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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢歌環めちあ


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6話 "本"の規則

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm

・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm

・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm

・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm

・服部半蔵

過去人。???/172cm

 "本"のルールは難しいし、夢を見せるって聞いたから――私もあんなことを夢で見れたら最高! って思ったんだけど、制限が想像以上に厳しいんだよね。

 夢なのにある意味では夢じゃなくて、現実オンリーだし。

 総理も琥太郎氏も大丈夫かな……?


 一瞬、室内はシーンとしてしまって気まずかったけれど、総理は変わらない様子で質問をした。答えていくのはキョウだ。


 恭介は依頼人が慌てたりパニックになった時のサポーター役も兼ねてる、とユヅさんが言ってたなあ。


「じゃっじゃあ遊園地の夢は」

「過去に遊園地に行った思い出でしたら、ベルが"本"に書けますよ」

「い、行ってなかったら……どうなるのじゃ?」

「行っていないのであれば、残念ながら事実ではないので、"本"には書けません。非常に厳しい規則で取り締まっているんです」


 総理は、紅茶ではなくお水を一気飲みしてから、躊躇いを押しのけて言う。こ、こわっ……。


「……ち、ち、ちなみに、破ったらどうなるんじゃ?」

「残念ながら、詳細を言えないんです。ただ、書き手の命に関わるとだけお伝えしますね。ですから、俺達はルールを破ることは絶対できないんです」


 ここで、琥太郎氏が総理を羽交締めにしながら一気に話した。


「いちいち愚かな伯父が誠に申し訳ございません。"本"というものの仕組みや、これからすべきことをお教え頂けますでしょうか? 私共もその方がご協力できますから。無論、聞いた者は私がどんな手を使っても口外させません」


 私たちは"本"についての説明を改めてすることになった。た、助かったけど総理が苦しそう!


 ベル、書き手である君から説明を頼む。とユヅさんに促される。


 私は覚えたことを順を追って話した。


――+――+――


 "本"には、夢を見る本人が経験したことしか書いてはならない。


 "本"を書く為には、夢を見せる本人に会い、読み手が記憶を読むこと。


 書き手は、読み手の解釈を尊重し、"本"を書くこと。決して偽りをしてはならない。


 夢を見せるのは本人のみとする。他者に見せてはならない。


 夢を見せる為には、"天使の手"を持つ医師が、鍵状に頭蓋骨に穴を開ける手術を行う必要がある。失敗した場合、夢を見せることはできない。手術には、通常の医療手術と同じリスクが発生する。


 本人が夢を見た後に何が起こるかは、予測不可能で保証できない。


――+――+――


「ほ、"本"を通して夢を見せるためには、このプロセスが必要で、色々と守ることもあるんです」


 なんかこんな感じだったような気がするけど合ってるかな? SOSを送るようにキョウを見ると、微笑んでテーブルの下で丸を作ってくれた。よ、良かった〜!


「成程。随分と美味い話があるものだと思っていましたが、やはり制限はつきものなのですね。例えば、理想の夢が見れると仮定しますと――延々と悦に浸り麻薬のように使える。依存も回避できない。こうした規則がなければ悪用する者が多くなるでしょうね」


 琥太郎氏は私の予想の遥かを上回って分析した。今まで気がつかなかったけど、"本"って使い方によっては超ヤバい代物なんじゃん!


「ほう。良くできているんじゃな。レナは昏睡状態じゃが……『読み手』とやらは、誰なのじゃ? それと、察するに『読み手』というのは寝てても記憶を読めると見た」

「流石っス! 総理! ベルっちはすごいんス! たまたま『書き手』と『読み手』の能力を持ってるんスよ! あとキョウ兄――ええと、白衣のにーちゃんも『読み手』っス!」


 え、そうなの? 知らなかったんだけど! 私レアなの? マジ……?


