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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢乃めちあ


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38/45

38話 騒がしい日々

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm


・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm


・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm


・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm


・服部半蔵

過去人。純粋な心の忍者。護衛/172cm


、若王子王子

未来人。七海の兄。自称天才・実際天才/167cm


・黒羽フリル

未来人。洪水のように泣く。皆のサポート役/158cm


・沖田総司 ※この作品では女性※

過去人。真面目な剣の達人。護衛兼サポート/172cm

 各々が痛み、疲れ、引け目や心配――多くを抱えながら、俺達はシェルターに帰ってきた。


 いつものメンバーのユヅ先輩、ナナに加えて、王子くん、服部さん、フリルさんと沖田さんも一緒だ。


 シェルターといっても、地下のある豪邸みたいなもんだ。部屋数は多いし、医療器具も置かせてもらってるからベルもナナも病院より静養できるだろうと判断した。


 休むどころか、大変なことになっていた。テレビに映ってから取材の申し込みが殺到していたが、琥太郎さんが拒否してくれているらしい。外に出ようものなら、真っ先にマイクとカメラが向けられるだろうな。マスコミが執拗に追いかけてきてシェルターの位置もバレちまったから引っ越しも考えないといけない。


 そこで活躍したのがうさぎ仮面のみんなだ。


 ベルの荷物はうさぎ仮面に頼んで詰めてもらい、俺達が到着する前に、先に運んでもらっていた。


 荷造りをしたのは女性のうさぎ仮面の方達だ。ベルが眠っている間に必要になりそうなものも予想して持ってきてくれてる。俺じゃ皆目見当もつかないものもあって助かった。


 食料の調達や欲しいものまで買ってきてくれては、こっそりシェルターに届けてくれて、届く度にナナが喜んでいた。


 俺はまず――ベルが目が覚めるように願った。キョウうさとベルうさを並べてベッドに置いていた。知らないうちにナナが派手に"LOVE"とでかでか書かれたハンカチをかけていて、さらにユヅ先輩が丁度いい籠の中にベッドまで作ってくれた。


「どうだ、恭介。七海のリクエストだ」


 ユヅ先輩のレアなドヤ顔を見れて俺は笑った。


「ベルのうさぎ――ベルうさだったか? 分身も良く寝た方がベルも起きるかもしれないな」


 ユヅ先輩なりの願掛けだったらしい。


 フリルさんと沖田さんも「かわいいですの!」「ぬいぐるみにベッドとは、粋な計らいだな」と評判だった。


 ナナはよく撫でたり抱っこしたり、口と口を合わせたりしていた。やめろ! 怒るぞ!


 ナナ以外にも、色んな人がちまちまうさぎを撫でたり、位置を変えたり、抱き合うようにしたり、唐草模様の包みを置いて行ったりしていて、その空間は賑やかだった。唐草模様は服部さんだな。


