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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢歌環めちあ


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22/31

22話 閾値

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm

・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm

・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm

・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm

・服部半蔵

過去人。???/172cm

「能力に目覚めたんですか!」

「目覚めたっスか!?」


 詰め寄るキョウとナナを制してユヅさんは未来警察に通報してた。やっぱり電話で通報するんだ!


 私はくたっとしている服部さんを見つけて駆け寄る。


「服部さん、大丈夫ですか? 毎回その……えっと……」


 女性が服を脱いで体を押し付けてくる、とは言えるはずがない。女性と男性が逆転してもしなくても立派なセクハラ行為だもん。


 服部さんは重い口を開いた。


「ベル殿。大丈夫と言いたいでござるが、毎回参っているでござるよ……。しかし拙者は戦わないといけないでござる」


 女の人の感触が怖いでござる。今も残っていて嫌でござるよ……。とぽつり、ぽつりと本音を話してくれた。


 服部さんを見ると、震えてた。


 私はキョウうさをベルトから外した。


「今、嫌な感触を取ってあげますから!」


 右山に胸を当てられていた腕を、キョウうさを動かして、てくてくと歩くようにする。


「くすぐったいでござるよ」目を細めてキョウうさを見ていた。


「かわいいでしょ? キョウのうさぎさん! 『キョウうさ』だよ」


「お陰様で消えたでござる。ベル殿、キョウうさ殿、ありがとうでござる」


 笑うとさらに美人さんだ……!


 キョウが心配して「二人ともどうした? 大丈夫か?」と来てくれた。


「ベル殿が嫌な感触を消してくれたでござる」


「そうですか! 良かったです。今、栄養剤と安定剤打ちますね」


 駆血帯を巻いて、血管にそっと注射する。キョウの目が青い。

 注射一つでもこんなに慎重に、丁寧にしているのは尊敬する。私のいたところや大きな病院だと、時間がなくて急いでしまって丁寧さに欠けることもゼロじゃない。医療職者全員がそうではないけれど、場合によっては、患者さんに我慢させてしまうことがあるのが現状だ。


 ――だから私は、キョウを医師としても大好きなの。


「任務に戻るでござる。キョウ殿、ベル殿、ありがとうでござる」


 会釈してから、服部さんは去ってしまった。


「ベル、薬を使わずに心を直すなんてすごいぞ。いつもより服部さんが安定していた。偉かったな」


「えへへ、キョウうさがしてくれたの」


 私がキョウうさを取り出してなでなですると、キョウが羨ましそうに見てた。


 おっと、キョウをまだ労ってなかった。


「キョウ、お疲れ様でした」


 きっと許可はいらないから、頭にそっと触れる。キョウは私の手を取って動かして、自分になでなでをしてた。


「あははっ! 何してんのっ」

「ベルにいっぱい撫でてもらいたかったからな」

「そんなのいつでもしてあげるのに! もー、髪ぐしゃぐしゃ」


 キョウの髪を手櫛で整えてあげていると、ぱっと一瞬で未来警察が来て、右山の手に光る手錠をはめて消えた。未来から来て未来に帰ったのかな?


「はあ……終わった。今度こそホテルに向かおう」

 

 ユヅさんが疲労困憊なのは見てわかったので、挙手をした。


「私運転しますよ」

「駄目だ。ベルも疲れてるだろ」

「ユヅ先輩よりマシですよ。脈もちょっと早いくらいですし、俺達が思ってるよりベルは強いですから」

「そうです! 頼ってください! ……ってあれ? ナナは?」


 ナナはユヅさんにべったりくっついていた。例えるなら磁石。


「七海。離せ」


 ナナは無言で首を振る。


「大丈夫だ。能力は解除しているし問題ない」


 それでも、ナナは心配そうにぎゅっと無言で背中にくっついてる。


「ナナもこうですし、後部座席で落ち着かせてあげてくださいよ」


「……じゃあベル、運転頼むよ」


 あいあいさー! と答える。でも、動かなくなったクロストレックはどうするんだろ?


