013 やすみとお稲荷さん
次の日、起きたら昼だった。
「まずい!」
研究所に急いで電話すると、「千賀さんから『体調不良のためお休みする』と聞いています」と言われる。
千賀に取り継いでもらうと、
「もしもし山村か。今日は無理せず寝てて良い」
「いやそういう訳にもいかないです」
「君にも有給が残ってるし、今回は病欠という扱いだから平気だ」
「罠は大丈夫ですか?」
「二カ所空弾きをしていたのを直してきたから心配するな」
「でも、これから出勤します」
「いいや、君は今日は休んでいてくれ。これは君の上司としての業務命令だ」
そこまで言われては、休むしかないだろう。
確かに今から出勤しても、働く時間の方が少なさそうだ。
「……分かりました。今日は家で安静にします」
「私のせいで無理をかけてしまった。申し訳ない」
その言葉を最後に電話は切れた。
千賀も、仕事ができる社会人だったなと今更ながら思い出した。
だが、最近の隙だらけの千賀が悪いと思う。なんでティッシュ食べるんだ。意味わからん。
奴とてこれくらいのイメージアップ作戦があっても良いと思う。
家で安静にしているとは言ったものの、食べるものがあまりないので買い出しに出た。
たまたま今日は途中で通った老舗で助六寿司が売っていたのでもれなく買うこととする。
お稲荷さんが好きだからだ。
お稲荷さんよりもっと好きなのは、油揚げの中に餅が入ったあれである。どちらも最近なかなか売られていないのが悔やまれる。
近くのスーパーでは、冷凍食品と肉を気持ち多めに購入した。肉は冷凍したり味付けをして気持ち長く置いておけるからだ。
パンパンに詰まった買い物袋を左腕に掛けてから、痛みで右腕に持ち変える。
見ればいつも採血されている場所が青痣になっている。
献血する際などにもよくこうして痣になることがあるそうだから、一般的な症状ではあるものの、千賀という化け物を飼っているという重みが痣として出ているような、そんな錯覚を受けた。




