072 きょうじゅと椅子
本日24話目?
??????
これで終わりなの?
終わりっぽいですね……。
「そっか。やっぱり僕の選択は間違っていなかったね」
俺は会田に話すように促した。
「この前さ、槍先生が俺を訪ねてきたんだよね」
「……詳しく聞かせてくれ」
こんなところで教授の情報が得られるとは。
しかし教授もフットワークが軽いのか何なのか。
普通にラスボスがダンジョン抜け出してんじゃねーよと思うが、別に教授は普通の人外だからな、どこに出かけても自由だろうさ。
普通の人外ってなんだよ。
「なんかさ、槍先生ってあんまり昔と変わりなかったんだよね。不思議。俺には、なんか野放しにしとくと云々言って、『私の下に来い』ーなんて言われたんだけど、俺は別に教授にはあんまり興味ないからさ、普通に断ったんだよね」
「断ったんか」
「うん」
会田は普通に答えた。
何だこいつ、無敵かよ。
「むーちゃんのこと調べているだろうと言われて、なんか変な雰囲気になったけど、俺がむーちゃんと山村くんのために研究してるのを知ったら、『近い内にまた会うだろう』とか言って帰ってった。何しに来たんだろうね」
「さぁ……」
本当に何しに行ったんだろうな。
「実は俺たちも教授の居場所を探している」
「そうなの?」
「何か連絡先のようなものは聞いてないか」
会田は少し考えた後、
「何か名刺みたいなのもらった気がするけど、職場に置いてきちゃった」
そう言った。
ここにまた一つ、教授への手がかりが見つかった。
「ねぇ、どうして槍先生を探しているの?」
会田はまた、あの好奇心を以て俺に質問してきた。
だが、俺は隠す気はなかったので、素直に答えた。
「教授が千賀を変えた本人だからだよ。だから、教授も人間じゃない」
「……へーぇ。やっぱりそうなんだ」
会田はニコニコとして嬉しそうだ。
「むーちゃんから聞いてたんだよね、鏡とかそういうのに映っても認識できないって。あれを試してみたんだけどさ、やっぱりそれだけだと確信には至れないからね」
会田は自分の恩師さえも疑ってかかるらしい。
千賀を迎えに来たあの時、会田だけが教授の存在を知らなかった。
しかし、会田は今では蚊帳の内側に入ってきてしまっている。
「そっか、僕も変えてしまいたかったのかもね。でもお生憎様。僕はむーちゃんと君に予約済みだったからね」
「俺は予約した覚えはないんだが」
「僕が予約したんだよ。僕と、君たちのためにね」
会田はニッと人懐っこい笑みを浮かべた。
俺はその笑みの裏側に、計り知れない好奇心と興味があることを知っているので、素直に喜べなかった。
「あれも来たよ。国家公安委員会警察庁警備局特殊事件部の人」
驚いた。
千賀の登録をしに来た政府の役人の所属先じゃないか。
まずいこと研究するとすぐ飛んでくるんだな。
「会田はどうしたんだ?」
「ふつうに自分を売り込んだよ。こんな研究させてもらってるんですよって」
何だこいつ。
心臓にイノシシの毛でも生えてんのか。
それ普通に売り込みじゃなくて脅しだろ。
「サンプルの出所がむーちゃんだと言ったら、僕がむーちゃんのお手付きでないことに驚かれたよ」
「そうなのか」
そういえば、千賀は人間の血は俺のものしか口にしていないと言っていたが、会田からさえももらっていなかったのか。
謎の潔癖症出してないで普通にもらえよあのバカ。
「それで、くれぐれもサンプルの管理を厳重にしろと言って帰っていったよ。彼らは何がしたかったんだろうね」
普通にお前に釘刺しに来ただけだろとも思うが、もしかしたら何か違う意図があったのかもしれない。
「もしよかったら政府の方の連絡先も教えてくれないか?」
「いいよ、それもまた職場だから出勤したらメールで送ろうか?」
俺は、公になっていない連絡先がデータとして残ることを危惧し、
「いや、また千賀の顔を見に飯でも食べに来るついでに見せてほしい」
会田にそう言った。
「で、会田は今日は何しに来たんだ?」
俺は暇そうにソファに腰掛けている会田に、思い出したように冷たい麦茶を出した。
決してぶぶ漬けではない。
「ちょっと君たちの関係性を見て充電しようと思ったのと、僕と君たちのこれからについてとか話しようかなと思って」
「見せ物じゃないんだが」
「ぶー、別に見ても減るもんじゃないしいいじゃんね」
俺は何だかよく分からないが、会田は俺と千賀が何かしているのを見ていたいということらしい。
「まさか、盗聴器なんてつけてないだろうな」
「むーちゃんにバレましたー」
既に仕掛けられた上で阻止されていた。
俺が昏睡していた間に何があったんだよ。
というかマジで千賀、セキュリティシステムとして優秀だな。
その時、家の鍵が開いたと思ったら「山村!」と千賀が帰ってきた。
いつ靴を脱いだのか分からないほどのスピード感で、俺の側に寄ってくる。
「おかえり、千賀」
「ただいま、山村」
最早俺の名前はこいつの鳴き声の一部ではないかと思われるくらい連呼されているなと思った。
「随分と早かったな」
「テイクアウトにした」
「そんなこともできるのか」
さすが最近の店。
公営の人外向けの店であっても、ちゃんとテイクアウトに対応しているとは。
テイクアウトということは、よく考えなくとも何かしらの容器に人血の類を入れて持ち帰って来たということである。
一気に話が猟奇的になってきたな。
会田はソファを立ち、「どうぞ」と俺たちにソファを譲った。
俺は客人を床に座らせるのを躊躇った。
千賀も俺と会田の様子を伺っている。
「いやお客様どうぞじゃないんだが」
「どうぞ」
会田は床に腰を下ろした。
俺は仕方なく対面で話すために、ソファに座った。
千賀も隣に座った。
「あれ、むーちゃんの上には座らないの?」
「別にいつも座って……」
俺は否定しかけて、考えてみれば結構千賀を椅子にして寛いでいるなと思い出して否定できなくなった。
「山村も俺の上に座っていいんだよ?」
「なんでちょっと俺が遠慮してる風にしようとしてんだよ、座らないよ」
俺はここぞとばかりに椅子宣言をしてくる千賀に自分の意思を伝えた。
そんなに椅子になりたいのか。
「僕も見たいなぁ」
「見せ物じゃないんだよなぁ」
会田そんなことを言い出すから、やんわりと断る。
なんだよこいつら、俺が千賀の上に座ってるのを見てどうするつもりなんだ。
会田の方がヤバくない?
もしここまで読んでくださってる方がいるならば、
何か「こういうシチュ読んでみたい!」とか、
「質問があります!」とか、気軽に答えるんで言ってくださいね。
ただR18は私は書きませんってことだけは伝えておきますね。




