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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢歌環めちあ


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17/32

17話 読み手

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm

・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm

・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm

・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm

・服部半蔵

過去人。???/172cm

 キョウがこめかみをトントントン――と叩いて、さらにまたトントントン、と叩いた。目が青色に、青色からシルバーに変わる。キョウの能力発動だ!


 私は手術のアシスタントとして居させてもらっている。

 ――多分それは建前で、私とキョウがセットになっていると護衛がしやすい、っていうのもあるんだと思う。みんなは口にしないけどね。


 でも、ちゃんと医療の資格あるし、働いてた経験はあるよっあるんだからねっ?


「えと……どれくらい髪を剃ろっか?」


 頭蓋骨に穴を開けるから、乙女の髪を剃らないといけない……ごめんなさい!


 ユヅさんは約束を守り手を握ってあげていた。

 ナナはやっぱり嫌みたいで、ぶんぷんしてるけど、周りをきょろきょろ見て警戒してくれてる。


「俺がやるからいいよ。大体縦3センチ、横2センチで間に合う」

「鍵穴って思ったより小さいね?」

「今の時代の機器だと難しいけれど、未来の機器を使えるだけ使うからな」

「うー、私、役に立たないじゃん」

「正直に話すと……ベルは隣にいてくれるだけでいいんだ」


 ひゃ、わわわわ…! 一生隣にいるよ、キョウ! とは言わずに「そお? 照れちゃう」だけに留めといた。


 はー……危ない。嬉しくて空に飛び出すところだった……。


 森さんは未来警察がいきなり来たので、事情聴取を受けることになった。麻酔や他の必要なことはうさぎの仮面をとった医療班が動いてくれてる。


 キョウは「レナさん、大切な髪ですが剃りますね……失礼します」と声をかけて綺麗に剃った。


 そして皮膚、硬膜というところを切り抜く。体は生命を維持するためにとても強固にできてるから、手術ってとっても大変。


 せめてキョウにメスの一つでも渡したかったけど、現代のものと形が違ってわからない! わーん何もしてないよー!


 キョウは「切りますよ、ごめんなさいね」と新しい作業の度に丁寧に声をかけることを怠らなかった。


 続いて、頭に穴を開ける工程だ。


 ユヅさんとナナはへにゃ……として様子が変だ。


「僕は何度立ち会っても苦手だ……レナさん、頑張ってください」と声をかける。


ナナは、「うち、見れないっス! レナさんファイトっスよ……」と目を半分閉じた。警備のために頑張って見てくれてるみたい。って顔! ナナの顔すごいことになってる! 怯えてるネコみたい!


 私は、災害現場や事故現場で予想外の悲惨な状況をたくさん見てるから、キョウの手術は全然綺麗で抵抗がない。でも、普通なら目を背けるくらいの大ごとで、私が普通じゃないの。


 ドリルは画鋲より小さくてびっくりしたけど、未来のものだけあって振動も少なく音も静かで、切れ味も抜群だった。キョウの腕の良さもあるんだと思う。見事に鍵穴ができた。


「さて、ベル。手を貸して欲しい。この骨の代わりになるのがゲル状のこれだ」


 キョウは肌色のアイスみたいなのをトレーから取り出す。


「手の温度で温めると柔らかくなって馴染みやすくなる。俺よりベルの方が体温が低いからゆっくり溶けて馴染みやすい。手に乗せてるだけでいいんだ。頼めるか?」


 私は頷いてふにふにのものを持つと、だんだんと溶けていった。「未来のもの、だよね? 本当に私に見せてもいいの?」


「実は、俺達四人が何をしてもバタフライエフェクトは起こる可能性はとてつもなく低いから安心してくれ。今まででバタフライエフェクトが観測された例は一つしかないんだ。総理と琥太郎さんには念を押してユヅ先輩が言っただけなんだよ」


「えっそうなの?」


 バタフライエフェクトって起きまくって未来が変わりまくって大変なことになるのがタイムトラベルとかの定石じゃないの?


「バタフライエフェクトは有名だろ? 僕達はあえてこの単語を出すことで依頼者に緊張感をより持ってもらうようにしている。未来も過去も、なかなか変わらないんだ」


 キョウとユヅさんが話している間に、肌色のアイスのようなものがとろとろに変形してた。


「お、ベル。今の温度がいい。手を広げてくれ」


 言われるがままに手を広げると、キョウは小さなチップのようなものをそれで包んだ。


「これ、前に言ってた"本"を夢を通して一度見ると忘れなくなる装置だ」便利だろ? とキョウが緻密な作業をしながら教えてくれた。


「忘却防止装置とはまた違うんだね」

「ああ。あくまで、"本"の内容限定になってる」


 未来のシステムって上手くできてるなぁ……。


 キョウは肌色のゲルを光を当てながら頭蓋骨の穴をならすようにして閉じた。後から皮膚がちゃんと覆ってくれるみたい。


 キョウは本当に職人のような技だった。鍵穴はとても小さいし、あまりこれから先そこから髪の毛が生えなくなっても、目立たないだろうなあ。


「オペが終わりました。レナさん、お疲れ様です」


 え? 本当に終わり? とはてなを浮かべてると、「実はズルをしてる。俺のオペの操作だけ若干だが早送りさせてもらったんだ」と教えてくれる。いつの間に申請したの!?


