7話 戦闘、そして混沌
★主な登場人物★
・ベル (本名 ???)
現代人。鈍感な本の書き手/164cm
・来栖恭介
未来人。爽やかな医者/177cm
・百目鬼弓月
未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm
・七彩七海
未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm
・服部半蔵
過去人。???/172cm
ウチがただのきゃわいいギャルだと思ったら大間違いっスよ! 最強で一度も死んだことがないスから!
片山は正体がバレて驚いて後ずさっている。ウチを舐めてたっスか?
「……! なんでわかっ……」
「仕事が出来すぎなんスよー。現に今、ウチピッタリに歩幅合わせてたっスよね? あのじゃらじゃらの鍵を音もなく置くなんてすごすぎっス! 指示も前もって知ってる感じで、行動が早すぎたんス、よ!」
三回瞬きをしてリミッターを外した。
――着物の帯を思い切り引っ張って引き寄せる。が、いなくなっていた。時間移動されたっス!
なんの前触れもなくさっきの使用人が現れて四方が塞がれていた。一斉に銃を頭に向けられる。
どいつもこいつも兵器を持てば勝てると思って嫌っスね!
しゃがんで右と左のヤツの腕を掴んでぶつける。そのまま回転して前後にいるヤツの足首に拳を喰らわせた。骨までいった感覚がある。申し訳ないっス……。
でも、前にいた女――片山が左にいた執事を勢いよく力任せに壁に押しやって、ウチ目掛けて引き金を引こうとした。着物を着ているくせに胸が揺れるほど大きいのも勘に触る。チッ。
遅いっス! 銃ごと手を握り、ウチの方へグイッと容赦なく引きながら、ヤツの懐に入って鳩尾を殴る。屈んでいるからばっちいゲロゲロを浴びずに済んだっス。ふう。チビで幸いっした。でもウチより大きいなんてムカつくっスね!
……さっきの執事の扱いから考えると、敵味方関係なしってヤツっスか。仲間を大切にしないなんて、ありえないっスよ!
また視界が変わる。今度は出口付近まで時間を巻き戻された。サシでやった方が良いと判断したっスか?
時間が巻き戻ったことで、ウチがお前の後方を取ることになるのに!
この時点ではまだ片山は銃を隠してた。のでッ! 小型のナイフを靴下から取り出し、袖を切り裂いて落とすっス! 着物に包まれていたとはいえ、鉄の塊が落ちる音が響く。
あ、後でユヅパイセンに怒られる! ――けどそれどころじゃない! ヤツが銃を取り戻そうと手を伸ばした瞬間、銃を蹴飛ばして届かない位置へやる。
ウチの能力値が最高潮になってスローに見えるっス。ヤツはまだ銃を取ろうと手を伸ばしている。その右手をガッと掴み後方へ捻ると、今度は左手でナイフを取り出し、とにかく刺そうと悪あがきしてきた。こんなちんちくりんな攻撃は無駄っス! 避け続けてるのに引く気配は無いのは、また時間移動をする為に足止めしてるッスかね……。マジしつこいっス!
けどけどっ違法で何回も時間を飛んでどっぷり疲れてるに違いないっスね。
――ふふん。からかってやるっス。
ウチのとっておきの非常食・苺大福をポケットから出してナイフに刺してやると、ウチを刺せたと、勘違いしてニヤっと笑い安心した様子になった。ついでに「痛いっス……」と女優のように演技をして仕込んでいた血糊の袋をポケットの中で割り、ぽたぽたと床に落として成功させたと錯覚させる。
んむぅ? 苺大福を刺して満足してるってコトは、人を刺したことがないっスね。戦闘は銃オンリーな感じっスか?
「ほいっ!」ヤツの手首を渾身の手刀で苺大福ごとナイフを落とす。片山は何が起こったかわからない様子になりつつも逃げようと体を激しく動かす。そうっス、お前は刺していない! でもって逃すつもりもない!
