【アフターストーリー】私たちのシェルター Part2
★主な登場人物★
・ベル (本名 綺咲凛音)
現代人。鈍感な本の書き手/164cm
・来栖恭介
未来人。爽やかな医者/177cm
・百目鬼弓月
未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm
・七彩七海
未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm
・服部半蔵
過去人。純粋な心の忍者。護衛/172cm
、若王子王子
未来人。七海の兄。自称天才・実際天才/167cm
・黒羽フリル
未来人。洪水のように泣く。皆のサポート役/158cm
・沖田総司 ※この作品では女性※
過去人。真面目な剣の達人。護衛兼サポート/172cm
私とキョウはシェルター内部に行くことになりましたとさっ!
玄関へ向かって歩いてると、新しいセーラー服を着ている沖田さんが門の所で手を振って、高く高く跳ねた。つ、翼が見えるっ!
くるりんっと回るジャンプは、サイドテールも美しく舞う。見惚れていると、綺麗に着地した沖田さんが私たちに爽やかな笑顔を見せる。
「ベル姉さん! キョウ兄さん! ただいま学校から帰りました」
「おかえり沖田さん! ってあれ? 早いねぇ」
沖田さんは今日から学校生活が始まったんだ。編入試験も合格したの! でも、今日の学校が終わるのが夕方くらいって聞いてたのに……あれれ?
「自分、午後の授業も受けたかったんです。でも今日は慣れるところからって先生が言ってくださって、とりあえずジャージを注文して帰ってきました」
元気がないみたい。授業です! って張り切ってたもんね。
「やる気があるなら授業の範囲を電話で訊いて予習すればいいんじゃないか? 俺も王子くんも喜んで手伝う。……それよりも沖田さん、緊張したろ?」
沖田さんは力が抜けたみたいで、前にフラフラっと倒れてきた。キョウが先に受け止めて、私が横からぎゅうってする。
「緊張……しました。自分は今の時代に慣れてないですし、名前も『沖田蒼』にしてますから。うう……ベル姉さん、キョウ兄さん……」
顔を私の肩に埋めながら沖田さんは力無く話した。
「ほら、嫌じゃなかったらおぶるぞ。一応診察しよう」
「大丈夫です、キョウ兄さん。走って帰ってくる元気はありますから」
走って帰ってきたの? 遠いよ?
朝、ユヅさんとナナが車で送ってったじゃん!
「あの距離をか⁈ アイシングしよう」
「そだね! お家入ろ?」
「ベル姉さん……」と泣きそうで絶対に泣かない沖田さんはキョウのおんぶを固辞したので、私とキョウと沖田さんの三人で肩を組んで、なんかの競技みたいに家に入る。
すると、王子くんがこっち見た! ってあれ?逃げた? 廊下の向こうだから見えにくいけど、「やべっ」て顔してた。
それからフリルさんが見えた。ありゃ。また王子くんが怒らせたなー?
怒鳴り声とぐずぐずしてる声が聞こえてくる。
「王子様っ! また机を散らかしてるですのね? いけませんのよっ」
「いーやーだー! 一人じゃ寂しいからここでお仕事させてよ〜〜〜」
「それは構いませんけどこんなに荷物を置いては駄目ですの! ――あら? 沖田さんおかえりなさいませ……ってどうしたのですの⁈」
私たちの視線に気づいたみたい。私たちを見てはっとした。
「ふりるねえさん」
あっ! 沖田さんの緊張がほぐれて一気に重い!
フリルさんが走ってきてくれる。ゴスロリのスカートがふわふわって舞って、走っても気品があるなあ。
「沖田さんね、学校で緊張しちゃったみたいなの。これから念の為にキョウの診察だよ」
こくこくと真剣に頷いてから沖田さんを「頑張りましたのね」と労って、フリルさんはキョウが持っていたスクールバッグを取ってこっそりついてきた王子くんに無言で渡す。王子くんは「重っ!」って言いつつなんとか持ってた。
フリルさん、王子くん使うの上手いなぁ!
「騒いですみませんですのよ。もうっ! ワタクシ、迎えに行きましたのに。無理しちゃいけませんですの」
「はい、フリル姉さん……」
「そーちゃんお疲れ! とりま抹茶ラテ用意しておくねん♪」
「は、はいっ! 王子兄さん!」
抹茶ラテと聞いてちょっとテンションが上がるなんて、沖田さんかわいい! 抹茶ラテ好きだもんね!
