28話 友達
★主な登場人物★
・ベル (本名 ???)
現代人。鈍感な本の書き手/164cm
・来栖恭介
未来人。爽やかな医者/177cm
・百目鬼弓月
未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm
・七彩七海
未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm
・服部半蔵
過去人。???/172cm
またレナさんに会いに行くまでは、私は休息必須とお医者さんの来栖恭介さんに強く言われてるのでお休み中です!
みんなも心配させちゃったし、キョウもうつ伏せになったり疲れちゃったもんね。
「これより! おやすみタイムを始めるっス!」
ナナのおやすみ宣言によって、全力でおやすみを遂行することになりました。
お昼ごはんは、ホテルに入っていたたこ焼きの屋台の匂いに誘われて、即決定した。
お部屋に持ち帰ってみんなで食べる。
ナナと私はチーズのトッピングをした。
キョウはネギをてんこもりにしてもらってて、
ユヅさんはソースと鰹節のシンプルなたこ焼き。
みんなで「いただきます」をする。打ち合わせをしたわけじゃないのに揃うのが嬉しい。
ナナだけ「いただきますっス!」で若干ズレるけど、それも込みでごはんの調味料になっててさらに美味しくなってるんだと思う。
キョウと私は半分食べたところでチェンジした。
「ネギの方が体に良さそうだけど、チーズ……チーズかぁ……」って唸ってたら、キョウが神提案してくれた。
「半分ずつにしないか? 俺もチーズ食べたいからそうしてくれると一石二鳥だ」って言ってくれたの!
私の方が胃袋が小さいから、三つキョウにおまけする。遠慮してたけど受け取ってもらった。
「チーズ美味いな!」
「キョウ兄わかってるっスねぇ。チーズしか勝たんっすよ〜」
「僕はシンプルな方が良いな」
「はい、ユヅパイセン! あーんっス」
「ん!? チーズもいけるな」
「勝ったっスよ! ベルっち!」
ナナが勝ち誇った顔でドヤァァとして、また頬張った。「おめでとナナっ!」って言ってお祝いしてみる。
食べてるだけで楽しい!
待って、もちろんスイーツもあるよっ!
全員甘党だから、今回は全員同じものを選んでみた。ナナオススメのいちご大福。普通のより大きめで一つのお値段で普通のものが三つ買えるくらいのお値段! 途中、高級な和菓子屋さんに寄ってもらったの。
いちごが大きいし、こしあんもいっぱい入ってて美味しい!
「ん〜〜〜〜! 美味しい!」
「そっスよね!?」
「ナナがいちご大福好きなの超解釈一致する〜〜わかる! ナナってピンク好きだよね?」
「! はいっス!」
ナナは、ふにゃぅ〜〜〜って喜びながら二つ目のいちご大福を食べてた。
白い粉がどんどんついてくから、ユヅさんがその度に拭いてあげてる。ママだ!
「キョウはいちご好き?」
「ベルが好きだろ? それがきっかけで好きになったかもな」
うわ、マジですか! さらっとキュンとさせるんだからっ!
「そういえばベルと恭介はテレビ見てないよな?」
ユヅさんが突然言うからびっくりしつつ、二人で見てないって言う。
「ウチも見てないっスよ?」
「七海、お前……。見ろってあれほど言っただろう!?」
ユヅさんは鞄から持ってきた紐がついているホワイトボードに、【約束を破ったのは私です】と書いてナナにぶら下げて写真を撮った。
「ああっにゃあぁぁぁぅぅぅ〜〜……」
「恭介、ベル。お前らも撮っておけ。僕は教育に疲れた」
可哀想だけど愛くるしくて、苦しいけど撮っちゃう。ごめんねナナ……。うう、撫でたいけど今は駄目!
「はあ……さて、情報を見ようか。山神のその後について報道が連日されている」
ユヅさんがかけてくれたニュース番組には、「山神大臣逮捕!」って言う赤い文字が左上に表示されていて、コメンテーターさんが「裏金の他にも独自の組織を持って総理の暗殺を企んでいたのですから、驚きですよ」と言ってた。
あれ、他の人は未来警察が来てたのにどうして現地の警察が対応してるんだろ?
