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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢歌環めちあ


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14/29

14話 闇 ※残酷描写有

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm

・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm

・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm

・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm

・服部半蔵

過去人。???/172cm

 病院を占拠するわけにはいかないので、事前に患者さんや面会者さんを誘導したり、病院へ連れて行ってくれる協力者さんを配置していたんだって。お陰様でいつもより病院に行きやすいから毎日クロストレックを停めてほしいとの声もあったみたい。


 いや! それはだめでしょ! でも、患者さんたちの妨げになってないってことだよね。安心したあ……。


 総理はというと、取材の申し込みが殺到していたので自撮り棒で動画を撮って投稿したみたい。

 確か声明を出したとかなんとかって。『つぶやキング』というSNSはその話題で持ちきりだった。


 私たちは、エントランスでキョウの先輩でもあり、今回の病院サイドの協力者の森さんを待ってるところだった。


「あんまり周り気にするなよ。俺達にはやることがあるからそっちに集中な」

「えー……気になるじゃん……」

「俺は読み手の精神的支柱も担ってるって最初の紙芝居でやっただろ? 今は仮の恋人だが任務は任務だからな」


 ほほう、任務は任務ね? 私は針の穴を見つけたようにつけ込むことにした。


「えー……恭介くんは、任務外なら仮の恋人をめちゃくちゃ甘やかしてくれます……っと」


 手にメモをするようにしてからかうと、こら、と声が飛んできた。病院だから声は小さめ。


 怒ったかなと思ったけど、照れて困ってるに近い感じがした。ううう〜〜〜いじめてごめんねぇ!


 病院に入ってからは厳格な体制になってる。テレビ局が入ってこれないからだ。

 でも他の患者さんを巻き込むし、人は多いから大丈夫だ、とキョウが安心させてくれた。


 私は今、キョウと手を繋いでて、ナナが私に抱きついてる。


 ユヅさんが厳しく評して指示を出す。


「警備としては最高だが、場所が場所だけに見た目が良いとは言えないな。恭介は手を離して腰に手を回すくらいにしとけ。七海は抱きつくな。ベルの前に出て警戒だ」


「パイセンってばヤキモチっすか?」

「ナナ、まだ食べごろじゃない。もう少しユヅ先輩を焼こう」

「キョウ兄の焼き加減スキルマジ半端ないっス」

「だろ?」


 ナナとキョウがユヅ先輩をからかうよう光景は、最初のタブレット発言の時と重なって笑っちゃう。ふふ、ナナとキョウって結構仲良いよね!


「お前ら……僕のことを何だと思ってるんだ」



「「おもち」」



 琥太郎氏も聞いていたみたいで、服部さんの横で「ふっ」と笑っているのを見た。笑うの!?


「クソ……森さんはまだか?」

「遅いですね。急患でしょうか」

「もう悪ふざけは勘弁だぞ、七海」

「キョウ兄も同罪っス! ひどいっス!」

「お前が始めたら恭介が乗ってくるのを知ってるからタチが悪いんだ。……まあ今回はベルが笑ってるからよしとするか」


 私は対応できないくらいツボに入っちゃって笑ってた。今度はおもちなんだ……! うける〜〜〜!


 総理は各方面からの連絡が途絶えなくて、てんてこまいになったみたい。「もう知らんもん! 放置プレイじゃ!」って言って投げ出して合流した。警備しているうさぎ仮面とSPさんも総理に合わせて早歩きでこちらへ来た。


 いいんですか、大丈夫ですか!!!

 その放置プレイはある意味危険ですよ!

 いや放置プレイってよくわかんないけど!


 わいわい静かに騒いでいると、やっと例の森さんが来たみたいで、キョウが私の腰から手を離して丁寧にお辞儀した。


「すいません、森先輩。色々とさせてしまって」


「いいよいいよー。同じ未来人で同じ時間軸にいたら喜んで協力させてほしいからね。おっとっと、失礼しました。私は森大和です。高城総理、まさかあなたに会えるなんて! 大変光栄です」


 総理は、何かハッとした様子で一瞬険しくなるけど、『総理』を遂行していた。口調が違う。


「高城次郎です。森さん、そう仰らないでください。私は肩書きだけですから……固くならず普通に接してくださいね」


誰ーッッ!? 総理のキャラが変わった!