王子くんが、学校での偽名『沖田蒼』の名前を提案した。流石に『沖田総司』はマズイので、新撰組の青色を彷彿とさせる漢字を取り入れたとのことで喜んでた。
てゆーかその前から『そーちゃん』って呼んでたし。
「なあ、沖田さん。地下は遠いからリビングで軽く診ようと思うんだがいいか?」
「キョウ兄さん! 助かります」
私たちはそれほど長くない廊下を抜けて四人でリビングのソファや椅子に腰掛けた。確かにテーブルの上にボールペン、紙やノート、タブレット端末やスマートフォンで散らかってる。何したらこうなるんだろ?
私とフリルさんが王子くんの片付けを手伝って、王子くんは特製抹茶ラテを作って、キョウは沖田さんの診察をした。
王子くんの書類の字がちらほら見えたけどやっぱり綺麗。印刷したみたいな文字なの。
「はあ。この文字のようにテーブルも綺麗にして欲しいですのよ」
フリルさんは、「やれやれですのよ」って言いながら丁寧に王子くんのお仕事道具を片付けてた。でも、フリルさんって王子くんを叱ったりしてるのに、どこか微笑んでる気がするの。なんだろ?
「そーちゃん! 俺特製の抹茶ラテどうぞ♪ フリルちゃんとベルちゃんとキョウくんにもカフェオレ淹れたから良かったら飲んでちょ⭐︎」
診察は終わってたみたい。一応、だったしね。
沖田さんは見たことのないジェルを貼っていて、気持ち良さそうにしてた。未来のものかな?
「ありがとう、王子くん。俺、その上にアイスほしいな」
「あっ! キョウずるい! 私も」
「ワタクシもアイスを頂けますですの?」
王子くんは「ふっふーん♪」とわざとらしく言って、「じゃーん!」とトレイを見せた。
わあっと歓声が上がる。
「そう言うと思ってアイスとクッキー乗せてるから安心してねん!」
「王子兄さんはみんなの心を読んでますね!」
さすが王子くん! みんなの喜ぶことしてくれるのは、やっぱり最年長のお兄ちゃんって感じする!
「じゃあウチはメロンソーダとバニラアイスでおなしゃス」
「僕は普通のコーヒーで。なあ、恭介。沖田さんは大丈夫なのか?」
いつのまにかナナとユヅさんが座ってた!
二人とも服部さんにお稽古つけてもらってから気配消すの上手くなってる!
「ユヅ兄さん、みんな。心配をかけてすいませんでした。新しい環境なので多少疲れただけです」
ぺこり、と頭を下げると沖田さんの綺麗なサイドテールが揺れる。ナナが椅子からぴょいっと跳ねて、『サイドテールサラサラ攻撃』をし始めた。これをすると沖田さんが喜ぶのである!
ナナも楽しそうで、私たちも幸せになれる幸福の永久機関なのだっ!
「ははっナナ姉さんっ」
「おきたっち! ぺこりんちょは『髪なでなでのサラサラの刑』っス!」
くすぐったさに沖田さんが顔を上げると「そーちゃんは麗しいから顔を上げてるほーがいいねん♪」と王子くんがにこにこ笑ってた。
そういえば、このリビングって王子くんがラテ淹れてくれたりするから喫茶店みたくなってきてるなぁ。フリルさんが使いやすいようにレイアウトしてくれたし、ユヅさんがおしゃれにラベルを貼ったりしてくれたから、どんどんレトロ風に仕上がったのだ。
なんと、今はソフトクリームを作れる機械もある。キョウの糖質制限で一人一回しか使えない。
最初、みんなも私も感動して食べまくってお腹を壊したのだ。一日一個までとキョウの注意書きがされてる。
ナナはみんなが見張っている中、いつもソフトクリームを作るぞ! と虎視眈々と狙っているのだ。なかなか大変なの。
「ナナちゃん、今日アイス食べた?」
このようにアイスチェックが入る。
ナナは口を真一文字に結んで無言で首を振った。あっ怪しい!
「普通のメロンソーダにしよーね?」
「うにゃにゃ〜〜! アイス付きがいいっスぅ〜!」
キョウが「ナナ」と言って、おでこに人差し指を当ててぐりぐりした。
「朝イチで俺の許可とってソフトクリーム食べてたろ! 器用にあんなに高く巻きやがって! インスタに嬉々としてあげてただろうが!」
みんなで一斉にナナのインスタを見ると、超超高く巻かれたソフトクリームと超笑顔のナナの写真が投稿されてた。
「ったく! ユヅ先輩と服部さんが三分の一ずつ食べてくれたから助かったが……もう二度と作るなよ」
沖田さんが写真を見ながら「おおっ」と拍手し始めた。
「ナナ姉さん練習してましたもんね、練習の成果が出てますよ! 自分感動しました」
「あ、お、おきたっちぃぃ!」
「沖田様の無自覚っぷりで明らかになりましたの」
沖田さんは何かまずいことを言ってしまったかもしれない、と慌てるけど、フリルさんがすぐに「大丈夫ですのよ」とフォローしてた。ほっ。
「やっぱ小型カメラつけよっか♪」
「つけてくれ! 王子くん頼んだ!」
「――あにゃ? にゃにゃにゃっ! 大変っス!」
ナナはぴょんっと飛び出して忍者のようにいなくなってしまった。足音も聞こえない!