銃もナイフも失った片山の両腕を、ウチの華奢な左腕で後方に絡め取って動けなくする。完全に拘束したっス! 抵抗するかと思ったが上手くいったッス。想像以上に呆然としちゃってるっスねー。
よし。このまま行くっス! 未来人だからって無闇やたらに時間を飛ぶから自業自得っス。しかも軽く武器を使うんで、折檻の意味を込めてウチの銃をあえて片山の口の中に突っ込んでやった。
異変に気づいた仲間が足音を立ててやってくるが、ヤツらはこっちを見た瞬間凍りつく。動けない。
うーん、絵的に悪いっスね。ウチとしたことが口の中に銃って……やりすぎたっス。反省したらすぐ行動!
片山は震えている。ならば! 銃をさっと抜いて、汚れてしまったあの時の靴下と交換する。地球に優しいリサイクルっスよ!
――舌を噛まれたらたまったもんじゃないっスから。なんか入れとかないと。
ヨダレだらけの銃をこいつの着物で遠慮な〜く拭いて、そのまま片山の頭に銃を突きつける。不本意っスけど脅す形にする。両腕の拘束から体全体の拘束にするっス!
後ろでヤツの両腕を拘束していた左腕を引き抜いて、ウチは手を前に回してコイツを抱きしめるような形になる。うげげ……。キモイし大きい胸が当たって腹立つっス……。敵三人は、もう戦意喪失している。片山が撃たれないかと目を逸らさず、びくびくしている。
アイツらは片山と違って人情があるっスね。
じゃあま、やっと一段落ってことで……。
―― 三回瞬きをして体を戻す。ふぅ。
「ハンゾーっち!」普通の声量でも呼んだら来てくれるっス。
「いつもアレ、おなしゃス」
ハンゾーっちは長い前髪を掻き分けて「見るでござる」と言った。
思い通りっス。苺大福も無事で良かったっス! 食べ物は粗末にしたくないんで拾ってもぐもぐする。
「ハンゾーっち。ごめんっスけど、このまま完全に落として下さいっス」とお願いした。
***
「ただいまっスー! 黄金のおトイレでびっくりしたっスよ」
キョウとユヅさんがナナの顔を見てホッとしている。私もおかえりと心の中でナナに伝えた。
「成金みたいじゃろ?」
「……ちょっとだけ思っちゃったっス」
「七彩様は素直なお方なんですね」
「はい! 素直でいいコです!」
「不器用ですけど思いやりがありますよ」
「いいえ、警護する者として失格です」
「ひどいッス! ユヅパイセン!」
「お前は落とし物が多いからな」
ナナはげっという顔になった。
「仲が良くて微笑ましいのう。ところで――片山はどうしたんじゃ?」
キョウが手を三回握ったのは、戦闘の可能性ありの合図だった。片山さんがいないということは、ナナが仕事を果たしたのだろう。す、すごい……!
「次郎さんはやっぱり内閣総理大臣っス。隠してもどうしょもないんで明かすとするっス! ――ハンゾーっち!」
服部さんが現れ……あれ、いつもみたいにすぐ来ない。代わりに廊下から、はぁはぁと苦しげで悦びを含んだ荒い息と「服部様♡」と何度も呼ぶ甘い声が聞こえる。何が起こってるんだろう……?
服部さんは、ぴったりとまとわりつく女性達を連れてやって来た。一人は、着物を際どいところまで捲り上げた状態で太ももやら何やら物騒に擦り付けている。怖い!
さっきの片山っていう人なんて、着物をぐっと帯のところまで下ろし始めて、腕に絡みついてる。
うっわ……でっか! あっ? あああ! 胸っおおお押し当ててる⁈ 後ろにもなんか人がいるけど目がハートになってるし見えてはいけないものが見えてる! うわあああ! えっちだえっちだ! だめえええええ!
こ、こんなの純粋な推しに見せられないよ!