「現地警察と未来警察が流石に手を組みましたか」
「ああ。上層部は未来との連携もしてるだろうからな。現在で逮捕して、未来に連行した後さらに刑罰という流れだろう」
食べ終わってしまって足りなかったらしいナナが、反省もせずにユヅさんの苺大福にかぶりついてた。ユヅさんがデコピンしてたら、泥棒したナナの方がぷんぷんしてる。
「えっ警察にも未来人がいるの?」
私は、やっともぐもぐしてた苺大福のいちごを飲み込んで聞いてみる。
「比率はわからないが多分ゼロじゃないな。ただ、未来人の犯罪者を裁かないといけないからある程度協力はしてるんじゃないかって思ってるんだ。俺達も内部事情まではよくはわからないから、推測でしかない」
「キョウたちも知らないことあるんだー……」
「いっぱいあるっスよ! だからユヅパイセンとキョウ兄がいつも議論してるっス。ウチは置いてけぼりでつまんないっスよ」
もうナナに奪われないように一気に苺大福を平らげたユヅさんが口を拭いてから話す。
「……仮説は立てておいた方が任務が行動しやすい。必要な話し合いだよ。恭介は頭が良いから、推測の質も高いからね。おい、ベルも白い粉で化粧してるぞ。恭介、拭いてあげたらどうだ?」
キョウは拭いてくれようとしてから、ばっと顔を逸らした。んもー! 自分で拭くもん!
「じゃあ、山神は襲ってこない? 大丈夫でいいのかな? ……もうみんなを危ない目に遭わせたくないよ」
その言葉にみんなが私を見た。な、なに!?
ナナが椅子を降りて私に抱きつこうとして――キョウが一番乗りで抱きしめてくれた。「いって! 猫め!」ナナがキョウに噛み付いて今度はナナが私に抱きつく。
「嬉しいけどなに、なになにユヅさんっ!」
ユヅさんは声を出して笑う。
「僕達は、ベルが僕達全員を思ってくれてるのが心底嬉しいんだ。な?」
「はいっス〜!」
ナナが甘えるように膝に頭を乗せてくる。
「付き合ったんだから俺の……俺の権利を持っていくな!」
キョウが対抗するようにナナの頭を押してた。私はこらこらって仲裁に入る。
「私、幸せ者だなぁ」
「七海、ここは正規となった彼氏に譲ってあげろ」
ナナは、うちのベルっち……って言うけど、ユヅさんが手招きしたらすぐジャンプした。たっか!
ナナがユヅさんの元へ行くため、スローモーションで空中を舞っていると、ユヅさんのスマホが鳴った。びっくりしてナナが落ちる。だ、大丈夫? あー、泣きそうになっちゃった!
「もしもし……えっレナさんが?」
ユヅさんが驚いてる。「会いたいんだそうだ。ベル、恭介、ご指名だ」
「レナさん起きたんだ! 行きたい!」
「待てベル。その前に診察な」
私は体の調子をキョウに診てもらってから仮の太鼓判を頂いて、レナさんに会いにいくことになった。
その時、スマホが光って、メッセージが届いた。王子くんからだ。
「無理しないこと。俺の手を繋いでること。いいな?」
――キョウは気づいてないみたい。王子くんが意図的にしたのかも。あとでこっそり見よう。
誤魔化す為にすぐに手を繋ごうとしてみた。
「い、今じゃなくてっ移動中のことだ!」
キョウまっかっかになっちゃった。
でも、作戦通り。隠しちゃってごめんね。言えることなら、真っ先に言うから……。
***
琥太郎氏は綺麗にお辞儀した。
「先ほど来て頂いたばかりですのに申し訳ございません」
「いえ、私が会いたかったんです」
「ありがとうじゃ、り――」
琥太郎氏は口を滑らせた総理を羽交締めした。
そっそそそそそれ私の本名の一文字目ですッッ!
「ベルの本名を忘れてください。お願いします」
「契約書にもございますが、僕達も"適切な処置"をしなくてはいけません」
ユヅさんとキョウが怒りを露わにしながらお願いすると、総理は「すまんのう。綺麗な名前だったからついのう……」と土下座した。
うわっ"土下座の次郎"って報道されてたけど本当だったんだー!
おとな、うるさい。ってレナさんが睨む。
こっちも怖いよ!