「はあ……すまないがみんな、隠れんぼの時間だそうだ。恭介、頭痛薬あるか?」
「ありますけど……ストレスの可能性を否定できないですから、渡せませんよ」
ナナは注意されたり、機嫌が悪くなると、すぐどっかいっちゃうの。ワガママに見えるけど、大人になっても甘えたいだけのコなの。私たちにこうして心を許して、困らせて、甘えてくれる。
私もみんなも、ナナが愛しくて大好き。
でも、本当に見つけにくいから大変!
こうなったらみんなでシェルター内を大捜索なんだよ〜〜〜!
ナナは不思議なことにちっちゃくなってたり、猫になってたりするからなかなか見つからないの。
前は冷蔵庫の中でヒヤヒヤの猫になって発見されたんだよう。お菓子食べてたの。
ユヅさんはスマホを取り出して服部さんに電話をかけた。
「服部さん。みんな、突然だが任務内容を伝える。七海が逃走した。このミルクキャンディーを配るから飛びつかせて捕まえてくれ。服部さんには僕が渡しに行く」
ユヅさんは、編成は……そうだな、と少し悩んでから指示を出した。
「沖田さんは屋敷の警戒任務及び七海捜索を頼む。帯刀も許可する! 服部さんは外の警備を引き続きしてくれ。手裏剣も使って構わない。僕はリビングで指示する! 恭介とベル、黒羽さんと王子くん。ペアは絶対離れるな。それと――全員に銃の携帯を許可する。でも、なるべく使わないでくれ」
え……? ナナを探すだけなのにどうしてこんな、戦いみたいなオーダーなの?
「警戒レベルが高いですよ! ユヅ先輩、どうしたんですか⁈」
「この時間軸に、変身能力を持った未来人が来ているらしい。右山さんからの情報をみんなと共有をしようとしていたが――七海がああなってしまった。その未来人は、『モフッとモンスター』の聖地に来て限定品を買っているだけとの報告だが、念には念を入れたい。七海に変身していたら大変だからな。それと、ベル、上には能力使用申請をするから遠慮なく使っていい」
「わっわかった! でも、ナナが任務を放棄するなんて信じられないよ」
ナナはワガママだけど真面目で任務はしっかり遂行するのに。そういえば、いつもは泣き出すのにびっくりして出てったような気がする。
あっ、私の能力はね! 申請すれば使って良いことになったんだよ〜! ユヅさんがいつも良い感じに理由をつけてくれるから助かるの。
「右山さんと七海は因縁があるからな……。僕の判断で服部さんと恭介、王子くん以外には隠していたんだ。黒羽さん、すまない」
目を伏せて淡々と言ってるけど、ユヅさんはとても気にしているみたい。右山さんとフリルさんが訳アリだけど姉妹だからだ。
「姉様のことを恨んで当然ですのよ。ワタクシもまだ許してませんもの。それよりも七彩様を探しましょう!」
王子くんとフリルさんは比較的安全な地下の医療施設と避難所。
私とキョウは狙撃の影響が少ない一階。沖田さんは二階を探しながら、狙撃の警戒になった。
「お願いっ! ステッキになって!」
万年筆と私がピンク色に光る。
万年筆は浮かんで――ステッキに変わった。
よーしっ! これで能力を使えるぞーっ!
「キョウ! 手短に打ち合わせしよ?」
「ああ。俺がドアを開けて部屋を見ていくから、合図を出したら空間とナナの時を止めてくれ」
「うん!」
キョウが自然と私の手を取ってくれた。頼もしい。ふふ、嬉しいなぁ。
沖田さんは、二階担当だから、肩を回したりストレッチしてる。体をほぐすのはキョウからの言いつけなの。沖田さんはジャンプしたり、走ったり、全身で自由自在に動くからね。
フリルさんは、銃を持って確認してた。前、組織にいた時に実際に使うことが多かったみたい……。王子くんは、アニメに出てくるようなおっきな盾を持ってる。デザインは龍の模様。SNSで話題になったアイテムを本物の盾に仕上げたんだとか。
それはいいとして――万が一の時は、王子くんが守備、フリルさんが銃を使う作戦みたい。
「みんな、頼んだぞ!」
ユヅさんの声で一斉に捜索が始まった。
ソフトクリームの機械を導入した日はみんな大はしゃぎでした。お腹を壊したみんなを治すために、恭介は大変だったそうですよ。




