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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢歌環めちあ


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18/31

18話 記憶の中 ※心苦しい描写があります

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm

・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm

・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm

・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm

・服部半蔵

過去人。???/172cm

 白の空間……? いや、ここは……


 目覚めるとレナさんの記憶の中にいた。ぬくもりを感じる。……キョウ?


「目が覚めたか? おはよ。俺達はレナさんの記憶域に無事到着したんだ」


「ん。おはよう……ここって、病院?」

「ああ、レナさんは長く入院しているらしいからな……自分のイメージとして常にいる場所が病院なんだろうな。起きれそうか?」


 問われてから初めてわかったけど、私たちはベッドの中にいた! 何かに座ってるな……とは思ったけどベッドって! 待って! 記憶無いんだけど!


「うひゃあっ!」

「うわっどうした!」

「私たち何かした? その、ラブラブした!?」

「してない! 誰が許可なく寝込み襲うかっ」

「本当!?」

「なっなんで俺信用ないんだ!?」


 いつもこの台詞言わせてる気がする……。これは私が悪いから、ちゃんと言わないと!


「今……恭介くんは恋人じゃないですか」

「は、はい」

「ちょっとだけなら、触ったりしてもいいんです……よ……? その方が嬉しかったりするんです。でも、その、恭介くんに緊張してる私もいて、それで、とてもわがままになっちゃうんです……」


 キョウは難しい顔をして、悩んでた。


「……今、俺はベルに何ができる?」

「その……えっと、大丈夫ってしてくれる……? この空間、なんとなく怖いの……」


 キョウはそっと背中をさすってくれる。私、こんなわがままなのに、嫌な顔一つしない。それどころか笑ってくれる。


「ずっと大丈夫するから、行こう。行けるか?」

「うん、行けるよ。あと、ね……」


 ――勇気を振り絞る。怖いけど、一歩進みたい。


「キョウは、私にどんなことしてほしい……? 何でも受け止めるから」


「何言っても嫌いにならないか……?」


 私は真剣に頷いた。


「俺、ずっと――……」


 すごく緊張して言ってくれたのに、その答えが嬉しくて笑っちゃった。


「おい、俺本当の本当にマジで言ったんだぞっ」

「顔赤い。キョウかわいい。私も同じ気持ちだよ」


 キョウは、そろそろ行くぞと言って手を引いてくれた。


 記憶域のドアを開けると――



 無数の病室のドアが並んでいてぞっとした。



***



 恭介とベルがようやく記憶域に入った。

 予想外の大規模戦闘もあり僕も疲れていたから、この時間は多少リラックスできるだろう。


 何より、七海を休ませられることの方が安堵する。


 僕達は今、恭介とベルのベッドの上に椅子を持ってきて腰掛けている。


「あーあ、こんなにくっついてけしからんっスね」


 恭介とベルはベッドに運ぶと惹かれ合うように寄り添った。


「まあ許してやれよ。恭介は耐えてきたんだ。ずっとな……」


 百回ループして、やっと両思いになったのは、"前"のベルの死期が迫った時だ。ベルは妬いていて、比較もしているが全然デートらしいこともしていない。なんなら今の方が愛し合っている時間は長いといえる。