「ナナの言葉を補足しますね。ご推察の通り、読み手も兼ねているベルと俺は昏睡状態でも記憶を読めますのでご安心下さい。二人で記憶を読み、その人にとっての輝かしい瞬間を議論・解釈してベルが"本"へ仕上げます」

「そうじゃったのか! たくましいチームじゃのう。それにしてもギャルのお嬢さん、褒めてくれてありがとうじゃ! 次郎だけに二浪して東大に行った甲斐があったわい」


「七海! ご依頼人様にくだけた話し方をするんじゃない! すみません、よく聞かせますから……」

「ごごごめんなさいませ……」


 ナナが小さくなる。敬語が苦手なことが私の中で解釈一致すぎて笑っちゃいそうになるのをおさえる。おさえた。


「普通に話してくれるのが琥太郎くらいじゃから、ワシは嬉しいぞ? 総理と呼ばんでいいしここは『次郎さん』とでも呼んでくれたらよい。ワシは普通の爺さんじゃ」

「ええ、そうです。情報を共有するならば尚のこと、このジジイのようになさって下さい。私はこの話し方が癖になっていますから、お気になさらないで下さい」


「じゃあ普通に話すっス! ユヅパイセン、次郎さんが良いって言ってるんスから!」


「そうじゃ! 次郎さんでいいぞよ! さて、話しすぎてすまんのう。お陰様で"本"についてはよくわかった。じゃがな……」


 総理は腕を組んでうーむ、と考えている。


 ナナの顔色が悪くなってきた。ウチ、ヤバいことしたっスかね? って思ってるのがわかる。


 さっきとは別人のように、総理は背中を丸めて小さくなってしまった。俯いて、悲しそうで、別人みたい。


「ワシにはな、レナが幸せだったことがあるかわからんのじゃ。十二年の人生で輝く一瞬があったじゃろうか……お嬢さんや。意見を訊いてもよいかの?」


 わ、私の意見…? 上手く言えるかな……いや、正直なことを言ってみよう。きっと伝わるはず、だよね……!


「あの、私のことになっちゃうんですけど……。すごくつらくても、空が綺麗とか、お花に会った時とか、嬉しくなるんです。本当は、理想をなんでも見せてあげたいですよね。でも、日常にもレナさんが素敵だと感じた一瞬がいっぱいあると思うんです」

 

 ど、どうしよう。上手く言えたかな? どうしよう! 助けて! とナナを見ると、また目の前のケーキを食べたそうに見てた。ナナあ!


 この沈黙が怖い。今度は無意識にキョウを見てしまった。キョウは総理を見据えたまま、膝に花丸を指で描いてくれた。ふ、ふぅ……。


 総理は顔を上げる。「ありがとうなのじゃ、書き手のお嬢さん。レナのことをお願いしてよいかの?」


「はいっ! もちろんです。その為に私たちは来ました」


 すかさずユヅさんがタブレットを取り出してタッチペンと共に渡した。


「改めまして、ご依頼をお受け致します。では、今一度注意事項をお読み頂いた上で最後にサインをお願い致します」


 総理はサッと目を通して「なぬ⁈ まあええじゃろう。な、琥太郎」と確認した。「問題ありませんね。好都合です」とやりとりをした。総理がタブレットも慣れっこだという様子で、味のある綺麗な字で書き上げた。

 ええの? 気になる!


「質問ばかりですまんかったのう。まずはお互いに一旦休むぞ。疲れたじゃろ? ケーキをお食べ。ワシも食べたいからのう」


「総理はどうぞお食べください。しかし……僕達はレナ様に夢をお見せする為に急がないといけません」


「青年よ、そう言わずに食べなさいな。甘いものが苦手なら違うものを持ってくるぞ? ほれ、急がば回れというだろう。書き手のお嬢さんはお疲れのようじゃし、皆もこの総理を目の前にしてさぞ緊張したじゃろうから、ケーキで糖分を摂りなさいな」


「珍しく伯父上の言う通りです。エネルギーを使う非常に大変な作業だと思いますから、休息を取ってください。全く、あんたが総理なのがいけないんだ。お客様を緊張させやがって」


 悪口が聞こえた気がしたけれど、気のせい気のせい。


「お嬢さん達若者にだけ背負わせるわけにはいかんからのう。ワシも琥太郎もチームの一員だと思ってくれ。レナのためにも一緒に食事をすることに意味があるのじゃぞ」


 確かに、食事ってただ食べるんじゃなくて、絆を深めるためにもあるんだ。そういえば、上司が部下を飲みに誘ったりするもんね。改めて食事の大切さを学びました。さっきからずっと食べたかったからやっと、って感じ〜! 良かったねナナ!


