンいくよ。ハルキ、周辺の警戒とヤバそうだと思ったら手助けして」
「了解」
もう十メートルという所まで来て、レッドマントヒヒがこちらに気付く。胸をたたいて威嚇してくる。
そのタイミングでエミリーがレッドマントヒヒの右の茂みに石を投げた。視線がそれた瞬間にエミリーは左側から一気に距離を詰める。
詠唱を終えたグウェンがバレーボール程の火球を正面に飛ばす。
レッドマントヒヒがこちらを向いた瞬間に顔面にそれが当たり
「グギャ」
という叫び声をあげる。エミリーが死角からヒットアンドアウェイでレッドマントヒヒに剣を突き立てる。
エミリーが少し離れたタイミングで小型の火球がレッドマントヒヒを襲う。何度か繰り返す間にレッドマントヒヒは動かなくなった。
「大体いつもとってるパターンはこんな感じが多いかな」
「どうやら余裕みたいだね」
「そうでもないよ。二人だと周りへの警戒も必要だし、長丁場になるとグウェンの魔力も厳しくなる。これより強いのが相手だとまずは逃げる事から考えて行動してるよ」
「そうです〜。死んだら元も子もないです〜」
「なる程。確かに怪我したって帰りに何も襲ってこないとは限らないしな。そういえばレッドマントヒヒって獲物としてはどうなの?」
「強さの割に皮とかも殆ど値段がつかないです〜、なので魔石と尻尾だけ討伐部位で持って帰るです〜」
「そっか。じゃあそうしよう」
すでにエミリーが尻尾を切り離して持ち帰る準備をしていた。
「ワン」
バニラも良くやったと吠えた。
その後は弱い魔物にしか出会わなかったが、崖が見えた時にまたレッドマントヒヒが現れた。今度は二頭いる様だ。
「今度は俺が」
ハルキ達が先に行く。
ハルキが雷魔法を二頭に当てる。一瞬動きの止まった二頭、一頭目は飛びかかったバニラが牙で首元を掻っ切る。もう一頭の胸には高速で飛び出したライムが半分埋まっていた。
「流石にドーラさんが目をかけるだけの事はあるか」
「そうなのです〜。でも私達そもそもいるんです〜?」
「いや、なんかギルドにも色々あるみたいだし、助かってるよ。女の子二人とか、それだけでも」
「ハルキは軽いね〜、まぁ良いけど」
「強いから良いのです〜」
崖の真下まで来た一行は上を見上げる。
かなりの高さの崖で、上の方に何箇所か固まって花が生えている。あれが採集の目的の花だろう。
だが、巣でもあるのか崖の周辺にはかなり巨大な鳥が何羽も羽ばたいていた。




