第4話
「後で連れて来るからしばらく茶でも飲んで待ってろ、バカが入れるから味は知らんがな」
ドーラは男にそう告げると応接室を出てカウンターに向かった。
バカがハルキと話しているのでとりあえず頭を叩いて
「茶を入れて応接室に持っていけ、安いので良いからすぐに。その後私とハルキの分もだ、それは高いのにしとけ」
もう一発位ケリでも入れようかと思ったがグッと堪えてハルキに話しかける。
「買取りは終わったか?まだならすぐに済ませる。聞きたい事がある」
先に現場で合ったパーティーの買取りを終わらせ外でお金を受け取ってからギルドに入ったハルキ、今は査定中だ。
「今査定してもらってます」
「なら話が終わってから受け取ってくれるか、お前に客が来ている、あちらの部屋で待たせているからきてくれ、従魔はこちらで預かる」
応接室に行く道中、小声で尋ねる。
「ハルキ、貴族を助けたか?」
「街に入る前の晩に襲われている馬車を俺の従魔が助けました。貴族かどうかまではわかりませんが」
「そうか、それだけか?」
「名前聞かれて答えましたけど、特には」
「わかった。それならいい」
応接室に入る二人。
「連れて来たぞ、彼がハルキだ」
「初めまして、ハルキと言います。昨日から冒険者になりました」
「初めまして、サノ領主第二子、レイナ姫に仕えるソータという者だ。先日ハルキ殿に姫と部下共を助けて頂いたようで、感謝する」
「いえ、たまたま近くにいただけですから。それに助けなくても多分大した被害は出なかったでしょうし」
「いや、あの時は急な移動で護衛も減らしていてな。まぁレイナ姫に危険が及ぶ程ではなかったとは聞いているが、ポーションも多数分けてもらって大変助かったのは事実。ポーションの代価は勿論だが、しっかり礼をせねば領主の顔がたたんのでな」
異論を挟ませない話し方で言い切るソータ。
「はぁ、わざわざありがとうございます」
「近いうちに城に食事に招く、使いを出したいのだが、住まいはどちらかな?」
「昨日サノに来たばかりのなんで水月荘に泊まってます。しばらくは厄介になるつもりです」
「水月荘か、あそこは良いな。俺達も冒険者の頃はよく泊まったものだ、なあドーラ」
「へー、ソータさんも冒険者だったんですね。ていうかドーラさんも?」
「もう良いだろう、関係ない話は。ソータ、用件はそれだけか?」
「ああ、今はこれだけだ」
「そうか、ハルキに連絡を取るなら私を通してくれるか。しばらく面倒を見ることになっていてな」
「別に構わないが昨日今日のルーキーにえらくご執心だな、ドーラ」
「何、街に入る前に父が世話になってな。しばらく助ける様に言われているだけだ。他意はない」
「ふむ、まぁ良いだろう。ハルキ殿、従魔の強さは聞いてはいるが、冒険者稼業は何があるかわからん。命を大切にな」
「はい、ありがとうございます」
「それとドーラ、客人に出す茶はもう少しマシな物を使え」
「客人に出した茶じゃない、ソータに出した茶だ。心配しなくても客人にはもう少しまともなものを出している、まさかソータに茶の味がわかるとは思わなかったものでな。経費削減ってやつだ。次からはまともな茶を用意しよう」
「あぁ、よろしく頼む。ハルキ殿、それでは失礼するよ。多分一週間後くらいになると思う」
「わかりました、連絡お待ちしてます」
男が去りハルキの清算も終わった後、ドーラがハルキに再び声をかける。
「ハルキ、城に招かれる前にもう少し話しておきたい。三日後の夜、時間を空けておいてくれ」
「はい、街に来たばかりので知り合いも居ませんし、特に用事もないのでいつでも大丈夫ですよ」
「ハルキ、それは違う。きっちり身体を休める事は冒険者にとって必要な事だ。ソータも言っていたが、何があるかわからないのはどんなランクでも同じだ。その為の準備にはやり過ぎなど無い」
急に強い言葉をかけられて戸惑うハルキ。だが特に反抗することでもない。
「わかりました、三日後には自分が払える様に頑張って稼いでおきますね〜」
「ああ、そうしてくれ。何度も呼び止めてすまなかったな」
「いえ、ありがとうございました」
軽く頭を下げてギルドを出るハルキ。隣をバニラ達がついてくる。歩きながら考えるハルキ。
(何があるかわからない、か。確かにここにいる事自体がわからない事だらけだ。なんとか一年この世界でやれたけど、もっと気をつけなきゃな)
「ワン」
ハルキ、それはそうだけど少し違うよ、という顔をしてバニラが吠える。
「まぁ、なんとかやるしかないな、バニラ、ライム。今日は帰ったらゆっくり休もう」
「ワンッ」
そこに異論はなかったようだ。




