第3話
宴会もお開きになり、久しぶりの他人とのふれあいとお酒にハルキが気持ちよく眠りにについた頃、横のバニラはライムを枕にしたまま耳を澄ましていた。
「村長、あれはやっぱりそうか」
「ああ、間違いないじゃろう。村を訪ねた時の言葉も、持っていた剣の紋章も。ハルキ殿は星の民じゃな」
「そうか、それでどうするんだ?」
「ん〜、どうもせんよ、儂らは。半兵衛殿が戻られて100年近く、アニャ様からだと150年程か。儂らはアニャ様の残された言葉の通り、持てなして、敵対せず、頼られる事が有れば出来る範囲で力をお貸しすれば良い。その為にこの村を残しとるんじゃからの」
「領主様には?」
「ハルキ殿の様子だと特にお知らせすることもないじゃろうがの。一応娘から伝えるように手紙には書いておくわい」
「そうか。それにしても本当に星の民が来る事あるんだな、びっくりしたぜ」
「そうじゃの〜、儂らが子供の頃から言われてきた通りじゃったの〜〜。まぁ、後は儂らには特に出来る事はない。明日にでも金の相場を教えて後は街におる者達に任せるだけじゃて」
「わかった、皆にもそう伝える」
「ではそうしてくれぃ、儂も娘に手紙を書かねばのぅ」
男が去り村の家を回り出したのとほぼ同時にバニラは警戒を解き、ライムはプニプニした。
朝が来て朝食を食べた後、村長の案内で村の中にある小さな祠に向かった。
「ハルキ殿、ここはかつてこの国を救った英雄で(踊る大賢者)の異名を持つこの村出身のアニャ様が祀られておる。冒険者になるならお参りしといた方がええかと思ってのぅ」
アニャという名前を聞いてドキッとしたハルキだったが何とか表情を抑えて
「ありがとうございます、参らせてもらいます」
と答え、とにかく一年無事に過ごせた事に感謝して、そしてこの先の安全祈願を真剣に祈った。
村長はドキッとしたハルキの一瞬の顔を見逃さず、必死に笑いを堪えていた。
半兵衛の時に残された記録と同じだったからである。
バニラはいい趣味してんな〜って顔で村長を見ていた。
村長の家に戻り出発の準備をしていると
「ハルキ殿、ちょっと良いかの?」
と村長が声をかけてきた。
「昨日もらった毛皮なんじゃが、ちょっと一宿一飯の礼には三枚は多すぎると思うての」
これを、と銀貨を2枚差し出してきた。
「多分今ならそれで毛皮一枚分くらいじゃろうが、サノの街では銀貨一枚、つまり一万ジェニーあれば飯付きの宿に二日は泊まれるでのぅ」
ハルキはざっくりで一万円位かなと計算した。
大銅貨が千ジェニー、小銅貨が百ジェニー、金貨は10万ジェニーで、大きな買い物や店舗間でのやり取りに使うのがメインらしい。
「わかりました、有り難く受け取らせてもらいます」
ハルキが外に出ると村の人ほとんどが集まっていたようで、それぞれ手紙と人によっては小さな荷物を持っていた。
「これこれ、荷物はいかんと言うたじゃろ」
と荷物を持った人をたしなめる村長だが、ハルキは
「その位なら何とかなります、大丈夫ですよ」
と受け取り、もう一つの肩掛け鞄にしまう。
「それでは皆さん、お世話になりました」
「大したもてなしも出来んかったがまたいつでも寄ってくだされ。娘への手紙、なにとぞよろしくお願いするでの」
「はい、じゃあ行ってきます〜〜」
軽やかな足取りで村を出る一行がどんどん進んで見えなくなると
「なぁ、村長、今頃マジックバッグに詰め直してる頃かな?」
「どうじゃろうな、一時間位は歩いてからだと思うがのぅ〜、ガッハッハ〜」
キョロ充のハルキ、期待を超える二時間歩いてからのマジックバッグ移し替えであった。