「ウチのベルっちを奪ったっスから寂しいっス……。あにゃにゃにゃ! キョウ兄がベルっちをなでなでしてるっス!」


 ――僕がいるのに、七海は心からベルが好きだ。

 こいつはきっと選べない。


 僕もベルも好きで、恭介は兄貴のような存在で大切なんだ。


「撫でるくらいさせてやれよ」

「ダメっス。このいやらしー手を退けるっス」

「やめろやめろ、記憶域に干渉したらどうするんだ!」

「そーっした! サーセン!」


「ウチの大好きなベルっち……無事に帰って来てっスよ」


 七海は祈るように、そっとベルの前髪に触れた。


 ――恭介とベルは恋人になったが、七海と僕は一体なんなんだろうな。


「なあ」

「なんスか?」

「……後で甘えても良いか」

「後でなんてもったいないこと言ってないで! ほらほら、美少女の太ももを貸してあげるっスよ?」


 僕は小さい体に身を預けると、七海はおちょくることもなく黙っていた。普段はおちゃらけてるが、僕のことは手に取るように理解されている。


 しばらくして、七海が「ベルっちにやきもちおもちっスか?」と痛いことを突く。


 そうだ、と白状すると、後でいーことしてあげるっスから、今は良い子にしてて下さいっスと囁かれた。


 本当はこうしていられない。総理と琥太郎氏にヒアリングしなければならない。任務放棄は絶対に駄目だ。


 僕は起き上がってお礼の代わりに七海の頬を撫でる。「にゃふふーん♪」とまた猫になって喜ぶ。


 全く……コイツは可愛すぎる。


「お前のお陰で頑張れるよ。"後で"楽しみにしてるからな。それから……総理と琥太郎さんを呼んできてくれるか?」


「えー! ユヅパイセンが呼んで下さいっスよ」


「お前は人を笑顔にする力がある。愛らしいレディが迎えてくれた方が二人ともホッとするだろ」


 七海はわかりやすく「にゃにゃにゃっ」と言って真っ赤になった。何回褒めてもこの反応をするから、褒めるのをやめられない。


「はいっス! 愛らしいレディ行ってくるっス!」


 七海――僕と結婚してくれって言ったら、きっと困らせてしまうよな……。


 僕は、七海を僕だけのものにしたい。

 七海のベルへの感情は否定したくないのに、僕だけ見てほしい。僕だけを好きになってほしい。


 この恐ろしい獣のような感情はずっと僕の中に居て、鎖で縛っている。

 この鎖は――弱ってきていてもう限界に近い。


 愛って厄介だな……。



***


「ドアが均等にならんでいるな。レナさんは真面目な性格なのかもしれない……ベル?」


 私が震えているのに気づいて、キョウは「大丈夫」と言ってまた背中をさすってくれた。


「全部白だし、結構威圧感あるよな。最初の記憶域がこのデザインなら怖くて当たり前だ」


 ――それに、とキョウが続ける。


「人の記憶って残酷なものや、ショックなものも多い。闘病していたレナさんなら、きっと俺たちも心が揺れるだろう。だから、読み手は二人一組が原則なんだ。俺が守るから安心してくれ」