レナさんが「こい」と言って手招きした。
「さっき……ゆめ、見た。れいを言う。べる。きょーすけ」
あれっそういえば……呼吸器を外してるし、ベッドの角度を調整してるから、座ってる姿勢に近い。
「レナさんっ」
私は嬉しくて、キョウの手を引いてレナさんの近くに行こうとしたら、琥太郎氏が総理を投げ飛ばしてレナさんの横の椅子を譲って下さった。
うわ、久しぶりに見たー! いつもながらお見事だなあ。
「レナ思い出した。良いことたくさんあった」
ね、チョコ。ってチョコさんに言うと、チョコさんの頭を動かして「うん」って見えるように動かしてみせた。
「あっチョコさん……! キョウうさと友達になってくれてありがとう」
「チョコのはじめてのともだち。かんしゃする」
キョウうさのおててと、チョコさんのおててをくっつけて握手した。かわいい交流だ〜!
「レナはこきゅうが楽になった。もりからきいたか?」
「もり……?」キョウが腕を組んで考える。
「きょーすけの、こうはいのいしゃ」
あっ森さんのことか!
「いや、森先輩は俺の先輩なんですけど……」
レナさんは迷わずナースコールを押した。
看護師さんすぐに来るや否や、「もり、よんで」と命令した。
意外なことに、琥太郎氏が注意した。
「レナ、敬語で話しなさい」
レナさんはチョコさんに隠れながら、「もり、よんで……ください」って言い直した。
森さんがわたわたしてって入ってくる。早い!
「森先輩、レナさんが良くなったって本当ですか!」
「そうなんだよー。呼吸が随分楽になってね。食欲も出てきたしびっくりだよー」
「いいゆめ、みた。とーぜん!」
確かに話し方も元気だし、苦しくなさそう。
「でもレナ知ってる。ゆだんきんもつ」
「明日もここままだったら、ICUから小児科に移動になるんだよー。すごいねーレナちゃん」
「うん。だからかんしゃ。べる、きょーすけ。いけめんとぴんく。ありがとう」
「こちら、こそ……です」
私は泣き出してしまった。
――レナさんがチョコさんを抱っこして、チョコさんの手を私の頭に当てる。
よしよし、してくれてるの……?
「泣くなベル。おとこだろう。レナは泣きたいとき、こうする」
私、おとこじゃないんだけど……?
でも、レナさんの太陽のような優しい、あたたかいものが心の中に流れてくる。
「皆様、この度はレナに夢を見せて下さってありがとうございました。こちらの本は、レナも現実で読みましたしお返しします」
「はい。……心底安心しました。よりレナさんが良くなりますよう僕達は心からお祈り申し上げます」
初めての任務達成したーっ! 大変だったけど、すごく大変だったけど、レナさんに夢を見せることができて幸せ。
私たちは改めて総理と琥太郎氏と挨拶をしていたら、レナさんが私の手を掴んだ。
「べる、いくのか……?」
「はい、私たちは仕事を果たしました。でも、ずっと友達です。総理、琥太郎さん、良いですか?」
「もちろんじゃ! 良かったのう、レナ」
「しかし、僕達は依頼者様と夢をお見せした方には、もう会えません。規則で決まっていますから……」
ユヅさんの顔が曇る。そうだったんだ。言いにくいことを言わせてごめんなさい……。
レナさんは、チョコさんを頭に乗っけて、ちょっとだけ声を張って、威張るように言った。
「レナ、それでもいい。ともだちは、ずっと」
「そうじゃな――ワシからも頼む。皆の者、どうかレナの友人でいてくれるかの?」
私たちは頷いて、一人一人レナさんと『友達の握手』をした。
私とナナとレナさんは泣き出しちゃったから、男性陣は大変!