「メールでオペ前に申請しといた」

「え、今私の心読んだ?」


 まあな、とキョウはふっと笑う。


「急変もなくて良かったね。レナさんお疲れ様でした」


 私は、なんとなくココさんと目が合った気がした。ぬいぐるみってたまに不思議だよね。「レナさんは無事ですよ」と言うと、気のせいだけどほっとしたように見えた。


「キョウ兄乙っス! パイセン拾ってくっスね!」

「ああ、頼む」


 拾っていく……って何? って、ユヅさん顔面蒼白じゃん! 血とか苦手なタイプですか!?


「恭介。僕に骨を見せるなよ。気力で持ってる」

「骨恐怖症なのに戦闘員って無理ありすぎですよ」

「さあさあウチが運ぶっスから!」


 ナナはユヅさんの手をレナさんから取る。「手術終わったんで約束通り離してもらうっスよ」と言った後、足をかけたのかユヅさんをうつ伏せに転ばせた。

 ひ、貧血とはいえそんな扱いしていいの?


 ファイヤーマンズキャリーでユヅさんを担ぐ。これならナナもユヅさんを運べるけど、うわあ、絵が、絵が強い!


「降ろせ」

「後で降ろすっス」

「降ろせ」

「うるさいと黙らせるっスよ?」


 ユヅさんが――完全に沈黙した!


「さあ、病室に戻ろう。総理達も心配してるだろ」


 片付けはうさぎの仮面をつけてない医療班が引き受けてくれて、私たちは手術室を後にした。


「レナさんが頑張ってくれたので、無事に手術は成功しましたよ。急変も無く今は安定しています」


 キョウの説明に総理は泣いて頷いていた。

 琥太郎氏が「来栖様、ありがとうございました。引き続きレナのことをよろしくお願いします」と頭を下げる。


 私はビニールからチョコさんを出してあげて、レナさんのベッドサイドに優しく置いた。


 また移動になるので、うさぎ仮面が前に二人、後ろに三人つく。ううっ恥ずかしー!


「あのギャルやばーい」「イケメン背負ってる美少女かわいー!」とうさぎ仮面よりナナが注目されてた。そりゃそっか!


 移動中、服部さんがサッと現れてユヅさんに巻物を渡した。一瞬で読んで、「引き続きお願いします」と頼むと「はいでござる」とお返事して消えた。


 私は首を傾げてキョウをじっと見つめると、「俺もわからないんだ。読み手に集中しろって言われててな……」と目を伏せた。


 というわけで、「ベル、よろしく頼むな」と言って左手を出してくれる。私は握手しようとして――交換した指輪が目に入った。"前"のベルから引き継いだものだから、ちょっともやっとする。


 けれど……。両手でキョウの手を掴み、思いっきり揺らした。ベルって結構子どもっぽいよな、とキョウが照れながら笑う。


 うるさいなー! とは言わずに「かわいいでしょ?」と反論してみたら「ああ。かわいい」とシンプルに頷かれて不意打ちを食らった。


 私の負け……。


***



 病室に着いて、私たちは初めて読み手の仕事をすることになった。


 総理と琥太郎氏は、レナさんが危険な状態にいるので、念の為待機しなければならない。


 記憶を読んでいる間は、レナさんの人生についてユヅさんがヒアリングして、総理と琥太郎氏の思う『レナさん』について聞いて、記憶との差があるか、何について話していいか、これは隠すべきかなどを"本"にする前に打ち合わせするんだって。


 ユヅさん曰く「夢を見せる本人の意思は勿論だが、依頼人のご意向を尊重することも大事だ。知らない秘密もあるだろう。聞いて都合の悪いことが記憶域にあっても"本"にして公にしてはならない」そうで、レナさんと総理、両方が幸せになる本を作るために、外部情報も必要なんだって。


 "本"は総理と琥太郎氏も読めるらしくて、本当にレナさんに夢を通して見せていいか最終チェックをしてもらうみたい。


「では、私とこのジジイは一旦外でお待ちしております。ベル様、来栖様。どうかお気をつけていってらっしゃいませ」

「頼んだぞ! お嬢さんと青年よ!」


 記憶を読むためには、本名を唱えないといけないの。私の本名は、知られてしまってはとっても大変らしいから、絶対に三人以外には秘密なんだって。「また説明できなくてすまない」ってキョウは俯いてた。


 また謝らせちゃった……そうだ!


「謝ったら罰でハグを一回するってのはどう?」

「ベルごめん」キョウはにやけながら、速攻で悪気もなく謝る。


あっやば、この人確信犯です! お巡りさーん!


「もーーーーー! 今度からズルするのだめ!一回だけだからね」


 私はキョウにぶつかってぎゅっとして離してあげた。反則! 反則なのに! この勝ち誇ったドヤ顔。く〜〜〜っ! いたずら小僧みたいな顔かわいすぎ!