 それとも俺は頼りないか? と顔を覗き込まれた。


 私を笑わせようとしてくれてる。いたずらっ子の顔だ。


「頼もしいよ」

「ベルに頼もしいって言われると強くなれる」

「あははっ頼もしい頼もしい」

「あんまり言うと嘘っぽいぞ?」

「嘘じゃないよ、行こ。ドア、開けて見ていくの?」

「そうだ。まずこのドアを開けてみようか」


 二人でドアノブを握って開けると、病室の光景がそこにあった。レナさんの視点で、お父さんとお母さんらしき人を見てる。


「レナ、お誕生日おめでとう。ほら、お友達よ」

「くま欲しがってただろう? 名前つけてみたらどうだ?」


「くまちゃん……! かわいい! ありがとうパパ、ママ!」


 ぎゅっと抱きしめたのは、チョコさんだった。


「なまえ、チョコにする」


「チョコ? かわいいわね! どうしてチョコにするの?」


「レナはチョコがすきだから、すきなものなまえにするの!」


「レナは良い子ね」

「たくさん話しかけてあげるんだぞ! パパ達がいなくても、チョコが一緒にいてくれるからな!」


「うん! ありがとう! ずっとたいせつにする」


 ドアは、パタン……と閉まった。


「レナさん喜んでたな」

「幸せそうだったね。この時からずっと一緒だったんだ……」

「今回は幸せな記憶だったが、次はどうかわからない。覚悟してくれ……」


「ちゃんと受け止めて、ちゃんと"本"を書くから見守っててね」


 おや? 私も何か忘れてるような……。


「ねえ、キョウ……まだ言ってないことあったの。すぐだから、聞いて?」


 キョウはこーゆー時、待っててくれる。それが嬉しい。私の心を受け止めようとしてくれる姿勢が、私を安心させてくれる。


「この指輪、"前"の私と今の私にくれてありがとう!」


 あれれ、びっくりさせちゃったみたいで固まっちゃった。


「キョウー? おーいっ」

「ど……どういたしまして」


 片方の手で口元を隠しながら言ってたけど、照れてるのがバレバレ。


「ちゃんと新しいの買うから……待っててくれ」


 キョウ、ごめんね。感謝を伝えたかってだけなのに、また困らせちゃった……。


「ううん、今のがいいよ」

「でも、ベルはどうしても"前"のベルのことを気にしてしまう……よな? 俺がベルの立場だったら同じ気持ちになると思う」


 そこまで考えてくれてたんだ。私、押し付けてばかりだった……。反省しなきゃ。


 ――今度は私がキョウの幸せをたくさん考える番だ。


「ユヅさんが後でちゃんと話し合えって言ってくれたでしょ? その時にいっぱい話そう。私のことたくさんたくさん考えてくれてありがとう」


「考えるより悩むに近い。俺が勝手に悩んでいるだけだ」

「恭介くんたら頑固なんだから。あ、次の扉! 行こっ」


 私は記憶を読むぞー! と意気込んでドアノブに手をかける。


「ベル、待て――」



 そこは、消灯後の真っ暗な病室だった。



 掻き毟る音と嗚咽が聞こえた。


「うっうっ……。しにたい……しにたい……どうしたらしねるの? チョコ……てんごくにつれてって……」


 手首を爪で引っ掻いていた。真っ赤に腫れ上がっていて、血が出ている。刃物の類がないなら、武器は自分の体しかないと考えたんだろう。


 チョコさんは返事をしない。いや、できない。


 ぶちっと嫌な音がする。点滴を外したんだ……。


 血と、点滴の薬液が床に滴る。


 レナさんはナースコールで看護師さんを呼んだ。


「レナちゃんどうしたの? 寝れないかな?」


「うるさい! ころして、ころしてよっ ころして!」


 レナさんは点滴スタンドを倒して、枕やブランケット、時計を看護師さんに投げつけた。


「レナちゃん! 今先生来てくれるから! 大丈夫だから待っててね」


 看護師が慌てて出ていくと、医師と他に四名看護師が急いで来て、レナさんの体を抑制帯というもので固定した。点滴を抜いたり、自分を傷つけたりしないようにするものだ。


「いやだっやだっ! チョコ! たすけて!」


「レナちゃん……怖い思いさせてごめんね。一回体を休ませてあげようね」


 医師はまだ抵抗するレナさんの腕をさらに押さえて「チクッとするよ、ごめんね」と言って注射を打つ。


「いたいっいたい……どうせなら、ころす……くすりうって……」



 私たちは空間から無理矢理追い出された。すぐに何かに包まれる。


「ベルの記憶じゃない! 目を覚ませ! レナさんの記憶だ!」


 キョウが抱きしめてくれたんだ……。


「……キョウ?」


 頬が濡れてる。私、泣いちゃったんだ。レナさんが辛い思いしたのに、私じゃなくて辛いのは、苦しいのは、レナさんなのに――。


「ああ、俺だ。ベルは強いな……。よく耐えた」


 キョウはさらにぎゅっとしてくれた。あれ、キョウ、自分で気づいてないの……?


「キョウ、キョウも苦しかったんだね」


 え? とキョウが驚く。キョウも泣いていた。


 一旦離して? と言ったら、腕をだらんとして離してくれた。ハンカチで涙を拭って、今度はキョウの脇の下に腕を差し込んで私が抱きしめる。


「すまない……俺がベルを支えないといけないのにな。"本"の書き手の精神的支柱の役割失格だ」


 キョウもゆっくり背中に腕を回してくれる。


「何言ってるの? すぐ助けてくれたじゃん! 許可なくドア開けちゃったし……」


 そう言ってもずっと俯いて、自分を責めてた。


「泣きながら一緒に進もう?」

「いや、俺は……」


「ばかっ!」


 私は背伸びをして、涙だらけの目元に唇をちょんっとつけて離した。


「私にも頼ってよ! 私も力になるよ! キョウ一人でいつも背負って、守ってばかりなのは、それは違うよ!」


 だから一緒に行こう。と言って、キョウに思い切り、力強く、痛いくらい抱きつく。


 キョウは惚けていて、頬に触れてから破顔した。


「ベル。ありがとう。俺のこと助けてくれて」

「私もありがとう。一緒に乗り越えて、レナさんの記憶と向き合っていこうね」


 小さい頃から死を望むなんて――私なら耐えられない。


 この先、どんな記憶が待っているんだろう……。

つらいお話で書いていてつらかったです……。

たくさんの人に幸せが訪れますように。


お星様にて応援頂けますと嬉しいです!

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