8話 無力
★主な登場人物★
・ベル (本名 ???)
現代人。鈍感な本の書き手/164cm
・来栖恭介
未来人。爽やかな医者/177cm
・百目鬼弓月
未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm
・七彩七海
未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm
・服部半蔵
過去人。???/172cm
総理と琥太郎氏は年始によく見る福笑いみたいなアイマスクをされていた。すいません、面白すぎます!
目が変になっているのを琥太郎氏がつけていて、総理は眉毛が濃くなっているデザインをつけてる。ナナの私物で、服部さんを見えないようにする防止アイテムなんだろうけどチョイスがヤバい!
「こやつらが謀反を起こすとは思わなかったのう」
「ええ。四人はずっと仕えてましたから未来人とは思いませんでしたね。"本"に関わる時、未来人の強襲や周囲の裏切り行為が起こる可能性が高い――注意事項に書いてあったことは本当でしたね」
あっ! それであの時にびっくりしてたんだ!
服部さんとナナは服を着せ終えたようで、「次郎さん! 琥太郎さん! 目隠し外してくださいっス」
「はい……七彩様、お守り頂きありがとうございました」琥太郎氏は、総理から目隠しをひっぺがしながらお礼した。
「クリーニングをして後ほどお返し致しますのでお待ちくださいませ。」
福笑いなデザインのアイマスクは、琥太郎氏の手でいかにも高級そうなシルクの布で包まれた。
どうしよう、もうこれだけで面白い。堪えるの無理!
「ウチが洗濯するんでそのままでいいっスよ?」
「いいえ、守って頂きましたからお礼のお菓子と共にお渡しします」と固辞した。
ナナは目をキラキラしてハイっスとペコペコした。ふふっ。お菓子嬉しいんだね!
「片山、山岸、小山、山川……。お前達に何があったのじゃ……」
全員名前に『山』がついてる! 最初から怪しいよ!
「琥太郎さん、すみませんが使用人の皆さんと戦ったナナと服部さんを念のため診ていいですか? 時間はそうかかりません。絶対に命を奪わないことと、仲間を守ることを俺たちは決めているんです」
「……お願い致します、来栖様。レナは医師の見解であと僅かと言われていますが、何度も生き延びてきた強さがあります。ですから我々も急いでいません。」
琥太郎氏は逆に、と考えながら付け加える「今急いだとしますと――自白をさせず情報の無いまま病院に向かうことになりますから、命を狙われるリスクがありますよね? 情報は武器です。確実に整理して行動していきましょう」
一言が長い琥太郎氏は、切り替えるように眼鏡の替えをどこからか出して掛け直した。さっきまで割れてましたからねえ……。
「では布団を四つ用意してくれますか? 怪我したまま寝せておくと傷が悪化する可能性があります」
琥太郎氏がパンパンと手を叩いた。使用人達が走ってきて布団を敷いていく。さ、さっきより遅くてなんか安心した……。でもやっぱり作業が早い。
「そうだ、屋敷内ではこの四人以外は裏切ってないっスから安心して下さいっス。疑心暗鬼になるのはわかるっスけど、疑ったら可哀想っスからウチが保証するッス!」
「そりゃ良かったわい。皆は敵にも優しいのう」
「あざっ――」ナナが倒れそうになるのを服部さんがすかさず受け止める。
「ナナ!」
私が駆け出そうとしたら、もうユヅさんが動いていた。キョウは私の手首を掴んで、首を横に振って止める。
「馬鹿野郎! 能力を使ったな!」
駆け寄った瞬間、怒鳴っていたけれどユヅさんが血相を変えて心配してるのが伝わってくる。
「心配性っスね……。ウチはチート級に最強だって知ってるじゃないっスか……」
「時間は飛んだのか?」
「ウチは飛んでないっスってば、お説教じゃなくて褒めてくださいっス」
「はいはい。……よくやった。」
「……っス」
ナナとユヅさんってとても仲が良いんだ、って思ってたけど、多分そうじゃない。
絆とか、仲間とかを超えた固い信頼とかそういう言葉じゃ表せないくらいに繋がってるんだ……。
ユヅさんがキョウへ視線を送ると、強く頷いた。
すると私の方を見て、「ベル。これを」と鞄から取り出す。
渡されたのは、うさぎのマスコットだった。
「わっ! 白衣を着ててキョウに似てる! キョウうさちゃん、だね。かわいい……」
「このお腹を押すと俺に届くようになってる。ユヅ先輩のお手製だ。なんでもいい、些細なことでも何かあったら知らせてくれ。俺がいない時はいつでもそうしてな」
「うん……。でも、私もお手伝いしたい! みんなにばかり無理させちゃってるもん……」
倒れた瞬間のナナを思い出す。四人相手に戦ったんだよね? 服部さんもいたけど、ナナの方が消耗が激しい。そこまでさせちゃったのに、私は座ってるだけなんて嫌だ!