誰が喋ってるかわからないッッ!


 キョウはユヅ先輩と何か言ってる。


「盲点だったな」「すいません、下の名前うっかりしてました」とかなんとか聞こえたり聞こえなかったり。


 すると、キョウがメッセを送ってきた。俺が走ったら走ってついてきて。レナさんの病室に駆け込むぞ。と書いてあった。


 ……森さんは置いてっていいの?


 でも、キョウの言葉が一番だ。早く走れるようにユヅさんがスニーカーに履き替えさせてくれて良かった。


 琥太郎氏も何かに気がついたようで、割り込んで一気に話し始めた。


「甥で秘書の高城琥太郎です。伯父がこの度お世話になります。また、日頃からレナを手厚く治療頂きありがとうございます。医療職者の皆様には頭が上がりません」


「いえいえそんな、私は医師として仕事してるだけですからー」


「とんでもないです。ICU勤務の森様直々にこうしてお迎えに来てくれるとはこちらも思いませんでした。抜け出して来て大丈夫でしたか?」


「総理、大丈夫ですよ。それじゃあレナさんのお部屋にご案内しますね。恭介、例の鍵穴のオペの準備も出来てるぞー! 安心してくれ!」


「至れり尽せりでありがとうございます、森先輩。ところで――『闇山』にいつから所属してたんですか?」


 森さんの目つきが変わった。なんで? 味方でしょ!?


 キョウも冷たくて、熱い怒りを秘めた瞳で思い切り森さんを睨みつけてる。キョウは、優しいけれど、怒るととても怖い人なんだろうなって思ってた。

 だけど、だけど、こんな顔をするなんて思いもしなかった。


 この睨み合いの瞬間に、服部さんは、総理と琥太郎氏を抱えて出口に向かった。うさぎ仮面はしっかりSPさんを引っ張って逃してる。


 森さんは注射器を取り出して自分に注射し始めた。自己注射、というものだ。何、なんか悪い未来の技術……?からん、と空っぽになった注射器を森さんは蹴り飛ばした。


 そして、こちらに笑いと怒りが混じった狂気の眼差しを向けて、怒鳴る。


「恭介が連絡してきたあの時からだ! 好きな女が動悸と若干の発熱と顔の紅潮があるって言って私を冷やかしやがったから痛い目見せようと思ったんだよ! 暗に両思いになったって自慢してるだろ! で、すぐにこの時間より五年前に飛んで病院に潜入したんだ! お前の女――書き手のベルを殺す為にな!」


 森さんが白衣から銃を取り出そうとした刹那――ピンク色の髪がなびく。ナナが手首ピンポイントに飛び蹴りしたと後になって気づいた。


 相手は派手に転んだけど、すぐに起き上がった。いや、前の体制に一瞬で巻き戻ったんだ! また銃を取り出すポーズになっていて、ナナが足をかけて転ばせ、顔面に小さな拳で何度も殴りかかる。目の色は黄色に変わってて、能力を使ってたのはすぐわかった。


 私は森さんの言葉を思い出して、ハッとする。さっき、キョウが相談して、『恋』って答えた人だったんだ……。嘘、何それ、ただの嫉妬でこんなことするの……?


 院内は一人の女性の甲高い叫びから、少しずつ騒ぎになる。


 うさぎ仮面が歩ける人を誘導を始めたり、周りの人を守り始めた。


 ユヅさんはマシンガンをもう取り出してあって、私に向けられた銃を鮮やかに落としていく。でも一人じゃ足りなくて、何発か撃たれてしまった。


「ユヅパイセン!」


 肉弾戦では敵わないと判断したナナが「ごめんっスよ!」と言って森さん、いや、森の足首と手首をナイフで鮮やかに切り落としてから、ユヅさんの元に駆けつけて背中合わせになった。でも、森の体は切られたのが嘘かのように戻ってた。