 うさぎ仮面が奇妙なポーズを取って遊びながらクロストレックの前に立っていた。彼らが居るなら安心だ! 謎の遊びかわい〜〜〜!


 私とキョウは磁石のナナをひっぺがして、シートベルトをようやくつけた。ナナは何か心配しているみたいだったから、よしよしといいこいいこのなでなでセットをしてから私は運転席に座り、車を走らせた。


「移動中に話しておく。僕が能力に目覚めた件だ」


 ルームミラー越しにナナを見ると、ユヅさんの指をにぎにぎしてた。しゅん……。としてるから見てて切なくなる。


「突然でしたね……。いや、能力に目覚めるのは唐突のことですけれど、前兆も無いなんて珍しいです」


「さっき王子くんから連絡があって、百回を超えるループすると閾値に到達するらしい。ベルが僕達にすぐに打ち解けたことも、ベルと僕が能力に目覚めたのもループ回数が強く関係していることが判明したんだ」


「えーっとごめんなさい、王子くんって……?」


「ナナのお兄さんで、タイムリープの研究者だ」


 ナナのお兄さん!?


「ナナのお兄さんのふっフルネームは……」


 ナナが七彩七海なら、王子くんという人は……! 期待が高まる! 絶対に普通じゃない!


「……アニキはオヤジの苗字名乗ってるっス。『若王子王子』なんてふざけた名前っスよ。そんなことよりベルっちとパイセンが……ウチ、心配っス」 


 落ち着いてきたのかナナが話してくれた。


 ホッとするけどすごい名前だね!? ごめん空気読めなくて……。


「成程。今まで能力に目覚めなかったユヅ先輩がこうなったのにも納得できますね。――ということは俺もナナもこれから何かあるかもしれない。構えておきましょう」


「ああ。心の準備があるかないかで随分変わるからな。……うう、体が重い。能力が目覚めた後ってこんなんになるのか」


 ナナがまたユヅさんに手を伸ばす。ナナ、お兄さんから連絡をもらってずっと心配してたんだね……。


「それだけはどうしようもないのでぐったりしててください。ベルは多分、"前"のベルが何かしたんでしょう。ナナ、王子くんは何か言ってなかったか?」


「"前"のベルっちは特殊って言ってたっス。禁断書の書き手に昇華したとかなんとかで、えっと……神の領域がどうのとかってメッセージに書いてあったっス」


「それ、俺にも読ませてくれ!」

「極秘事項だから読んだら削除するようにプログラムされてたっス」

「クソッ……王子くん……何故七海に送ったんだ……僕が読んでいたら……」


「ユヅパイセン……ごめんなさいっス」


「なんだよナナ、反省と心配が混ざって磁石になったのか」キョウが呆れつつ安心する。


「うう……はいっス……ウチは磁石っス。ユヅパイセンにくっついて反省の意を示しながら心配しないと生きてられないっス。アニキは忙しいっスからもう送ってくれないっス〜〜!」


「七海。怒って悪かったからくっつくのはやめてくれ。反省してるのは十分伝わった。今度から重要連絡は共有してくれ。頼む」


「わかってるっス! ごめんなさいっス〜〜〜!」


 わーんと泣き出すナナをユヅさんが落ち着けようと背中を撫でてた。


 豪華絢爛なホテルに着いて、ソファに座ってもそれどころじゃなくって、ナナは、くすん、くすんと泣いたままだった。私はなでなでと抱っこ、ツインテールくるくるといないないばあをして必死にナナを励ました。


 突然、キョウが私の手を掴んで、しーっと人差し指を唇に当てた。そしてポケットからゆっくりゆっくり、さっき使ってた銃みたいなものを飛び出す。


 ナナの頬に当てると、反応して後退りしたけどいつもより遅い。キョウは引き金を引いた。


「うう、キョウにぃ……。」

「このままじゃベルも落ち着かない。寝て休め」


 話から察するに――眠剤ですか?


