26.新しい世界での新しい友達
漆黒の雨が、コトラートの暗い森に容赦なく降り注ぐ。濡れた土の匂いと、遠くに見える黒い街からの鉄と煤の香りが混ざり合う。歪んだ木々の陰で、薄い影が煙のように素早く動き回っていた。
それはザラビス。
あるいは、この世界での新しい異名……。
異形の魔人。
彼は音もなく宙を漂い、その姿は悪夢から絞り出された黒い霧のように曖昧だ。悪魔の翼が雨に濡れながらも静かに羽ばたき、稲妻の光を反射する。黒曜石の色をした魔杖が、右手に握られている。
「私は探している……まだ諦めていない者たちを」
赤紫に輝く瞳が、生きたレーダーのように森を走査する。一瞬で、コトラートの街全体をスキャンした。そして次の瞬間、彼は何かを捉えた。
恐怖。
絶望。
そして、嵐に飲み込まれそうな、か細い叫び。
ザラビスは空中で静止し、瞳を細めた。
「……誰かいる」
彼は一瞬で姿を消した。
少女の抵抗
インクよりも濃い闇の中に、一人の少女がよろめきながら走っていた。息は乱れ、長く茶色い髪が濡れて顔に張り付いている。粗末な服は葉や棘で破れ、今にも切れそうな小さな袋を握る手が震えていた。
彼女の名前はソーニャ・ルアタ。
年は17歳くらいだろうか。かつて輝いていた緑色の瞳には、今は恐怖だけが宿っている。
背後からは、荒々しい足音が聞こえてくる。
「早く捕まえろ!」
「俺が先だ! こいつは俺のものだ!」
「黙れ! 逃がさなければいいんだ!」
ソーニャはますますパニックになり、残された力を振り絞って走り続けた。胸が苦しい。コトラートの世界が決して慈悲深くはないことを知っている。捕まったら……。
彼女は唇を噛み締めた。
「嫌だ……もう嫌……助けて……」
しかし、体がふらつく。
つまずいて、濡れた地面に倒れてしまった。膝から血が滲む。立ち上がりたいのに、足が動かない。
悪漢たちが、下品な笑みを浮かべながら近づいてくる。
「やっと捕まえたぞ……」
「この世界はお前みたいな玩具にはちょうどいい場所だ」
ソーニャは目を閉じた。彼らの手が、もうすぐそこに迫っている。
その時——
B R R R A A A A A A H H H H
黒い風が、暗い流星のように空から降り注いだ。大地が震え、木々は押し潰されるように身を屈める。
そのオーラはあまりにも濃密で冷たく、一瞬だけ雨粒が止んだ。
悪漢たちは凍り付いた。
ソーニャはゆっくりと目を開け……そして、すぐに身を震わせた。
目の前で、黒い霧が渦を巻き、人影を形作る。
その瞳から放たれる光は、濃い赤色……まるで地獄から来た二つの小さな月のようだ。
異形の魔人が、そこにいた。
圧倒的な威圧感
悪漢たちは、その場に崩れ落ちた。
「な、なんだあれは!?」
「あれは悪魔か!? 本物か!?」
「俺たちは終わりだ……終わりだ……」
ソーニャもまた、身動きが取れない。体が制御不能なほど震えている。恐怖以外の言葉が見つからない。本能が警告する。見るな……動くな……息をするな……。
ザラビスは心の中で静かにため息をついた。
(え? マジ? ただこいつらを懲らしめて、お前を助けたいだけなんだけど……)
(俺のオーラがまだ強すぎるのか……? はぁ……出力を下げてみるか……)
彼は力の強度を下げた。黒いオーラが少し弱まる。雨が再び降り始める。
しかし……それでも、普通の人にとっては恐ろしい存在だ。
悪魔の声
ザラビスは一歩前に出た。
足取りは軽いのに、足を踏み出すたびに地面が砕ける。杖からは黒い煙が立ち上る。彼は自分の声で話さず、魂を揺さぶるような、深く重い悪魔の響きに変えている。
「見ろ」
その声は、地獄の扉が開く音のようだった。
悪漢たちは抵抗するが、逆らえない。何かに強制されるように、彼らの頭はザラビスの目に向かって持ち上げられる。
悪魔の目は回転し……中心に赤い点がある黒い円の模様を作り出す。
(ふむ……目から新しい力を生み出すか、面白いな……)
(よし、この世界全体への恒久的な経路を作る……地獄のポータルの点……完了。何と名付けようか?)
(……まあ、それは後でいいか。この娘に名付けさせよう)
ザラビスは杖を持ち上げた。
「入れ。
我が地獄へ」
悪漢たちの足元に、黒い穴が開いた。
彼らの叫びは、底なしの暗闇に落ちていく体と共に、瞬く間に飲み込まれた。
3秒後……すべてが消え去った。
残ったのは、雨だけだった。
生き残った少女
ソーニャは目を見開き、その光景を見つめていた。息が途切れ途切れになっている。叫びたいのに、声が出ない。
ザラビスは体を向けた。
その瞳は優しく光っている。彼はオーラをさらに小さく、より繊細に、ほとんど人間のようにまで下げた。
「私はお前の敵ではない」と彼は言った。
声は少しだけ柔らかくしたが、それでも悪魔のように聞こえる。
ソーニャはびくりと身を震わせ、ゆっくりと後ずさった。
「た、助けて……お願い……私を傷つけないで……」
ザラビスは驚いた。
(は? ただ助けたいだけなのに!)