 ――レナさんにとってのチョコさんみたいになるといいな。


 ナナは重症だってのにベルが心配で離れなかった。……ったく、点滴スタンドを持ってフラフラ移動を始めるから、ベッドを隣同士にして黙らせた。が、黙ってなかった。

 目を覚ますと、沖田さんを呼び何度もここにいるか確認をした。


「おきたっち。武士なら気にするなっス! ウチらのことは、『ナナお姉さま』と呼んでいいっスよ!」


 包帯を巻きながら何を言ってるんだか。

 まだ安静にしてろって言ってるのに聞きやしねー。


 だが、真面目な沖田さんは『ナナ姉さん』と呼ぶようになり、俺達も兄さんと呼んでくれた。

 楽にしてもらって良かったんだが、生真面目だから逆に安心したかもしれないな。


 行き場を無くした沖田さんは高校三年生で、未成年だったこともあり、俺達が保護することになった。上はノリノリで快諾したそうだ。

 ナナが動けない分、沖田さんがフリルさんと共にベルとナナの体を拭いたり、着替えを手伝ってくれて助かった。


 さらに、沖田さんは交代で護衛も担ってくれてユヅ先輩が何度もお礼を言っていた。あの強さなら誰も敵わないだろう。


 ナナは思ったより早く回復し、またベルから離れなかった。こいつは化け物だ。


「おきたっちが急所を全部外してくれてたんス! 優しいっスよ!」


 ナナは派手に出血していたが、沖田さんは手加減してくれていたらしい。それでも、ナナを傷つけたことや俺たちに引け目を感じて距離を取っていた。


 だが、ナナと王子くんの懐っこさに引っ張られて三日くらいで誰とでも話せるようになった。


「おきたっち! いいこいいこしてっス!」

「総ちゃーん! 問題集でわかんないとこあったらいってねん♪ オレ天才だから!」


 あのコミュ力お化けの二人がいたらそうなるか。なんなら沖田さんを取り合っていて、困ったように笑っている所を俺かユヅ先輩、服部さんが助けるのがいつものパターンだ。


 服部さんとは、俺達には理解のできない過去人の未来あるあるを語っていた。


「書物と異なる点が多くても驚いたでござるよ」

「自分は女なのに、歴史では男になっていてびっくりしました」


 俺にはわからん! すげー話してるな!


 それから、シェルターにある道場でみんなと手合わせをして楽しんでいた。心底良かったと思う。


「半蔵兄さん! 覚悟ッ!」


「かかってくるでござる!」


 真面目なやりとりと、迫力ある稽古は見応えがあり、俺も見学させてもらったり、教えてもらったりした。


 人数は多くて騒がしいが、逆に毎日救われている。


「恭介。お前の心の準備ができたら、ベルの記憶域に行ってみたらどうだ? 鍵穴があるだろ」


 ユヅ先輩は思考を巡らせては俺に提案してくれたけれど、断ってばかりいた。ベルの記憶は……見てはいけないような気がする。


「あまり長引くようなら真面目に検討してみたらどうだ? ……抵抗があるのはわかる。僕もみんなの記憶は見たくないと思うだろうからな。だが、目が覚めない原因がわかるかもしれないだろう?」


「はあ……それもそうですね。一週間経ったら真剣に考えます」


 ベルの記憶を見るのは覗くみたいで嫌だった。ベルの言葉でベルのことを聞きたかった。ユヅ先輩、すいません……。


 ――でも、本当に目覚めなかったら覚悟を決めないといけないかもしれないな。


「ほいっ♪ キョウくん! スマイルスマイル! 笑う門には福来るっしょ!」


 今まで知らなかったが……俺達の中で最年長は、王子くんだったらしい。全員を満遍なくしっかり見ては、気を遣ってくれていた。


 どんなに空気が暗くても、うさぎ仮面に頼んで食事を持ってきてもらったり、スイーツを用意したり、寝れない人には特製のホットミルクを作ってあげたりしていた。


 これがなかなか美味い!


 ナナが三回以上おかわりをして、俺とユヅ先輩と王子くんはストップするのが大変で毎回格闘する羽目になる。服部さんと沖田さんにも参戦してもらった。


 夜中はちょっと――いや、かなり面白かった。俺はベルの状態をギリギリまで診ているから起きているし、ナナと服部さんはベルが心配で寝れないし、沖田さんはまだ落ち着かなくて真夜中にリビングになんとなく集まっていた。


 それを王子くんに発見されてからは、全員でくだらない話をしたり、絵しりとりをしたり、ボードゲームをしたり、珍しい面子でとにかく遊んだ。


 大抵、ナナが「バカアニキ」と言って、王子くんが「ナナちゃんひどーい」と泣くパターンだ。


 沖田さんは最初はおろおろしていたが、慣れていって年相応の笑顔を見せるように変わってくれた。


 恐らくユヅ先輩とフリルさんは無理矢理にでもベッドに居たんだろうな。全員に小型の医療機器をつけた俺が一番わかっているのに、俺が一番参っててみんなに助けられた。


「来栖様が元気にされてないと、ベル様は悲しむですのよ」


 フリルさんに痛いところを突かれたが、その通りだと思って、馬鹿をやったりした。


 広い風呂場で男限定の息を止める大会をしたり、ナナや王子くんに笑わせてもらったりした。


 あの兄妹は普通に過ごしているだけで面白いからな。


 ――でも、俺がこうしている間にも、ベルは、顔を歪めたり、苦しそうにしていた。


 何がそうさせてるんだ……。早く助けてやりたいのに、できない。


 二年後の俺達から託されたフリルさんは、「とにかく一緒にいてほしい」としか聞かされてなかったらしい。


 何度もベルの目覚めのヒントを得るために二年後に帰ろうとしてくれたが、その度二年後の俺達に追い出されて「ひーーーーーん!」と泣いてしまった。おい、二年後の俺達。何やってんだよ……。


