063 カーテンとブロッコリー
本日15話目で合ってますか?
ようわからんくなってきた……。
「じゃあ、行くか」
俺は昼ご飯を食べた後、千賀と必要な日用品のリストアップをしてから家を出た。
向かうは近くの複合型商業施設である。
休みということもあり、施設は人が多くいた。
しかし丁度いい時間に来たのか、客の入れ替わりが起こっていたためすんなりと屋根つきの駐車スペースに停車できた。
俺は少し気が抜けて楽そうにしている千賀を見て、屋内の施設なら普通に出かけられるなと踏んだ。
まず、俺たちはカーテン売り場へと向かった。
千賀は「これが良い」と、最大遮光、最大UVカット、遮音効果のついた一番高いカーテンを選んだ。
「山村、何色が良い?」
「別になんでも」
俺は特にこだわりはないので千賀にそう答えたら、「白にする」と言い出した。
「なんか理由あんのか?」
「白ならば汚れたらすぐ分かるからな。山村の部屋は清潔にしていたい」
「俺は多少汚くても生きていけるがな」
俺は冗談めかしてそう言うが、千賀は首を振って、
「知っているか、カビが癌を引き起こすことだってある」
そう言って、重いカーテンを最初に籠に入れた。
実はタオルやハンガーなどは千賀の家から回収してきたので、他に買うものはあまりなかった。
ふと千賀が足を止めたので、俺も足を止めると、千賀の視線の先にはマグカップがあった。
北欧風で、クマがたくさん並んでいる柄があった。
「ほしいなら買えば?」
「買う」
千賀はそう言って籠に入れた。
まぁ、普通に千賀のものを買いに来たから支払いも千賀なんだがな。
そういえば食器は俺のものばかりだったから、千賀も自分のものを新しく買って置きたかったのかもしれない。
千賀があんまり食器自体使わないからあまり考えてこなかった部分だった。
普通に会計を済ませて家に帰ると、まずはカーテンの設置をした。
千賀は背が高かったので、上の方は千賀に任せた。
「千賀は身長どれくらい?」
「182.6」
「結構あるな」
「山村を包み込むのも余裕がある」
千賀は謎の自信に満ち溢れていた。
「それは女性に言ってやりたかったな」
俺がそう言うと、
「山村だから言ってるんだ」
と千賀は返す。
俺はふと、これ夫婦漫才みたいな会話になってないかと気づいたが、これが俺たちの関係性だから他人に何と言われる筋合いはないと強気に思った。
「その、なんというか……暗いな」
俺はカーテンをつけ終わった千賀にそう言って、部屋の電気をつけた。
千賀はいきなりついた電気に眩しそうにした。
こいつと俺は、こんなところまで違うけど、それでも一緒に生活しようとして何とかやってんだなと思うとしみじみした。
大体、どちらかが適している方に偏るのだろう。
薄暗い部屋に閉じ込められたり、明るい部屋で光を避けたり。
だが俺たちは、そのどちらでもない道を進もうとしている。
それって、もしかしたら、とても困難な道のりなのかもしれない。
だが、と俺は千賀を見た。
こいつと一緒ならば、何があっても大丈夫かもしれない。
千賀が俺を支えてくれるし、俺が千賀の手を離さない。
そんな確信があった。
千賀は、カーテンをつけ終わってソファに座っていた。
俺も少し疲れたので座ろうと思った。
座ってみると何だか冷たくて硬い。
「あっ」
俺は、何も考えずに千賀の上に座ってしまっていた。
千賀は固まっている、処理落ちしてしまった。
このまま理由なく座ってやったというのは理屈に合わないので、俺は慌てて、
「千賀、今日はお疲れ様だったな。明日も頑張ってくれ」
と、自分の行動を誤魔化した。
千賀に見透かされているか、と恐る恐る様子を伺うも、まだ自分の膝の上に俺が自ら乗ってきたことが信じられていないようだ。
たまには、こうして甘やかしてもいいかもしれない。
「お前は冷たくて気持ちがいいな」
俺は千賀の腕を引き寄せて抱きしめると、そのままうとうとと眠ってしまった。
最近俺は弛んでいる。
台所から漂ってくる香ばしい匂いで、俺は目を覚ました。
いくら病み上がりとはいえ、最近すぐにうとうとと寝てしまうのはまずいのではないか。
敵に襲われでもしたらどうするんだ。
敵とかいないけど。
俺はチラリと千賀を見た。
あいつ一人で何とかなるか。
もう一寝入りしたいな。
ダメだ!
あいつでも何ともならなかった場面だってあっただろう。
しかも次の目標は教授だ。
あいつ、教授を「父さん」とか呼んでるから、俺の味方かどうか怪しい部分がある。
だからと言って、俺が教授に勝てるかと聞かれれば逆立ちしようが何しようが腕力では勝てない。
まず千賀に勝てない。
だから、教授を敵にしてはならない。
そもそも俺は教授を倒したい訳でもない。
教授か俺か、どちらを選ぶのかは千賀次第だからだ。
千賀。
お前はその時になったら、俺を選んでくれるのか?
それとも、お前は……。
「出来たよ」
今日のお夕飯は、ナスと豚肉とブロッコリーの焼き浸しを素麺の汁にしたものだった。
上にミョウガまで乗ってるのがにくい演出である。
シンプルにおいしい。
俺はずっと気になったことを聞いてみた。
「お前さ、どうしてほぼ毎回の料理でブロッコリーを出してくるのさ」
「ブロッコリーには身体を健康に保つための栄養素が豊富に含まれているからな。最近特定野菜に指定されたのは、それだけの理由があるからだ」
「はぁ」
「煮て良し、焼いて良し、そのままでも美味しいとなれば、無理やりにでも料理に入れない理由はない」
千賀にも、ブロッコリーを余計に料理に入れていた自覚があるらしい。
無意識で千賀を椅子とする山村に、そこはかとなく飼い主の適性を感じる今日この頃。
ちなみに、
山村の身長は168、千賀は182です。
何がとは言いませんが捗りますね。