「ありがとうございます。ここで遠慮してはかえって失礼ですね。俺達全員、甘い物は好物ですから嬉しいです。さあ、皆で頂こうか」


「いただきます」とそれぞれ手を合わせてから、みんな待ってました! と綻んで食べ始める。


「これ、クリームキングのケーキっスよね!」

「ほうじゃほうじゃうまいじゃほ?」

「お客様の前ではしたない! 飲み込んでから話せ! マナーが悪いとまた週刊誌に取り上げられていいのか!」

「クリームがとろける〜」

「甘すぎず上品な味がするし食感がたまらないな」

「……美味しいです。今度僕達も買いにいこうか」

「予約制じゃから気をつけるんじゃぞ」

「次郎さんも予約してるんスか⁈ 総理なのに?」

「もちろんじゃ。ただのジジイだからのう。総理だからといって威張ってはいかんのじゃ」


 休憩タイムを終えてごちそうさまでした、と手を合わせると、総理は安心したように私たちの顔を見て微笑んでいた。


「では、一旦、机とテーブルがある部屋へご案内します。いつでもご自由にお使い下さい。必要なら何時でも食事をお持ちしますし、布団と部屋を人数分、個々に用意しておりますから。ベル様のお付き添いで互いに行き来しても構いません」


 使用人さん四人が来てさっと鍵を取り出した。音を立てず、すっと目の前に置いて下さる。やっぱりはっや!


 うう、早く"本"を書きたいけれど、レナさんに会わないと書けない……。

急がば回れ、を忘れないようにしよう!


「こんなに僕達にご用意して下さって頭が下がります。鍵は後ほどで大丈夫です。まずはレナさんにお会いしなければならないのですが、可能ならお二人に同席して頂きたいのです。スケジュールは大丈夫でしょうか?」


「ええ、私がこの日の為に調整してありますから」

「琥太郎のしごきは今までで一番酷かったのう……」


 ナナが、もじもじして小さく手を挙げた。どしたの?


「あ、あのー、話の途中にすいませんっス。ウチ、お手洗いを借りてもいいッスか? 緊張しちゃってさっきから、その」


「ええ、勿論です。七彩様。使用人に案内させますからどうぞ使って下さい」


 琥太郎氏が片山、と呼ぶと、先ほどの二つ結びの女性がまた秒で来た。総理クラスの使用人は流石だなぁ……。


「ご案内いたします。七彩様。こちらになります。私について来て下さいませ」


「はいっス!」ナナは頭に手を当てペコペコとした。


「ったくナナは……。すみません」やれやれと頭を抱えてキョウは呆れた。


「ええんじゃええんじゃ。待っている間にレナに会いに行く段取りを進めようかの」


「はい、お願いします」ユヅさんは気合いを入れるように髪を結び直した。改めて見ると結構髪が長い! 艶々してる〜!


 レナさんに夢を見せられる、誰かの力になれる、と思うと責任と共に嬉しさが咲いてきた。

 ふわふわと花に包まれていた私の手にキョウがゆっくり手をのせて、そのままきゅっと優しく三回握った。これ、車内で教えてもらった合図だ……!


 見上げると――キョウは今まで見たことのない苦しそうな顔をしていた。

 

***


「広いお屋敷っスね! 迷路みたいっス」


 嘘っス。間取りはパーペキに覚えてるっスから。


「ふふふ、そうなんですよ〜! 私、最初は迷子になっちゃって……あ、お客様にこのような口調で話してしまってすみません」


「いいっスよ! お互いに素直に話しましょうっス!」


「七彩様はお優しいですね」


「いや、めちゃくちゃ性格悪いっスよー?」


 ――こいつ、未来人っス!


お星様にて応援頂けますと嬉しいです!


ナナ目線で初めて書きます!よろしくお願いします!

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