「駄目だ」ユヅさんの圧力のある強い声だった。威圧感に押されて体を小さくすると、キョウが「ベルの気持ちは受け取ったから待っててな」と私を諭して遠ざかる。
キョウがいた所――隣にユヅさん座った。
「いいか、ベル。万が一敵が失神したフリをしていたらどうする? 襲われるかもしれないだろう? そうなったら僕達は任務失敗だ。ベルの性格上、放っておけないのはわかるが……心配してくれるだけで本当に感謝してるのを忘れないでくれ」
「……はい」
――悔しい。私、なんで未来人じゃないんだろう。なんで力になれないんだろう。
「じゃ、じゃあせめて一瞬だけごめんなさい! きょっキョウ!」
おい、とユヅさんの声が聞こえるけど、私はキョウに駆け寄る。
「どうした?」何かあったのか、と伺うようにキョウは振り返る。
私は胸ポケットに入れていた青色の前髪クリップを取り出した。最近買ったばかりで、あんまり使ってないやつ。
「キョウは前髪が長いから……これ、良かったら使って?」
キョウは前髪クリップと私を交互に見て、ふっと笑った。「助かる」と言って受け取ってくれる。
「……これしか、私、できないけど……」
「そんなこと言うなって。な?」
キョウは嬉しそうに早速つけてくれた。「お、見えやすくなった。前髪が揺れなくていいな」
さあ戻るんだ、と私の肩を押す。後ろ髪が引かれるけれど、一瞬って言ったからすぐに戻る。
座るとユヅさんがすぐに口を開いた。
「ベル。今回だけ許す。今後は駄目だからな」
「ごめんなさい……」
「許す、と言っただろう? ……その、だな……恭介が治療をしやすくなったからいいんだ。そう落ち込まないでくれ」
「うん……」
しょぼん、としまったからかな、ユヅさんがまた声をかけてくれた。
「じゃあ、僕の頼みを聞いてくれるか? ベルの協力が不可欠なんだ」
私が協力できるの?! 「はいっユヅさん」何回も頷いた。
「後で良い。メッセージを送っておくから読んでほしい。誰にも見られるなよ? 読んだ後は即破棄だ。頼む。」
「私、できること全部やります」グーを作って気合いを入れる。「助かるよ……」と言ってくれたのに、ユヅさんは切ない表情をした。大丈夫かな……? いつもびしっとしてるのに。
今見たいけど後でって言ってたもんね。約束だから我慢しよう……!
「警備の強化と恭介の手伝いの為に僕達の仲間を呼びます。総理、琥太郎さん、驚かないでください」
「了解致しました。宜しくお願いします。それから、こちらの使用人と警備のデータをお見せしますのでご確認頂けますか?」琥太郎氏がスマホと紙の資料をどさり、とどこからか出してきた。
琥太郎氏って未来人よりしごできなんじゃない……?
もしかして未来人なのかも、なんて思っていたら、うさぎの仮面をつけた人が何人も入ってきた! 全員ジャージを着ている。あ、これ前に服部さんも着てたヤツだ! とんでもない光景だ!
なんとなくキョウの方を見る。前髪クリップ使ってくれて嬉しい! 私と話す時と違って、真剣でお医者さんの顔になってる。
キョウはこめかみをトントントン……と軽く叩いた。なんだろう?
――目の色が青に変わった。
「キョウ兄! 使わなくていいっスから」と無理をし続けてるナナを診た。
いつもと違う……。能力ってやつなのかな?
一方、うさぎ仮面たちは、総理や琥太郎さん、キョウのところに行った。警備なのかも。
一人は何やらふむふむと頷いてキョウから離れる。仲間を呼んだらしくて、うさぎ仮面がまた増えた。今度は、めろめろ落ちした四人のところに行って包帯や湿布を貼り傷の手当てをし始める。
私の知らないところで、こんなに多くの人が動いているんだ……。
私は無意識のうちに手の中のキョウうさをきゅっと胸元に引き寄せた。
キョウはナナを座布団に寝かせようとバトってた。「大丈夫っスって!」「一秒でも休め。ドクターストップだ」二人とも声を張っていたので聞こえてくる。ユヅさんが「あの馬鹿……」と呟いているのを私は聞き逃さなかった。
服部さんは大丈夫だったみたいで、私の後ろにさっと来てくれた。
「服部さん、あの、なんというか……すごくお疲れ様でした」
「ありがとうでござる。ベル殿。」
「こちらこそです」
おお、綺麗な声だなあ。てか、ありがとうはこっちのほうなのにね。服部さんも優しい!
