第7話:非表示オプション
ギルド・ムシャフの上空の空は、ゆっくりと静けさを取り戻しつつあった。
戦いの名残の埃がまだ空気の中に細かく漂っている一方、観客たちは途切れることのないささやきを交わしながら、少しずつ散り始めていた。
「あの二人…やっぱりおかしいよ」
「女の方は明らかに人間じゃない…」
「男の方は…それ以上に奇妙だ…」
闘技場の真ん中では、ザラビスが人間の姿・レイジとして静かに立っていた。
彼の目はいつものように何の感情も映していないように見えた。
だが、彼の心の中は――そうではなかった。
重たい足音が近づいてくるのが聞こえた。
モグだ。
彼の顔にはまだ収まることのない怒りがあふれていた。
「俺…まだこの結果、認めてない」
少し離れた場所に立っていたアシアが、すぐに顔を向けた。
「どういうこと?」と彼女が言うのと、ミジャルンが同じ言葉を発するのが同時だった。
レイジは彼らの方をちらりと見ただけ。
そして――彼の唇の端が、ほんのわずかに上がった。
「ふうん…そうか」
ミジャルンはすぐに目を細めた。
「お兄ちゃん…その顔、何かたくらんでるでしょ」
「さあな」とレイジは落ち着いた声で答えた。「そうかもしれないな」
アシアは眉をひそめた。
「二人とも、何の話をしてるの?」
レイジは軽く頭を振った。
「何でもない。ただ…さっきは運が良かったと思っただけだ」
「運が良かった?」アシアは困惑しながら、小さくその言葉を繰り返した。
だが、会話が続く前に――
モグが再び闘技場の中心へと歩み出した。
「なら…もう一度やろう」
ギルド内の空気は再び静まり返った。
合図もなければ、カウントダウンもない。
モグはすぐに攻撃を仕掛けた。
彼の手から炎が爆発するように噴き出し、その規模は先ほどよりもはるかに大きかった。それは単なる怒りだけではなく――自分の誇りをかけた炎だった。
ザラビスは一歩も動かなかった。
ほんの一瞬の間に――
彼はすべてを理解していた。
攻撃の行方でもなければ、この決闘の結果でもない。
…それ以外の、何か。
何か「おかしい」こと。
だが――
彼はただそこに立ち続けた。
ドンッ!!
爆発が彼の体に直撃した。
炎が闘技場全体を包み込む。
その熱さに耐えられず、一部の冒険者たちは後ずさった。
ミジャルンは拳を強く握りしめた。
「お兄ちゃん…」
だが彼女も一歩も動かなかった。
彼女は知っていたのだ。
自分の兄が――これを選んだのだと。
煙がゆっくりと晴れていくと――
ザラビスがひざまずいている姿が見えた。
肩には少し傷がついていたが、呼吸は落ち着いている。
だが――彼は一切反撃しなかったのだ。
モグが大きく笑い出した。
「ハッ! これがお前の限界か!?」
観客たちの歓声が再びわき上がった。
ギルドマスターが手を上げた。
「勝者…モグ!」
歓声の中で、アシアはただ静かに立っていた。
彼女の視線はレイジに釘付けになっていた。
「…わざと負けたのね」
返事はない。
レイジはゆっくりと立ち上がり――そして顔をそむけた。
沈黙が流れた。
それから、アシアが小さな声で言った。
「なら…私もついていく」
ミジャルンが驚いてすぐに顔を向けた。
「アシア!?」
だがエルフの少女は彼らの方をもう見なかった。
彼女はモグの方へと歩き出す。
足取りはしっかりとしているように見えたが――心の中は明らかに違っていた。
ザラビスはただ一瞬目を閉じただけだった。
彼女を引き止めもせず、理由を説明もしなかった。
やがて騒ぎは収まり、闘技場は再び空っぽになった。
部屋の片隅では――
リヤがまだその場に座り込んでいた。
彼女の手は震え、目には涙があふれていた。
「わ、私…役に立たないんだ…」
ゆっくりとした足音が近づいてくる。
ザラビスが彼女の前に立った。
「それは違う」
リヤは驚いて彼の顔を見上げた。
「え…?」
ザラビスは真っ直ぐに彼女の目を見つめた。
「お前が役に立たないのではない」
彼は少し言葉を途切れさせた。
「この世界が…まだお前の価値を見つける方法を知らないだけだ」
リヤの目から再び涙がこぼれ落ちた。
「ど、どうして…私のことを助けてくれるの…?」
ザラビスはすぐに答えなかった。
まるで――適切な言葉を探しているかのように。
「…俺自身、お前のことを知りたいからだ」
その答えは単純だった。
だが、それだけで十分だった。
彼は手を差し伸べた。
「俺と一緒に来るか?」
リヤはためらっていた。
だがそれはほんの一瞬のこと。
それから――
彼女はゆっくりと頷いた。
しばらくして――
彼らは静かな広い草原にたどり着いた。
草がそよ風にゆっくりと揺れ、空は果てしなく広がっている。
その真ん中に――一軒の木造の家が建っていた。
ミジャルンはその家を長い間見つめていた。
「お兄ちゃん…これは…?」
レイジは短く答えた。
「一時的な拠点だ」
ミジャルンはまた目を細めた。
「…お兄ちゃんが作ったの?」
レイジは答えず、ただ家の中へと歩いていった。
家の中は――暖かく、静かだった。
リヤは戸口に立ったまま、中へ入るのをためらっているようだった。
「入れ」とレイジが言った。
「ここは…これからお前の家だ」
リヤは唇をかみしめた。
「…ありがとう…」
夜がゆっくりと訪れ、風は柔らかく吹いていた。
家の中では、ミジャルンが兄の方を見つめながら座っていた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「わざと負けたんだよね」
「ああ」
「どうして?」
沈黙が流れた。
数秒が過ぎ、ザラビスは窓の外を眺めた。
「…何かがおかしいんだ」
ミジャルンは眉をひそめた。
「どういう意味?」
ザラビスはすぐに答えなかった。
彼の目の色が少し変わった。
初めて見せるような――真剣な表情だった。
「…アシアのことだ」
彼は言葉を切った。
「…あの子は何かが違う」
ミジャルンは黙り込んだ。
遠く離れた、誰の目にも触れない場所――
闇の中に二人の影が立っていた。
「彼ら、ついに動き出したな」
「…ああ」
そのうちの一人が、ほのかに笑みを浮かべた。
「面白くなってきた」
再び小さな家の中へ――
ザラビスは目を閉じた。
だが彼の意識は――決して完全に眠りに落ちることはない。
「…このゲームは…」
彼はほとんど聞き取れないほど小さな声でささやいた。
「始まったばかりだ」