気がついたら咄嗟に動いてた。ポケットからハンカチを取り出してキョウの顔に被せる。
「だめえっ! 来栖恭介くん二十五歳には早すぎる! 見ちゃだめ!」
「ベル! どっどうした」
「見たらだめったらだめなの! 私の方が二つお姉ちゃんだよ?!」
「わ、わかった! 来栖恭介わかったから!」
「約束して!」
「約束する! おっ落ち着いてくれ! 頼むから!」
ユヅさんとナナは、はぁ……とため息をつく。
次郎さんは「おお! なんと羨ましい!」と歓声を上げた。
琥太郎氏はカチカチに固まってパリーンと音が鳴り眼鏡が割れた。
で、私は今も来栖恭介くんの目を塞いでます。
「服部様ぁ♡ こっち見てぇ♡」
「はぁん♡ 筋肉の感触がたまらない……♡ またお顔を見せてくださぁい♡」
「ああん♡ もう耐えられないッ」
「オジサンになんでも言ってネ♡ 半蔵きゅんの為ならなんでもし・ちゃ・うゾ」
執事のオジサンまでやられてる!?
「えっと、ハンゾーっちは顔も声も良すぎるんスよ。だから両目を見て声をかけられちゃったら、みんなメロメロになるんス。忍術でもなんでもないっスよ。ってあーッ! 服! 全員脱いじゃうっス! オジサンもダメっス! ハンゾーっちなんとかするっス! 十八禁になるっス!」
「服を着て欲しいでござる」
誰かを口説いているような甘い声に私はびっくりした。服部さんが喋ったってコト!!??
「ごめんなさぁい♡」
「半蔵きゅん……オジサンのこと許してネ♡」
「服部さん、七海。お疲れ様。自白させたらさっさと終わらせよう」
「はいでござる。ユヅ殿。」
それから、服部さんは前髪を掻き分け――ってあれ?
――体が勢いよく押された。でも痛くない。いきなり視覚が真っ暗になって、あったかい……?
「見るな!」
……キョウが叫んでる。キョウに抱きしめてられてるの?
「見るな! ベルが持っていかれる!」
「大丈夫だもん! 服部さんの顔見たかったのに……って、あ! キョウってばえっちなお姉さんのこと見てない⁈」
「見るかあんなの! 約束しただろ!」
すると、ユヅさんが「くッ……」と呻いてるのが聞こえた。
「クソ……意識が持っていかれるッッ!」
ユヅさんまでめろめろになるの⁈ 見なくて良かった!
「うわ! ユヅ先輩も見ないで下さい! ナナ、総理と琥太郎さんに目隠ししてるよな⁈」
「もちっス! ちゃんと隠してるっス!」
「見たいんじゃがダメかのう」
「言う通りにしろ、ジジイ」
二人はしっかり目隠しをしているみたい! めろめろにならなくて良かった、本当に良かった。
「ナナ殿、拙者はどうしたら良いであろうか」困り果てた服部さんが縋るようにナナに指示を仰ぐ。
「絵的にマズイのでもう眠らせて下さいっス! キョウ兄に起こしてもらって自白させれるっスから!」
すると、「はぁん♡」「あぅっ♡」「半蔵きゅうんん♡」と鳴きバタバタと倒れる音がした。
どうやら一段落したらしい。はあ……急に疲労が襲ってくる。
すると、キョウが抱きしめる力を抜いた。「落ち着いたようだな。ベル、もう大丈――」と私を解放しようとして、至近距離で目が合った。
あら。我が推し、顔が良い。
「うわっ! ごめんベル!」と顔を真っ赤にしてヒュンッと後ろに飛んだキョウをユヅさんが見事キャッチした。
「なにっ? キョウっ? 大丈夫⁈」
ユヅさんはニヤニヤしながら「恭介なら寧ろ大丈夫だ。心配するな」と代弁した。キョウは顔を両手で覆ってる。真っ赤だし、様子がおかしい。絶対大丈夫じゃないじゃん!
……もしかしてまた私のわからないことが起こってる?
――でも、半蔵推しオジサンが萌え萌えきゅん♡ なのはわかった。わかったから!
初めてアクションを書きました!
からの平和に収めようとした結果、ギャグに転びました……
お星様にて応援頂けますと嬉しいです!