キョウは私にハンカチで涙をトントンって優しく拭いてくれて。
ユヅさんはナナの鼻水をティッシュで拭きまくって。
琥太郎氏はハリセンで総理をぺちぺち叩いて笑いを誘って。
服部さんは自分で唐草模様のハンカチで涙を拭いて。
森さんは病室を飛び出したけど、泣き声が「うわーん」って響いてきた。
「またね。いつかあえる。しんぱいするな」
お互いに泣きながら手を振って、私たちはお別れした。
***
「ベル、お疲れ様」
病室を出てすぐに手を繋いでくれた。私はその手を握り返して繋いだままブランコのように揺らす。
まだ涙は止まらなくて、涙声だけど伝えたいことがある。
「私は、キョウにも、ナナにも、ユヅさんにも、服部さんにも言いたいよ。お疲れ様でしたって。ありがとうございましたって」
本を書き終えたから、服部さんも総理と琥太郎氏、レナさんの護衛任務を終えた。
「半蔵くん」って総理に呼ばれるくらいかわいがってもらってたみたいだから、別れが惜しかったみたい。
「こちらこそっス……ベルっち!」
ナナは手を握らずに横にいてくれてる。
「ベルがいなかったら成し遂げなかった。"本"の影響も良いもので何よりだったな」
服部さんも小さな声で、「拙者も感謝してるでござる」って言ってくれた。照れてる美男子の威力すごい! きゅんとしちゃう!
ん? 任務が終わったってことは……?
「また、新しい依頼が始まるの?」
「いや、今後はシェルターでの生活になるからな。ベルの荷物の整理もしないといけないし、とにかく一旦休もう。僕は報告書をあげておく。今回は消耗が大きかっただろう? それに、色々あった。連携が強まったから、恭介とベルが付き合ったのも込みで今後の仕事を考えないといけない。もちろん良い意味で、だ」
「え、違う部署に移動とかないって思って良いの?」
社内恋愛だったら普通そうだよね!
これって社内恋愛なのかな?
ナナは不安になっちゃったみたいで、私とキョウの腰をがっと掴んでまとめてハグした。二人でよしよしする。よーしよしよしいいこいいこ!
「それはないよ。大丈夫だ。僕と七海が親密な関係なのは察しているだろう? だからベルと恭介だけ外すなんてことはしないし、僕がさせないよ。上への報告をするだけだ。多分お祝いのケーキが届くだろう」
ユヅさんがナナの首根っこを掴んで回収した。猫だーっ!
「ケーキ食べたいっス!」
「ケーキは美味いけどな。多分プレートに『ベルちゃん&恭介くんおめでとう』とか仰々しく書いてくるんだろ? 俺達の上司ってそーゆーところあるからな。あー、頭痛い」
手が塞がってない方で、キョウは額に手を当てた。まだ手を繋いでくれてるんだぁ。えへへっ。
「お疲れ様のパーティは服部さんも来て欲しい。ベルの引越しの手伝いと警備もあるから、お願いできますか?」
「ユヅ殿……。今は一人になりたくなかったでござるからありがたいでござる」
「ハンゾーっちもレッツゴーっス!」
ナナが背中を押してクロストレックに乗せようとしたけど、断固拒否されてしまった。
「風を感じたいでござる」ということで車の屋根によじ登ってく。
私のスマホの着信音が鳴った。今だ!
みんなは、あれっ? って顔で見てくるし、キョウに「ベル?」って呼ばれたけど! 今はそれどころじゃない!
キョウから手を離して、私は万年筆を持って叫んだ。
「お願い! 時間を止めて!」
――万年筆がステッキに変わる。私は空に向かって掲げて、王子くんのメッセージ通り叫んだ。
「時間停止除外対象は、私! キョウ! ナナ! ユヅさん! 服部さん! 王子くん! それとっクロストレック!」
名前を呼んだ人と車が光に包まれていく。
「はぁーっ。とりあえず助かったよ」
王子くんは既に居たみたいで、車の影から現れた。
ヴィジュアル系バンドのような格好をしてた。何の絵かわからないものが描き殴られたロンTと、ボンテージパンツが似合ってた。ちなみに帽子は猫耳のニット帽。靴はチェーンのついたブーツで、まさにナナのお兄ちゃんって感じ。
「ごめんね。ベルちゃんとオレの秘密にしちゃって。全員に言ってもダメで、誰に話してもダメでさ。結局、オレの計算上、ベルちゃん一人に言うことでしか、最悪の未来を回避できなかったんだよ」
いつもの明るい話し方と違うから事態の深刻さを窺い知れる。
「アニキっ! 何でいるんスか!」
「ナナちゃん、みんな……。端的に言うよ――このままだと全員殺される。だから、オレは手を打たないといけないと思ったんだ……。ごめんね」
服部さんは総理と琥太郎氏、レナさん、SPさんと共に寝食を共にしたので、すっかり仲良くなったみたいです。
総理と琥太郎氏のコントに爆笑して過ごしていたそうです。
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