キョウとうさぎ仮面達は治療を終えたみたい。多分、十分もかかってない。
「ユヅ先輩! 自白の用意ができました。どうします?」
「琥太郎さんから頂いた資料では物足りなかった。七海! 誰に話させるのが一番良いんだ?」
「片山さんっス! 一番強くて統率してた感じがしたっス!」
「適当だな……」
「拙者も同意見でござる。術をかけても一度はナイフで己を刺して耐えた強者でござった」
「そうか、決まりだな。恭介! 頼んだ。総理、琥太郎さん、申し訳ございませんが覚悟をして下さい。予想外のことを話すと思いますから」
「わかったぞい」
「ええ、覚悟しています」
うさぎ仮面四人が片山さんをえっさほいさと布団ごとこちらに運んできた。その横に回復したナナが座る。
私が見ているのに気づいて手を振ってくれた。ナナぁぁー! 私も全力で振り返す!
キョウが片山さんの頭の数箇所に、小さな画鋲のようなものを刺していく。まだ青色の瞳のままで、別人みたいだった。
医師としての仕事を終えたキョウは、ニッとしてユヅさんに手をパンと叩いてバトンタッチした。
――もういつものキョウになってた。なんだかホッとする。
ユヅさんが席を立ち、キョウが私の隣に座った。「ベル」と呼ばれて、反射的に見つめる。
「ヘアピンのお陰で見やすくてやりやすかった。あと、マスコットをずっと手に持っててくれてさんきゅな」
「役に立って良かった! てか、うさちゃんのこと、なんでわかったの?」
「脈拍がわかるようになってる。ずっと手で持って撫でてくれてただろ? そいつ、幸せ者だな」
「だってキョウの分身だもん。これからも持ってていいんだよね?」
「俺も、このヘアピンもらっていいんだよな?」
「私のお古だから新しいのあげるのにぃ」
「いや、これがいいんだ。……使いやすかったからな。それから、ウサギはこれからも持っててくれよ?」
「うん。あげるし、持ってるね!」
「――おっと……もうそろそろ起きそうだな。また後で話そう」
空気が変わる。私も緊張してきた。キョウうさが居てくれて心強い。また撫でてみると、安心した。
「恭介! 念のため確認だ。時間移動防止もしてるよな?」
「はい、ユヅ先輩。ナナに確認したら、違法で五回時間移動したらしいんで」
「なかなかの手練れだな……。改めて指示する! 警備担当二名はナナと共に片山さんへつけ! 医療兼護衛班は二名ずつ総理と琥太郎さんの横で待機! 他は入り口を固めろ! 眠っている三人の呼吸観察だ。ベルは俺と服部さんが守る! 余ったヤツは屋敷周辺を警戒!」
うさぎ仮面達が動く。見た目はアレだけど頼もしい!
全員配置についたタイミングで、「片山さん、すみません。こんな形で記憶を暴いてしまうことを重ねてお詫び申し上げます」ユヅさんもナナも「申し訳ない」「ごめんッスよ」と言って頭を下げる。
――自白させることだって、心を傷つける行為だもんね……。
「片山さん……ごめんなさい」私も倣って頭を下げた。後ろで服部さんも「かたじけないでござる」としゅんとしている。
全員で謝っていると、総理が目元をぐいっと袖で拭いているのを見てしまった。
琥太郎氏は眼鏡が反射で光っていて表情がわからない。
「では、いきます」顔をしかめながらキョウが合図した。片方の手は強く握りすぎていて震える。
キョウだって、こんなことしたくない。片山さんもきっとされたくない。みんなだって本意ではない。
でも、進まないと――。
今度は私が、キョウを支える番だ。
キョウ、と小さな声で呼んだ
「私も一緒に背負うから、だから……あの、ね」
震えが止まるように、そっと手を置いてみる。
キョウは驚きつつも、ふっと笑って手をひっくり返して握り返してきた。震えは止まったみたい。
「では、片山さん、失礼します」
リモコンみたいなものを取り出して片山さんに向けた。
え、まさかの遠隔操作⁈
ボタンを押すと、頭をゆっくり起こして――正座した。ご丁寧に布団まで畳み始める。
またキョウが、ピッとボタンを押す。すると片山さんが話し始めた。
「私は、山神様の『闇山』に属する一員です。山神様の命令の元、"本"の書き手を始末するよう指示を受けておりました」
嘘……私、ずっとこの屋敷で狙われてたの?
***
「山神じゃと⁈」
「あの大臣、あんたに恨みがありますもんね」
「ワシ悪くないのに! 勝手に恨んできたんじゃもん!」
キョウうさちゃんかわいいですね〜!
お星様にて応援頂けますと嬉しいです!




