表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/72

5.1日目: 人間であることに失敗した

「本編」


異世界の草原にて


柔らかな風が、見知らぬ大地を静かに撫でていた。

その大地には濃い魔力が満ちている。


二つの影が、広い平原の真ん中に立っていた。


ザラビスは、無表情のまま周囲を見渡す。


「油断するな、ミジャルン。」


「りょーかい!兄上!」


ザラビスは腕を組み、小さく呟いた。


「この異世界……悪くない。」


ミジャルンも辺りを観察する。空気は濃い魔力で重い。


「すごい……魔力が濃いよ。まるで世界そのものが息してるみたい。」


「そうだな。生命と魔力が共存している世界だ。」


ミジャルンは明るく笑う。


「じゃあ——きっと楽しいね!」


ザラビスは短く、


「……あぁ。」


その「一音」だけで、ミジャルンは吹き出しそうになる。

兄は無に近い存在だが、頑張って「普通」に寄せているのが分かるからだ。



---


森での遭遇


二人は森を進み、そこで一人のエルフが倒れているのを見つける。


「兄上!見て見て!耳が長いよ!ほら、エルフだよ!」


ザラビスは無表情のまま考えた。


(……喜ぶべきか?……よし、やってみろ、ザラビス。)


そして、ぎこちない演技で叫んだ。


「おおお!? これがエルフ種族か!? か、かっこいい……!」


ミジャルンは腹を抱えて笑った。


「兄上、それ顔が死んでるよ!!」


ザラビスは膝をつき、涙の真似をしながら呟く。


「……普通って……どうやってやるんだ……?」


「任せて!弟の俺が教えるよ!兄上は何でもできるんだから、笑顔ぐらい余裕でしょ!」


「……あぁ。」



---


洞窟での休息


倒れたエルフをザラビスは枕のように軽々と抱え、洞窟を見つけて休むことにした。


「……人間の寝姿って、こうか……?」


ミジャルンは悪戯っぽく言った。


「兄上、エルフさんと一緒に寝れば? あったかいよ?」


「そうか。なら、友好関係が築けるかもしれない。」


(真面目に受け取るんだ……)


深夜。

エルフは目を覚まし、自分がザラビスに抱かれていることに気づき、慌てて弓を取る。


だが、穏やかな寝顔を見て、手が止まった。


(……この人、敵じゃない……)


彼女は少し距離を取り、そっと眠りに戻った。



---


翌朝の気まずさ


夜明け。

エルフは立ち去ろうとしていたが、ザラビスが無音で背後に立つ。


反射的に放たれた矢は、触れた瞬間に粉になって消えた。


「ま、待って!!誤解しないで!私たちはあなたを助けただけ!」


ミジャルンが慌てて説明する。


エルフは赤面しながら頭を下げる。


「……ごめんなさい。あなた達は兄弟なの?」


ザラビスはミジャルンへ小声で問う。


「……兄弟とは何だ?」


「家族って意味だよ、兄上。」


「理解した。私は兄だ。」


エルフは優しく微笑んだ。


「私はアエレル・アシア。アシアでいいわ。」


「……俺はレイジ。」

ザラビスがそう名乗ると、ミジャルンも続いた。


「僕はミジャルン!よろしくね!」



---


魔王の話


「どうして森で倒れていたの?」とミジャルンが尋ねると、


アシアは静かに答えた。


「……魔王と戦っていたの。私たちの国は、彼に勝てなかった。」


ザラビスは目を細める。


「魔王、か。面白い。」


「兄上!その表情は友達か喧嘩か決めかねてる時の顔!」


ザラビスはくすくす笑う。


「強者は孤独だ。なら、話してみるのも悪くない。」


アシアはその笑いに、何故か温かさを感じた。



---


ムシャフ王国へ


「よければ……ムシャフ王国へ来ない? 美しい場所よ。」


「行こう、兄上!!」


「……あぁ。」


三人は歩き出す。


しかしその様子を、遠くの水晶塔から黒衣の2人が見下ろしていた。


「感じたか、ヘイモン。」


「あぁ。あの魔力は……この世界のものではない。」


「魔王ヴォウに報告する。異界の者が現れた。」


彼らの名は、フクロンとヘイモン。


世界の均衡を見守る二人の将。

今、無の領域から来た兄妹——ザラビスとミジャルンを注視していた。


ザラビスは瞬き一つで次元を破壊できるかもしれないが、彼はまだ笑顔の作り方を学んでいる最中だ。

だから、もしあなたが疲れを感じたら、どんなに強い存在でさえ、かつては「良い人間」になる方法に戸惑っていたことを思い出してほしい。

旅を楽しんでください。あなたが踏み出す小さな一歩一歩が、人生で最も素晴らしい章を書き始めるかもしれないのですから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