「ナナは眠剤を飲まないから、いつも無理矢理眠らせてるんだ。心苦しいがな……」


 びっくりさせてしまったな、とキョウは私とナナの両方に言ってた。


「僕も休む。山神は総理達がなんとかしてくれたからもう心配ない。気になったらあとでテレビをつけてみろ。恭介、ベル、気分転換に一緒に風呂でも入ってきたらどうだ? 僕は七海についている」


「ちょっ風呂って!」すかさずキョウがツッコむ。


 きゃーーーーーーーー!?


「ここのホテルはブランドの服屋も入ってる。水着も買えるだろ」


「なるほどね!? あーびっくりした」

「ベル、心の声が漏れている。大分疲れてるな……。頼むから休んでくれ。ほら、お医者さん頼んだ」


 やばっいつも心の中でツッコミ入れてるのに言っちゃった!


「はい。ユヅ先輩。ベルは最優先ですから」

「じゃあ、キョウ、水着買いに行こ? 実は"本"を書く余裕が無くて……」

「だよな。実は俺も疲れた……」


 あれ、これって初デートなのかな!? 多分さっき荷物を運んでくれたうさぎ仮面がどこかに潜んでるんだと思うけど……。


 経費を使っていいから好きなもの選ぶといい、と見送る時にユヅさんがお財布を渡してくれた。キョウが預かる。

 

 やば! 太っ腹すぎる!


 護衛としてキョウも選ぶのに付き合ってくれた。水着のお店に入るのは抵抗があったみたいだけど知らない知らない。キョウの好きなやつあったら、それにしたいし、一緒に選びたいし! 


「ベル、それは露出が!」

「だっ駄目だそんなの……」


 なんて言って全部却下されちゃった。キョウの言うこと聞いてたら何にも買えなくなっちゃう!


 でも、露出が多すぎるのも如何なものかと思って、無難にかわいいオフショルダーのものにした。


「べるっそれ着るのか!」

「かわいいからいーじゃん! キョウってば全部ダメって言うし!」


 仕方ないのでパレオも買っておこう。タオル類は部屋にあるから大丈夫。よし!


 キョウは店員さんに訊いて選ぶことにしたみたい。「こちらのボードショーツはいかがでしょうか」と勧められてた。

 私が「おっしゃれー!」と感想を述べると、キョウはふむふむした後、それをそのままレジに持って行ってた。サーファーさんが着るやつなんだってー!


 お互いにぐったりなのでデートどころじゃなくて、帰りは肩を組んである意味仲良く部屋に戻った。うう……初デートはちゃんとしたいなぁ。


 今日は栄養剤を何回も打ってるし使わないほうが良いんだって。疲れてると体が省エネモードになるから、無駄に動かなくて回復しやすいんだとか。


 だから医療の力に頼っていない私たちは、ぐたぐたになりながら移動をしたのである。


「おかえり。七海はまだ寝てるだろうからゆっくり汗を流しておいで」


 ユヅさんが迎えてくれると、買ってきたものを持ってくれた。あ、ありがたい……。



 では、いざ尋常に……お着替えタイムっ!


 でも、お互いに水着姿を見たら、タコになっちゃってしばらく動けなかった。


 キョウはやっぱり体を鍛えてて、バランス良く筋肉がついてた。俳優さんのインスタとかでしか見たことのない、スタイルの良さがそのままの美しい筋肉。かっこいい……。


 そういえば、出かける前に「恭介もなかなかの手強さだから安心して護衛させておくといい」ってユヅさんが言ってたなぁ。


 私は赤いタコになりながら、両手で顔を覆った正面を向いてくれない『キョウタコ』の背中を「ねえねえ」ってつんつんってした。

 

 びくっとされる。ご、ごめん……?


「は、入ろ?」って言って、タコが二匹、豪華な部屋の豪華なお風呂場に入った。


 もっとドキドキするかなって思ったけど、シャワーだけじゃ無くて、バスタブも広くて、入った瞬間テンションが上がる。


 背中を流しあったり、イタズラでシャワーをかけたりしていたら、すっごく楽しくて恥ずかしい気持ちがふっとんじゃった。


 いつのまにかタコから人間に戻ってた!