 沖田さんが必死に涙をバスタオルで拭いていて、さらにフリルさんをたかいたかいをして、ナナは、なでなでをしていて、三人で支え合っていたのが微笑ましい。


 いや、たかいたかいは違くないか? ナナには効くが一般的にはしないぞ! 教えたやつはナナだな! ……ったくアイツ。


 そういえば、ナナがフリルさんと別れる時に託したピンバッジだか缶バッジだかは、ナナが「あげるっス!」と快くプレゼントしたらしい。


 フリルさんは、お礼として、律儀に全員分のオリジナルのピンバッジを発注してくれて、俺達にプレゼントしてくれた。それぞれ服や鞄につけて仲間意識がより強まった。ベルのベッドサイドにも置いてある。


 ナナは大喜びでジャンプしたり駆け回っていたら、案の定傷が開いちまって、俺とユヅ先輩が説教しながら治療し直した。勘弁してくれ……。


 フリルさんが「かえってごめんなさいですのよ」と申し訳なさそうにしていたのを、王子くんと服部さん、沖田さんが一生懸命変顔をして笑わせようとしていたのは意外で面白かったな。


 フリルさんは盛大に吹いていたから何よりだ。


 ユヅ先輩に「黒羽さんの言う通りだから休暇を楽しめ。笑っていろ。ベルに笑顔がうつるかもしれないぞ?」と言われた。


 ……だが、心の傷は癒せない。



 そんな時だ。捕まったはずの右山がやってきた。若返ったものの中身は老いたままの山神と籍を入れたらしい。ナナが「詐欺っス!」と俺らの心の声をすぐに叫んだ。


 おい、言うな。もう戦いたくないんだ俺は!


 服部さんがすぐにナナを守ろうと動くと、「あら、世界遺産のイケメンくん♡」と飛びつきそうになった。

 フリルさんがブーツで蹴飛ばして、ナナと沖田さんが戦闘態勢になって構える。


 服部さんは「怖いでござる」と俺の後ろに隠れた。そういや右山のヤツ、全裸になったらしいな……そりゃトラウマになる。ユヅ先輩が服部さんをおぶって、俺は背中をさすってやった。王子くんは後ろから「変態女!」と小声で罵倒していた。あのなあ、多分聞こえてないぞ。


 ナナをいつもあやしているだけあって、ユヅ先輩は人を安心させるプロだ――と改めて感心する。


「いやねぇ。結婚詐欺をしたから報告しに来たのよ〜」

「なんつー報告しに来てるんスか! 警察にチクるっスよ!」

「あら、威勢のいいピンクのお姫様。無事で良かったわ」

「あぎゃーッ! 絶対に謝らないのがムカつくっス! 今度何かしたら百億倍にするっスからね!」


 それから、右山は、ぷんぷんに怒っているナナを無視して、一呼吸置いてからフリルさんと向かい合った。


「フリル、今まで言えなかったけれどごめんなさいね。お姉様はクソ男からお金を取って、しっか〜り償っていくわ〜。 もうあの陽気な次郎ちゃんと話もついてるし。何かあったらこのお姉様に頼りなさい? じゃあね」


 右山はナナを怒らせて、フリルさんを困らせて、言うだけ言って帰った。


「よく未来警察に釈放されたな」


 強さには色々あるが、右山の独特の、褒められない強さにはただ呆れてしまった。


「お姉様は人を騙すのが得意ですのよ……。ああ、

警察の方まで騙して最悪ですのっ」


「フリル姉さん。自分は償いの道を歩んでいるのなら姉君を応援しようと思う」

「拙者も沖田殿と同意見でござる」


 なんとなく意見がまとまったし、ユヅさんが確認すると、右山は『闇山』の亡くなった人たちや怪我をした人達、それから、病院の支援として大金を払わせたらしい。アイツはアイツで、心根は極悪人になりきれなかったのかもな。


