068 りょうりとゲーム
本日……20話目??
「そういえば、教授の話をしてませんね」
俺がぽつりと言うと、全員がハッと気づいた。
そう、俺たちは今日、教授の話を聞きに来たのだ。
「申し訳ないが、俺達が知っているのは『教授』という吸血鬼の個体がいるという情報だけだ。ただ、教授の居場所を知っている人間を知っている」
神保は弁明するようにそう答えた。
千賀は早く説明するように神保を促した。
俺はその態度が悪かったので、机の下で小さく手をデコピンしておいた。
「もしかしたら、君達も連絡先を知ってるかもしれないが、教授も政府に狩られていないのであれば、未だに政府の名簿に載っているはず。定期的に監査を受けているのだから、政府は居場所を知っているだろう」
「成程」
千賀はすぐに立ち上がって帰ろうとするので、俺は繋いでいた手を引っ張った。
そして、手を繋いでいたことが二人にバレた。
「やっぱ、こらデキてるわ」
氏家がそう言うも、神保はそれを否定する言葉を持ち合わせてはいないようだった。
「氏家」
珍しく千賀が口を開き、これまた珍しく氏家を呼んだ。
「お前は、俺の気持ちを分かったか?」
「はぁ?」
氏家は何も分かっていなかった。
俺はここまでレベルアップした千賀ならやれるはずだと信じて待った。
「俺はいつも、山村を食べられない。山村の許可無しには、山村に触れる事も出来ない。それが人間社会での生き方だと山村に教わって来た。お前の言う『化け物』の気持ちは、お前は分かったか?」
これはダメだった。
俺は仕方なく千賀に助け舟を出すことにした。
「あーね、千賀はこんなこと言ってますが、まぁ、気にしないでください。自分がどう思っているかを伝えたかったようですが、伝え方がダメですね」
「は、はぁ」
氏家からは、よく分からないが頷いておこうという姿勢が伝わってきた。
神保は腕組みをして頷いている。
氏家は、「化け物の気持ち……?」と反芻しているから、千賀が伝えたいことはもしかしたら僅かにでも伝わるのかもしれない。
「今日はご馳走様でした。後でうちの千賀も締めておきますね」
「いやいや、君達の顔が見られて良かった。これからも定期的に連絡させてもらおう。後氏家は〆る」
神保のドスの効いた声に、氏家は「ひぇっ」と言い、二人はそのまま車に乗ってどこかへ行った。
「お疲れ様。俺たちも帰ろうか」
千賀は一つ頷き、車のキーでドアロックを解除した。
帰る途中で、食材の買い出しをした。
いつもとは違うスーパーには、いつもとは違う食材が置かれていた。
「山村は何が食べたい?」
千賀は機嫌よさそうに俺の隣で籠に食材を放り込んでいく。
「うーん、ハンバーグ?」
「いいね」
千賀は合い挽き肉と粗挽き肉を籠に入れた。
冷凍コーナーでは忘れずにブロッコリーを取っていく。
こうして俺はブロッコリーを食べることになるんだな。
家に帰った千賀は、台所で俺を呼ぶ。
「料理しようか」
千賀はボウルを出し、挽肉を全て放り込んだ。
卵、塩胡椒を加え、よく練り上げていく。
「タンパク質は熱に弱いから、ここは俺がやるね」
「そうなのか」
「ここからは、一緒に丸めようか」
俺はべたべたする肉だねを丸め、平たい皿の上に置いた。
「後は火加減だが、タンパク質の熱変性は緩やかである程、細胞から旨みが逃げ辛いため、なるべく弱火で火を通す」
「はぁ」
千賀は肉を焼いている間に、付け合わせの野菜を作ってしまった。
そして肉を蒸し焼きにし、「山村はさっぱり」と言いながら大根を一瞬ですりおろし、ポン酢をベースにしたソースまで作ってしまった。
「早い早い。俺が手を出す隙がない」
「俺がやった方が早いかなって」
「そうじゃなくて、俺に料理を教えてくれ。俺はお前と一緒に作業をしたいんだ」
千賀は俺を見た。
そして、嬉しそうに微笑んだ。
「分かったよ、山村」
ほぼ千賀が作ったハンバーグは普通に美味しかった。
ちゃんと付け合わせにブロッコリーもいた。
「後は冷凍して非常食にしておくね」
たくさん焼かれたハンバーグはきっと、俺の弁当のおかずになるのだろう。
風呂を出た俺は、そういえばこいつを甘やかそうと考えていたことを思い出した。
だが、と今日のことを思い出す。
こいつは今日、褒められることと褒められないことをやらかした。
だが総合的に見て、俺以外に自分の気持ちをちゃんと言葉にできたのは進歩だ。
SNSを見ると、今日、俺がやっているゲームのアップデートが入ったらしい。
ちょっと気になる。
そこで、俺は思いついた。
二人とも風呂を出てから、俺はいつもより早めに歯磨きをした。
千賀は何だ何だと気になってついて来た。
「今日はゲームしたい」
「どうして……」
千賀は俺が自分に興味がなくなってしまったと思ったのか、鏡の後ろで床に崩れ落ちた。
俺はおかしくなって笑うと、歯ブラシを置いてから「違うぞ」と千賀の肩を叩き、携帯ゲーム機を机の上に置いて準備をした。
「お前も何か噛むもんでも用意しとくといいぞ」
千賀は俺の言葉に頷き、俺のベッドの枕の下からお気に入りの骨ガムを取り出した。
最近枕に違和感があると思ったら!
俺はソファに千賀を座らせて、その上に座った。
「お前に見せてやるよ、俺のやり込みをな」
千賀は、本当に今までゲームというゲームをやって来なかったようで、俺のゲームを見ても何だかよく分からなさそうだった。
「山村。どうして夜になるとゾンビが襲ってくるんだ?」
「知らん。そういうゲームだからだ」
「山村。これ、金魚が歩いてる……?」
「そうだ、知らなかったか? 雨が降ると金魚は歩くんだ」
千賀が無言になったので、俺は慌てて、
「ゲームの話だから、これゲームの話だから」
と付け加えておいた。
「死ぬとお墓が自動で立つなんて贅沢だね」
千賀は何か怖いことを言い出した。
「まぁな」
「現実でもこうだったら、世界は誰かのお墓だらけになってしまうな」
「そうだな」
そう言いつつ、俺は上から降って来た落石でまた一つ墓を作った。
そんなこんなしているといい時間になったので寝た。
あ、ちなみにこの山村がやってるゲームはテ◯リアです。
最初夜になるとゾンビが襲ってきたの、超ビビりました。
あと何で地下の誰もいない場所に罠が積極的に仕掛けられているんですかね、不思議。