(はぁ。俺の悪魔の顔が深刻すぎるのか)
彼はすぐに
咳払いをした。
コホン。
「ごめんね……顔がこういう顔なもので」
ソーニャは、悪魔が……
咳をしたことに驚いた。
まるで人間のように。
「え……?」
ザラビスは両手を上げ、友好的に見せようとした(姿は相変わらず恐ろしいが)。
「私の名前は……うーん……ああそうだ。この世界では、異形の魔人と呼ばれている」
「ど、どこから……来たの……?」
ソーニャは震える声で尋ねた。
ザラビスは即興で答えた。
「生まれた場所? ええと……北。とても北。世界の果て。
年齢? 5万歳。
ああ、5万歳だ」
(実際にはもっと若いのに)
ソーニャはまだ怯えている……しかし、その恐怖は徐々に薄れていく。
彼女は小さく口を開いた。
「わ、私は……ソーニャ……ソーニャ・ルアタ……」
「知っている」とザラビスはさりげなく答えた。
ソーニャはすぐに「ひ、えっ!?」と声を上げた。
新たな絆
ソーニャは深呼吸をし、話そうとするが、声が震える。
「あ、ありがとう……そして……」
ザラビスは身を乗り出した。
「そして?」
ソーニャは唇を噛み締めた。
「わ、私は……友達になりたい……いいですか……?」
ザラビスはフリーズした。
心の中で。
(友達!? マジ!? 悪魔と友達になりたい人間がいるのか!?)
(マジかよ!!)
彼は手を差し出し、満面の笑みを浮かべた——悪魔のサイズにしては幸せすぎる笑顔だ。
ソーニャは驚いた。
しかし、最終的にはその手を握り、泣き出した。
ザラビスは慌てた。
「え、え! 泣かないで! 最初の出会いで泣くと……最後の出会いで泣けなくなるぞ」
ソーニャはハッとした。
「さ、最後の出会い……?」
「いつか分かる時が来る……」
彼はウインクをした。
「だから、今は泣かないで」
ソーニャは黙り込み……そして、ゆっくりと頷いた。
新しい力の名前
ザラビスは自分の目を指さした。
「そういえば、さっき新しい力を作ったんだ。名前を付けてくれないか?」
ソーニャはすぐに躊躇なく答えた。
「え、えええ?……ど、どうして私が?」
ザラビスはすぐに理由を答えた。
「それは、お前がまだ生き残っているからだ……そして、お前こそが、私が最初に見て、助けたいと思った者だからだ……そして、この力はお前に与えるものだから、遠慮なく名前を付けてくれ」
ソーニャは一瞬黙った。
「……助けたい……の?……そ、それなら、ヘル・アイズはどうかな……?」
(恥ずかしそうに頭を掻きながら)
ザラビスはしばらく目を閉じて黙り込み、目を開けた。
「フム……それはとても良い!」
(親指を立てながら)
ザラビスは再び話し始めた。
「なあ、ソーニャ。もしお前がこの力を欲しければ、もっと親しくなれるように名前を付けてくれ……どうだ?」
ソーニャはすぐに笑顔になった。
「もし、あなたの異名が異形の魔人なら、あなたの名前はサタンはどうかな? へへ……」
ザラビスは2秒間黙った。
「……え?」
ソーニャは慌てて付け加えた。
「それは、私がよく読む小説に出てくる魔王の名前……私の鞄の中にある」
沈黙……
そして——
「最高だ、ソーニャ!!」
ザラビスは翼を震わせながら大声で笑った。ソーニャも少し恥ずかしそうに頭を掻きながら、一緒に笑った。
約束
ソーニャは見上げた。
「サ、サタン……あなたは……ずっと友達でいてくれる? わ、私は一人ぼっちが怖い……」
ザラビスは待たなかった。
「もちろんだ。俺に何になってほしい?」
「お、お兄ちゃん……?」
「いいぞ」
「ほ、保護者……?」
「いいぞ」
「親友……?」
「いいぞ」
ザラビスは胸を叩いた。
「俺は何にでもなれる。俺が剣になる? お前の影になる? それとも、忍者のようにいつもお前の後ろにいる悪魔になる?」
ソーニャはまた笑い出した。
ザラビスは小さく微笑んだ。
(嬉しいな。人間との友達って……楽しいんだな)
そして、ソーニャに手を差し伸べた。
「行こう、ソーニャ。
俺はお前の剣になる。
だが、お前は訓練しなければならない」
ソーニャは熱意を込めて頷いた。
「うん! もちろん、タン!」
ザラビスはニヤリと笑った。
新たな、楽しい旅が……今始まった。