「森先輩は違法オペで高速の時間移動装置を内蔵してる! 気をつけてくれ! さっきの事故注射は痛み止めだ! ほとんどの攻撃が無駄になる!」


 キョウが警告してる間にも、闇山の構成員は銃で襲ってくる。私はキョウに抱かれて守られてるだけで、悔しい。悲しい。やめてって言ってもきっと、きっと銃の音は……人の叫びは……命が失われるのは……止まらない。


 服部さんも戦ってる。「きゃー♡」「はぁっ♡」「おふッ♡」と黄色い歓声から野太い声まで聞こえてきて、たくさんの人を傷つけずに、めろ落ちさせてる。


 キョウは目が青くなってた。私を強く抱きよせたまま、患者さんを装って襲いかかってきた人の脳天に長い足で蹴りを入れる。弾き飛ばされたかのように飛んでいって、ボウリングのように後ろの二人を薙ぎ倒した。この一撃で三人片付ける。


 視界が開けた瞬間、私の手をとって駆け出した。銃を取り出して牽制で何発か打ちながら走る。

 レナさんの病室の位置は車内で雑談した後で共有済みだ。


 キョウの足、速い。私も置いていかれないように精一杯、頑張って走る。せめて足手纏いにはならないように。キョウが手を引いてくれてるからこの速度が出るけど、すごくキツイ。


 やっと階段につく、という所で受付カウンターにいた女性が銃を向けて来た。「動くな」と言われてキョウと私は足を止めるしかなかった。一体何人『闇山』がいるの……?


 うさぎ仮面によって入り口付近の患者さんや付き添いの方、面会者や『闇山』じゃない人を外に誘導できたみたいだけど、何人かジャージが赤色に染まっていた。


 ――血だ。ナイフが刺さってる。ひどい、きっと、患者さんだと思って助けようとした所を刺したんだ……だって心臓の位置にナイフが……ナイフが刺さっているだもん……。実力が確かな人たちだから、本来なら避けられたはずなのに……。


 私たちは受付の女性に脅されながら、元の位置にじりじりと後退した。


「まさか、右山さんと佐山さんまで来てませんよね?」


 ユヅさんが森を睨みつける。


「何故わかったぁ!?」


 森がわかりやすい。右山と佐山もここにいるんだ。目がすいすい泳いでる……。気をつけないと、私も覚悟を決めないと。お守り用の銃を取り出した。武器に武器で対抗するのは嫌だけど、自分を、みんなを守る為だからって一瞬でいっぱい言い聞かせた。キョウを見ると、ただ頷いてくれた。それだけで、私は強くなれる。


「ああ、教えてくれてありがとうございます。幹部二人いるんですね。全員苗字に『山』が入ってますし小学生が作ったのかと思いました」

「なんだと? 山が入る苗字なんていくらでもあるのに――貴様ッ見抜いたというのか?!」


 銃を森に向けながらユヅさんは淡々と、でも嘲笑うかのように指摘した。


 森は……目を剥いて、うそだろ……と声を漏らす。


 いやわかりますって! サービス問題ですよ!


 受付の人も「ええっ」と声をあげて驚きのあまり銃を落とした。服部さんが「見るでござる」と声をかけ、すかさず顔を見せてめろめろにする。「はぅ♡」とまた人を傷つけずめろ落ちさせた。


「ベル今のうちにまた走るぞ! 後退してナナ達の所に戻る! 俺達二人だけじゃ埒があかない!」


「山がバレたかッ」「くそっなんで山を見破ったんだ!」という怒号とともに、さっきよりも激しく怒りが引き金になって一斉に攻撃が始まった。


 二階からは銃が向けられ、一階では接近戦も銃の攻防も始まって、凄惨な状況になっている。


 キョウが傘をさしたかと思ったら盾だった。それに守られてながらなんとかナナ達と合流する。


 ――でも、私はなんでキョウが森のことを敵だって気付いたのか未だにわかんない。


「ねえ、キョウ。森に山って入ってないじゃん?」

「聞いてなかったのか……? 苗字じゃなくて名前に入ったんだ。『大和やまと』ってな。うっかりしてたよ。一応カマかけてみたら釣れたんだ。はあ……名前を含んだら何人いるのか……」