「キョウ兄ズルしたっス!」

「ベル、トマトを食べさせよう。恭介は苦手なんだ」

「うわっ先輩何言ってるんですか!」

「ガチの反応じゃん! キョウ、トマトあーんしてあげるね」

「ベルがあーんしてくれたら俺は全部食べるぞ」

「ダメだコイツ……もう手遅れだ。恭介ってこんなんになるのか?」

「ベルっちにめろめろっスね。あー早くいってらっしゃいっス」


 ナナがキョウをチョップすると痛みに顔を歪める。「お前は加減ってものを知れ! ったく……もう行くから体頼むな」


 体を頼むって何? 記憶を読むってどうするんだろ?


「ベル、これからレナさんの記憶域に入る。記憶の空間の形は、人それぞれでわからないんだ。花畑かもしれないし、住宅街かもしれない。でも、襲われたりしないから安心してくれ。その間、俺たちは眠ることになる」


「そのためにウチとユヅパイセンがいるっスよ!」


「僕達は、本来戦闘要員というよりは、読み手と書き手が集中している間に守ることの方が本来の役目なんだ。相性の良い者同士が体を守る。信頼できないと安心して記憶を読めないだろう? だから僕は恭介を、七海はベルを守る」


 えっそうなんだ。考えられた組み合わせなんだ!


「じゃあ、えっと、キョウと一緒にリアルな夢を見る感じ? 眠ってる間はナナに体をお任せ! みたいな」


「はいっス! お布団にねんねしてもらうっスよ。キョウ兄と一緒でも良いっスか?」


 寝てる間とはいえ一緒のベッド!?


「こら、ナナ。ベルが困ったらどうする」

「だーかーらー関係が進まないんスよ! ベルっち、寝てる間はキョウ兄は手を出さないっスし、起きても手を出させないっス。あくまで意識が記憶域にいるだけの間っスから」


 わ、わ、私何考えてたんだろ! キョウのことになると馬鹿になる! ってあれ、そうだ。これは聞いておかないと。


「……"前"のベルはどうしてたの?」


 なんだか浮気を疑う彼女みたいな発言みたいになってしまった。でも"前"の私との関係にはめちゃくちゃ妬いてる。『恭介』って呼び捨てだったし!


 答えていいものなのかとナナとユヅさんはキョウを見やる。


 私は名指しで詰め寄る。恋人だから近づいて良いはずなんだもん!


「キョウ、"前"のベルはどうしてたのっ」

「俺は今のベルしか見てない。"前"のベルは関係ないだろ」

「そういえば、この指輪も"前"の私に買ってあげたんだって?」

「今それ違うだろ……えっと、ユヅ先輩助けてください……」


 白旗をあげたキョウを見て、ユヅさんはため息をつく。


「……ベッドは別々にして、くっつけるように置いてたよ。互いに手を伸ばして手を繋いでた。これに関しては深い意味はない。手を繋ぐことによって、記憶域で離れないようにする為の効率化だ」


「じゃあ一緒のベッドで手を繋いで寝ます」

「ベルっち……頑張れっス!」

「ありがとナナ! "前"の私に負けない!」

「お前ら、今ものすごく面倒臭いぞ。"本"を書き終わったら時間作ってやるからきっちり話し合え。さっさと記憶読んで無事に帰ってこい。いいな?」


「「はい」」


 ユヅさんの剣幕やば……!


 というわけでレナさんのVIPルームの個室に、ベッドを用意してもらった。総理も泊まる時に借りるんだとか。


 どうやら記憶を読む為には対象と接触しなきゃいけなくて、記憶域に入った途端、ばたーんと寝るらしい。じゃあキョウとベッドにいるのって全然わかんないってコトじゃん!


「ベル、俺の後に続いて復唱して、真似してくれ」

「うん、できるかな……」

「ベルならできる。……もう手を繋いでもいいか?」


 いいよの代わりに手を繋いだ。さっきあんなこと言ったから、まだ恥ずかしい。


 始めるぞ、とキョウは言って私を見た。

 頷くとキョウは話し始める。


「"読み手"来栖恭介は、同じく"読み手"の――と共に高城レナ様の記憶を読ませて頂きます」

「"読み手"――は、同じく"読み手"の"来栖恭介"と共に高城レナ様の記憶を読ませて頂きます」


 すると、一つの鍵がレナさんから浮かび上がった。それをキャッチしたキョウが、「レナさん、すみません」と鍵穴に近づけると、吸い込まれていった。


 鍵穴は、ガチャリと開いた。血とかは出てない。よく見ると奥深くに何か見える。異空間が広がってる……ような、そんな雰囲気でちょっと怖い。


「いってらっしゃいっス!」

「いってこい、こっちは任せろ」


 二人の言葉をギリギリ聞き取って、私たちはレナさんの記憶の中に行った。



やっと記憶を読むところに来ました……。

いつになったら"本"を書くのでしょうね?


お星様にて応援頂けますと嬉しいです!

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