 ちゃんと体を洗いたかったけど、そんなことより『休みたい』が共通してて、体はさらっとお互いに反対を向いて洗う。


 髪は綺麗にキョウが洗ってくれた。ナナのバッグからユヅさんが勝手に出してくれた、すごくいいシャンプーとかを使って。


「誰かに髪洗ってもらうのきもちー!」

「次俺なー?」

「んー任せて」


 突然、キョウの手が止まった。


「どしたの? 疲れちゃった?」


「ベル……今まで"本"を読んだ記憶はないか?」

「ないよ、どうしたの、声震えてるよ、大丈夫?」


 キョウが、ここ、と言って頭を触った。


「ひゃっくすぐったいよぅ」

「ここにあるんだ……特殊な形の鍵穴が……。知ってたか?」

「え? うそ、知らない知らない!」


 私も触ってみたらハゲが出来てた! いつできたの!?


「また王子くんに訊いてみよう。次、俺洗ってな」

「うん! 任せて!」


 キョウはトリートメントの後、私の髪をお団子にしてくれた。つけといたほうがいいだろ? だって。超神対応! 圧倒的感謝!


「どうですかお客さん」

「気持ちいいです」

「ふふ、慣れてるからね」

「なっ慣れてる!?」

「入浴介助のバイトとかしてたから」

「びっくりした……」

「あっ! 今疑ったでしょっ! 私、キョウが初めての彼氏なんだからねっ」


 シャワーでシャンプーを流してると、キョウが私に体を預けてきた。重さに耐えきれず私も倒れる。


「わっ! もう突然なぁに? 大胆なんだからっ」


 あれ、返事がない……。

 抱き起こそうとすると血が……



 鼻から出てた! 鼻血だーッ!



「え!? キョウ!? どうしたの!」


 やっぱり返事がない! 脈はあるし呼吸はあるから命に別状はない。良かった……。


 私はタオルを巻いてユヅさんを呼びに行った。


「恭介め……。コイツのことだ、水着のベルに興奮したんだろう。念のため風呂場のドアも脱衣所も開けたままにしておくよ。ベル、すまないが早めに流して上がってきてくれ。僕は恭介を拭いて着替えさせる。……ったく。このエロガキ」


 えっ普通に見えたけどキャウは私にドキドキしてたんだ。嬉しいんですけど! 萌えるんですけど!


「待って、ユヅさん濡れちゃうよ?」


「気にしないでくれ、僕も次に借りるから平気だよ。それと、僕は恭介と違って冷静でいられる。体の露出なんかは、ベルが気にならないなら気にしなくて良い」


 やば、巻いてたタオル下がってた。水着着てるしいっか。


「ねえ、ユヅさん……ナナにも冷静でいられるの?」

「秘密にしてくれるか?」


 私はうん、うん。と頷く。


「七海相手だと冷静ではいられないよ」

「きゃあっ! 黙ってます!」


 ユヅさんはくすくす笑いながらキョウを引き取ってくれた。


 すごく大人! すごく妖艶だった!

 やっぱりナナのこと好きなんだー! きゃああああっ!


 私がパパッとトリートメントを流すと、髪がとぅるんとぅるんになっていて、ナナみたいに櫛通りが良い最高の仕上がりになってた。備え付けのドライヤーも性能が良いもので、早く髪が乾いてありがたい。


 高級ホテル最高っ!


 パジャマに着替えて部屋に戻ったら、キョウが「ベルごめん、ごめん」って謝るマシーンになっちゃってた。


「おかえりベル。今度は僕が入ってくる。それと、二人ともよく話し合うように」


 いいな? と一度振り向いて念を押して行った。


 ユヅさーん!! 行かないでー! ナナー! ソファから起きてきてよおおおお!!

本当に二人がちっちゃいタコになったイメージをして書きました。

かわいいです。タコが水着着てるイラストを描きたくなりました。


お星様にて応援頂けますと嬉しいです!

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