6.ムシャフ王国への到着と戦闘
夕暮れの空が赤く染まる頃。
人間の姿をとったレイジ(=ゼアラビス)は、妹のミジャルン、そして美しいエルフの少女アシアと並んで歩いていた。
その先に広がるのは――
世界でも指折りの大国、ムシャフ王国。
レイジは目を細め、ミジャルンへ思考接続を開く。
レイジ:ここは何という場所だ?
ミジャルン:アシア曰く、「ムシャフ王国」だって。
レイジ:ムシャフ、か……面白そうだな。
ミジャルン:うん、でも私まだこの世界慣れないよ。建物も全部変だし……
レイジ:(心中)たしかに。完全に異世界だな、これ。
接続が切れた瞬間、ミジャルンが手を叩いた。
ミジャルン:ほら、もう着いたんだよ!無言で突っ立ってても意味ないから!
レイジ:……まあ、そうだな。
アシアが振り向く。
「ここです。――冒険者ギルド。」
扉を開いた瞬間、酒場のように賑やかな声が渦巻いた。
その中で、筋骨隆々の男が立ち上がる。
Aランク冒険者――モグ。
「よォ…アシア。てっきり魔王ヴァウとの戦いで死んだと思ってたが?」
アシアは静かに答えた。
「この二人が助けてくれたの。」
モグは鼻で笑う。
「……このガキどもが? 冗談だろ、エルフ。」
アシアの瞳に怒りが揺らぐ。
「侮らないで。もし彼らがいなかったら、私はここにいない。」
ミジャルンがムッとする横、
レイジはただ――すべてを知ってるような無表情で立っていた。
ミジャルン:か、かかっ!? 黙ってないで何か言ってよ!!
レイジ:やめろ。人間の身体は痛覚があるんだぞ。つねるな。
ミジャルン:なら、もっと人間っぽく反応しなさいよ!
周囲がクスクスと笑い始めたその時、
モグが吠える。
「なら証明しろ! うちのパーティの一人と戦え!」
ミジャルンが指差すのは短い赤髪の女剣士――ズワ・フィウトリ。
彼女は微笑み、軽く構える。
「可愛い子ね。手加減はするわ。」
その瞬間、レイジはモグをまっすぐ見た。
「……お前を選ぶ。」
ギルド内がどよめく。
アシアが震えた声で問いかける。
「レイジ、本当に……?」
レイジはただ、薄く微笑む。
「信じろ。俺は――君の命を救った者だろう?」
ミジャルンが横から突っ込む。
「うわっ出た、キザ発言!!」 「うるさい。」
アシアは耳まで赤くしながら、うつむいた。
「……うん。信じる。」
---
決闘前の条件
モグは嘲るように宣言した。
「負けたら――アシアは俺のパーティに入れ。」
アシアは唇を噛んだが、頷いた。
レイジはただ、心の中でだけ思う。
(……さて。どいつが追い出されるんだ? あの素朴な妖精の子か? まあ、それなら悪くない。)
ミジャルンはその子に声をかけた。
ミジャルン:わたし、ミジャルン!よろしくね!
リヤ:あ、あの……リヤ。妖精種です……
ミジャルン:かわいいね〜〜✨
レイジはその様子を眺め、ほんの少し口元を緩める。
モグは鼻を鳴らした。
「その余裕、すぐ後悔させてやる。」
---
翌日――決闘の日
朝の空は澄み、
冒険者ギルドは祭りのような喧騒に包まれていた。
ミジャルン:(思考接続)お兄ちゃん……めっちゃ見られてる……
レイジ:仕方ない。俺たちは「この世界の人間ではない」からな。
ミジャルン:言い方が哲学者なんよ。
アシアが近づく。
「二人とも……本当に大丈夫?」
レイジは振り返らずに答える。
「心配するな。静かな水面こそ、最も深い。」
アシアの耳が赤くなる。
ミジャルン:
「ほらぁ!? もうそういうとこだってば!!」
---
第一戦 ミジャルン vs ズワ
ズワの剣が閃光のように走る。
しかしミジャルンは――すでに背後にいた。
「……え?」
ミジャルンは空中に浮かび、足を組む。
「ごめんね。つい本気で避けちゃった。」
ズワの攻撃が空を切り続ける。
ミジャルンはただ、指先で空間を “弾く”。
地面が砕け、空気が震え、
その圧だけでズワは膝をつく。
「……っ……はぁ……はぁ……化物……」
ミジャルンは優しく微笑んで言った。
「うん。そうだよ。」
勝敗は瞬時に決した。
---
第二戦 レイジ vs モグ
モグの全身を包む炎術Lv.4「フレイム・インパクト」。
爆炎が闘技場を呑み込む。
――しかし、炎が晴れると。
レイジはそこに、ただ立っていた。
無傷で。無表情で。
「……終わりか?」
レイジは指を鳴らす。
炎が花の光に変わり、
モグ自身の「恐怖」を形にして燃え上がる。
モグは叫び声を上げ、意識を失った。
静寂。
ギルドは――息をすることさえ忘れた。
---
戦いのあと
アシアは震える声で尋ねる。
「……レイジ。あなた達は……一体……?」
レイジは空を見上げる。
「さあな。
ただ――『生きている』と呼んでいいなら、それでいい。」
ミジャルンが無邪気に笑う。
「ね? そういう人なんだよ、うちのお兄ちゃん。」
アシアはゆっくり、静かに微笑んだ。
「……そうなんだね。」
「……待て。ザラビスとは、一体何者なのか。」
「物語は、静かに過去へと遡る。」




