4.マルチバース間違えたんだが?
第七層の次元膜をぶち破り、千鳥足の宇宙船みたいな軌道で飛び回った末――
ヴェルドラはついに《キョウゲンマイ星》へと墜着した。
そこは、原初級の魔族たちが集まっては、溶岩コーヒーをすすりながら
「誰が一番イカしているか」を永遠に議論している、ヤバい星である。
――ドゴォォン!
賑わう魔市のど真ん中に、ヴェルドラが顔面から突っ込んだ。
ざわり、と空気が止まる。
周囲の魔族たちが一斉に目を向けた。
「……あっはは! 悪い悪い、GPSがちょっとバグったんだよ。
この次元、電波ないじゃん?」
二本角の魔族が近づく。
「ここがどこか、理解しているのか?」
「んー、キョウゲンマイでしょ?
確かこの星、十二の地獄で一番ウマい《溶岩ラーメン》があるって聞いた。」
魔族たちは静まり返った。
そこへ、黒いマントを纏い、全身に古傷を刻んだ巨大な魔王――
《原初魔帝デグラム》が現れる。
骸骨竜で作られた王座に腰を下ろし、冷たい視線を向ける。
「ここは我の領土だ。
訪れし者が、生きて帰れた例はない。」
ヴェルドラはきょろきょろと周りを見る。
「へぇ~、観光客ゼロか。
俺こういう独占感、嫌いじゃないんだよね。」
「貴様……我を侮辱したか?」
「いやいや。ただ、宣伝50%セールすればもうちょい賑わうかもって話。」
魔族たち:「…………」
端っこの小魔族が爆笑する。
「アハハハハ!! お前好きだわ!!」
ヴェルドラも笑う。
「HAHAHA! やっと理解者来たな!」
デグラムはついに激怒し、灼獄の刃を抜き放つ。
「もういい。貴様を焼き尽くす。」
「おっとおっと、じゃあ《本気禁止モード》で行こうぜ?
旅行中だし。」
――そして戦闘開始。
だが「激戦」ではなく「大惨事」だった。
斬撃 → 市場炎上
ヴェルドラ → ラーメン屋をかばいながら「俺まだ注文してないんだぞ!!」
護衛魔族 → デグラムの翼のトゲに自爆
溶岩竜 → 通りすがりに全員轢く
ヴェルドラ、竜の上で大笑い。
「WOOOOHOOO!! これが俺の理想の休暇!!」
デグラム(半分炭化):「貴様……怪物か道化か……?」
「両方ってことで。」
魔族全員、同時に顔を押さえる。
---
ヴェルドラはそのまま《原初魔族の本拠地》へ向かった。
紫水晶の大地に足を降ろすと、空間そのものが震えるほどの重圧が降り注ぐ。
「うお、雰囲気ガチだな。」
そこに八体の魔族が現れた。
アゼロス、レインジュ、カイド、ムレイ、ゾルレン、イクロ、ザズル、ヴェルグリン。
その一歩で次元が揺れるほどの覇気。
だがヴェルドラは、まるで友達に会ったかのように軽く手を振る。
レインジュが静かに問う。
「――この拠点を壊したのは、お前か。」
「まぁ……たぶん?
いや違う、事故。完全に事故。」
「ならば、修復してみせろ。後悔があるのなら。」
ヴェルドラは指を鳴らす。
蒼い光が奔り――BRUUM――
拠点は元通りどころか、以前より荘厳に。
カイドが驚愕しつつ尋ねる。
「お前……何者だ?」
「俺? ただの旅を楽しんでる小さな竜さ。」
アゼロスが立ちはだかる。
「礼をさせろ。望むものを言え。」
ヴェルドラは少し考えて――
「飯。」
……
そして、豪華な魔族料理の大宴会が開かれた。
ヴェルドラは涙を流しながら食べまくる。
「ウマッ……これはヤバい……! お前ら最高かよ!!」
アゼロスは小さく笑う。
「奇妙な奴だ。だが嫌いではない。」
宴のあと、ヴェルドラは頭を下げた。
「ご馳走。恩は返す。またな。」
彼が去った直後――
地響き。
黒き八つの影が空を覆う。
二つの勢力が対峙し、世界そのものが震える。
レインジュが低く呟く。
「……あの竜は、嵐を連れていったな。」
時々、人生はヴェルドラみたいに、思わず周りを巻き込んで大騒ぎになってしまうことがある。
でも、大切なのは「失敗を恐れず、きちんと向き合って直そうとすること」だ。
そこから出会いも、学びも、そして……運が良ければ、美味しいご馳走も手に入るかもしれない。