 そのパターンは予想してなかった……。


「恭介ぇぇぇ! リア充になんてなりやがって……! 名前に『やま』がついている『闇山』の構成員は私だけで山神様は敵を出し抜くのに便利だと言ってもらえたのに……くそ、気づきやがって……」


 森は仲間に撃たれても時間を戻して再生し続けてるみたいで、穴が空いては塞がるのを繰り返してる。


 まるで、ゾンビみたい――怖い。そんな理由で恨んで、こんなことで利用されて、人間が一番怖いっておじいちゃんが言ってたけど、本当だ……。


 キョウの持ってる盾はすぐに使い物にならなくなってしまった。


 苦しい顔をしながら引き金を引いてはリロードしていくナナとユヅさんを見ていると、私も胸が苦しくなる。二人は、手加減して手とか肩とか狙ってるのに、相手はとにかく命を奪いに来てる。


「あら、森ちゃん、ま〜だ始末してないの?」


 森の前に急に女の人が現れた。闇山たちの銃が一斉に鳴り止み、静かになる。



 その人は、全身黒で統一されていた。黒の艶めくロングヘアが印象的だった。黒のマーメイドラインのドレス調のワンピースを着て、カクテルハットを被ってる。タイツも黒、ハイヒールも黒で、持っている薔薇の形の鞄も不気味。



 怖いのに、私の目はその人に釘付けになっていて、どうしても逸らせない。



「右山様! すみません! 見破ったんですよコイツら! 闇山のルールの苗字に『山』がつくことを!」


「そんなのどうでもいいわあ〜。欠伸が出ちゃう。 そんなことより、もっと良いことを私は見抜いているのよ?」


 コツコツ……とハイヒールをわざとらしく鳴らしながらこっちに近づいてくる。私……じゃなくて、ナナの目の前に止まった。ナナは接近戦を想定したみたいで、ボクシングのような構えになって右山を見上げた。


「このピンクのお姫様。この子を殺したら勝ちよ。じゃあ少しは仕事してよね、佐山」


 入れ替わるように五歳くらいの小さな男の子が出て来た。


「助けてっお姉ちゃん!」


「えっなんで子どもちゃんがここに――」


 ナナは銃を落としてしまった。


 銃声が響く。佐山様ごと撃て! どうせ未来で治療をする! と大声が響いた。男の子は血を流しながら、どんどん大人の姿になっていって、スーツを着たおじさんに変わった。……大人だった、の?


 佐山ごと撃てってことは、こいつの、能力……? 守るべき対象に変身してナナの心を揺さぶった、の……?


 その時だけナナはある程度の弾を避けられた。けれど、佐山がどさりと倒れて――

 


 ナナにだけ向かって弾が浴びせられる。



 ナナは避けられない。目の前の森は繰り返し回復しながら、ナナに近づいていった。ナナは「後は任せたっスよ」といつもの明るい声で言ってユヅさんを自らの後ろに投げ飛ばして守る体制に入った。


「七海ーッ!」


 ナナは、腕をめいっぱい広げて、手も広げた。

 血飛沫が、止まらない。耐えられるはずないのに、ナナは黙って立ってた。


「ナ……」


 嘘。名前を呼びたいのに声が出ない。



  コトン、と静かに、人形が転んじゃったかのように――ナナが倒れた。



 私は事実を飲み込めないまま、ただただナナを見てた。


 すると、ナナがまた立ってた。

 良かったって思ったのに、違和感が襲う。

 

 倒れてしまってたナナと、立っているナナの二人が、いる……?


「記憶データの同期は後にしてやっちまうッスね! 七彩七海、未来から参上っス!」


 『ナナ』が、これは弾除けに使ってください、と血だらけの『何か』を投げた。



 それは――勇敢に最期まで守ってくれたナナの体だった。

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