 山神の件はどうなったかとみんなで気にしていたから、安堵する。



***



 五日経つ頃には俺以外全員、すっかり明るく振る舞ってくれていた。


「ベル姉さんは、戦いを望んでいなかった優しい人だ。早く話したいな。なあ、キョウ兄さん、どんな人か聞かせてほしい」


 手紙を大事そうにして、何度も俺にベルのことを訊いてくれた。

 沖田さんにベルの話をしている間は、ベルも一緒にいるみたいで心地良かった。


「なんつーか、天然だな。斜め上のことを言ったりするし、ズレてるし」


「天然さんなんですか? 自分は、ベル姉さんってしっかりしてるような気がしますけど」


「だろ? でもそうでもないんだ。あとそうだな……よく笑う。笑った顔がかわいいんだ」


 今は寝ているベルを沖田さんと一緒に見る。


 ベルの頬に触れる。


「あ、その、許可は得てるんだ。寝てても、触って良いって」


「あははっ! キョウ兄さんがベル姉さんを前にすると赤くなるって本当なんですね」


「わっ、それはいい、いいから」


 俺が誤魔化すと沖田さんは「すいません」と謝った。慌てて止める。


「ベルは不思議なところもあるけれど、核心を突いてくるんだ。自分でも気がつかないような、見えない点を浮き彫りにさせるんだよ。もし悩みがあったら話してみるといいかもしれないな」


 沖田さんは、笑ってベルうさを撫でていた。


「ベル姉さん。自分の悩み、早く相談に乗ってください」と話しかけていた。


 服部さんは、毎日庭で四葉のクローバーを探してベルにあげていた。ナナの指導で丁寧に洗って押し花にし、水気を取って透明なケースに入れていた。一日に五つくらい見つけてくるもんだから、俺達までもらってしまった。


 フリルさんがしおりにしたり、ユヅさんがお守りにして持ち歩きやすくしてくれた。


 あの戦いが嘘のように、平和な日々を送っていた。



 ――でも、俺にとっての一番はベルだ。



 気の早いナナはウエディング雑誌を買ってきてもらって、ユヅ先輩と式場を見たり、婚姻届に記入したり、結婚ごっこをしていた。


 ……でも俺は知ってるぞ。付録のポーチが欲しかったんだろ!


 その婚姻届は付録っつっても正式な書類なんだから漢字使えよと総ツッコミし、沖田さんは深刻そうに「ナナ姉さんは、漢字が書けないのか……」と心配させちまった。


「そんなことないっス! ウチは本気を出さないだけで達筆っス! ハンゾーっち! 筆ペンを貸してっス」


 服部さんが筆ペンを貸すと、意外にも難しい漢字まで書けていた。にゃーん! と偉そうにふんぞりかえってる。いや、すげえよ。わかったからそんなに体を反るな。腰に負担がかかる!


「ナナちゃんは本来、文武両道なんだよ♪ 面倒なだけ!」


「七海ッ! 普段から本気を出せ。お前には甘えがありすぎるんだ!」


 王子くんとユヅ先輩にそう言われると、ナナが泣きながら王子くんを思い切り蹴飛ばして、ユヅ先輩から隠れるようにフリルさんと沖田さんに抱きついた。この嘘泣きめ!


「ふにゃああひどいっス! 助けてっス〜〜!」なんて言って甘えていた。


 頼むからやめてくれ。怪我人が出たら治療するのは俺なんだぞ!



 そして――早くも一週間が経った。



 早起きしてベルのところに向かうと、瞼がゆっくり持ち上げられていく。


 俺は、声より先に涙が出ちまって、絞り出すように名前を呼んだ。



この一週間のMVPは王子くんです。誰かが一人でいると、すぐに走って行きます。ポケットには、ハンカチやティッシュを入れて必ず持ち歩いていて、入りきらないものは猫耳の帽子にも入れていたんだとか。全力でお兄ちゃんを遂行していました!

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