第2話
「うーん、やっぱり百年のうちに過疎で村が消えちゃったのかな〜」
ハルキの問いかけにバニラは否定も肯定もしなかった。
とりあえずここで一晩休んで明日からは街を目指すかとハルキが考えた時、バニラはまだ進むよとハルキを引っ張って促した。
なんか考えがあるのだろうと思いながら街の方向に進むと少し大きな川があった。橋は流されたのか掛かっていなかったが、水量があまり多くない時期で膝上少しまで濡れればなんとか渡る事が出来た。
川を渡ってすぐに山沿いのカーブを曲がったら今度こそ人の気配のある村があった。
「こ、今度こそ村がある〜〜」
心底嬉しそうなハルキに落ち着けよという目線を送るバニラ。
どんな住人がいるかもわからないうちから喜ぶのは確かに気が早すぎる。
しかしハルキはキョロ充で、初対面の人と仲良くなるのは大好きだ。とにかく人に会えばなんとかなるだろうと思っていた。まぁ、バニラはバニラで別にいざとなればどうにでも出来る気配しか感じてはいなかったのだが。ライムはコロコロしていた。
木で出来た村の入口の柵に近づいた時、
「おーい」
とこちらに声をかけてくる男がいた。
「この村に客とは珍しいな、何の用だい」
「あぁ、冒険者になる為に街を目指してたんですが、道に迷ってしまって。一晩厄介になりたいんですが何とかなりそうですかね?」
「へー、こんな所に迷って来るとは物好きな迷子もいたもんだ、俺じゃ判断つかないから村長呼んでくるわ〜〜。ちょっと待ってな」
指示通りの言葉を言えた事と、約一年振りの会話にホッとするハルキ。
村と言っても家の数は十軒ちょっと。半分家族みたいに過ごしてそうな感じだった。
すぐに村長らしき老人を連れてさっきの男が戻って来る。
「初めまして、ハルキです」
「ああ、儂が今この村の村長やっとるドランじゃ。宿なんざ無いがうちの家にでも泊まって行けば良い。そっちの狼と肩に乗ってるスライムもアンタの連れなら問題ない」
「ありがとうございます」
「代わりにと言うたらアレじゃが、街に行くなら一つ頼まれてはくれんかな?」
「はい、出来る事ならさせてもらいます」
「おー、良かったな兄ちゃん。それじゃ一風呂浴びに行こうぜ。」
村の共同風呂に連れられて行った一行は旅の汚れを落としてスッキリして村長の家に行く。そこでは軽く宴会の用意がしてあり、村の住人が何人か集まっていた。
すぐに宴会が始まり、ハルキは一年振りの会話と酒を楽しむ。
給仕には何人か女性がいて、ハルキはすぐに皆と打ち解けていた。
そんな中村長がハルキのそばにやってきて、
「ハルキさん、アンタは冒険者になりにサノの街に向かうんじゃろ?」
どうやら百年前から街の名は変わっていない様だ。
「ええ、そのつもりです。」
「おお、良かった。それなら儂の頼みと言うのは簡単じゃ。儂の娘がサノの街の冒険者ギルドの受付をやっとるんじゃ。名前はドーラ。それに手紙を渡してくれんかのぅ?」
「それなら何とかなりそうですね、任せてください」
「おぉ〜、引き受けてくれるか。このウワノ村から若いモンは皆サノの街に出てしまうもんでな〜」
「へー、そうなんですね〜」
「だから他のモンの手紙も一緒に渡して欲しいんじゃ、まとめて娘に渡してくれたら後はうちの娘が振り分けて配るから」
「もちろん構いませんよ、喜んで届けさせてもらいます」
それだけでは悪いと思ったハルキは持って来ていた毛皮を3枚程村長に渡して、一年振りの楽しい夜を過ごしたのだった。




