18.ミーティング
翌日、零士にとっては何の変哲もない一日だった。授業、訓練、昼食。すべてが淡々と過ぎていき、彼の心に触れるものは何もなかった。彼はまだ力を抑え、自我を隠し、すべてを普通に見せようとしていた。
美遥はいつものように、おしゃべりをやめない。
「お兄ちゃん、今夜は一緒に練習するのを忘れないでね!新しい技を試したいんだ」
「ああ、わかった」と零士は気のない返事をした。
二人は桜神学園の門をくぐった。校庭にはまだ多くの生徒がいた。昨日、零士を笑った何人かの生徒は、まだ彼を「あの時のやつだ」という目で見ていた。零士は気にしなかった。まるでその嘲笑は、石に触れた露のように、感じる間もなく消えてしまうかのようだった。
道の反対側、門の前に、白い髪の少女が立っていた。
彼女は近づかない。
挨拶もしない。
ただ立っている。まるで彼女の周りの世界が静止しているかのようだった。
黒咲澪。
能登木学園の生徒たちが彼女のそばを通り過ぎる。一部の者は彼女を見るが、ほとんどは無視する。しかし、彼女は動かない。彼女の視線は一点、零士に向けられている。
零士はそれに気づいた。
一瞬、彼らの目が合った。
恋の眼差しではない。
映画のような劇的な運命の眼差しでもない。
ただ、お互いの存在を確認し合っているだけだ。
零士は少し眉をひそめ、不思議に思った。
誰だ?さっきから俺を見ているのか?
美遥も気づいた。
「え?お兄ちゃん、誰かが見てるよ」
彼女の声には好奇心と面白さが混じっていた。
零士は再び目をやった。澪は視線をそらさない。
しかし、彼女の表情には感情が見られない。ただ、静寂があるだけだ。
美遥は明るく手を振った。
「こんにちは!」
澪は答えなかった。
振り返りもしない。
ただ、少しうなずいた。恥ずかしいからではなく、心の中で何かを確かめているかのようだった。
そして、彼女は振り返り、歩き去った。
言葉もなく。
音もなく。
零士は肩をすくめた。
「彼女は話したい人じゃない。見ればわかる」
「…うん」と美遥はつぶやいた。「でも、目つきが違う」
零士は答えなかった。
彼もそれを感じていたからだ。
その眼差しには何かがあった。
恐怖ではない。
憧憬でもない。
もっと…
「私はあなたの本当の姿を知りたい」
夜の街角
澪は人気のない古いバス停に座っていた。
左手には小さなシャーペン。
膝の上には、表紙が色あせた薄いノート。
彼女は一行書いた。
「零士。赤い目。異常。カラコンではない。もっと調べる」
彼女の手が止まる。
彼女はそのページを見つめた。
静かに。
そして、もう一つの小さな文がゆっくりと書かれた。まるで彼女自身にしか聞こえない囁きのように。
「なぜ私は知りたいのだろう?」
答えはない。
しかしその夜、優しい風が通り過ぎた。
まるでこの街が、誰の計画にもなかった二つの人生の線を、密かに歩む運命だけが計画した出会いを準備しているかのようだった。
夜のコンビニ
零士は小さな寮の部屋を出た。
理由は単純。お腹が空いたからだ。
彼は食べ物を必要としない。「人間」の体はそれなしでも生きられる。
しかし…彼は味を感じたかった。
何かシンプルなものを。何か普通のものを。
空は暗く、空気は少し冷たい。
道沿いの街灯は、電子ホタルのように物悲しく輝いている。
角のコンビニはまだ開いている。
零士がドアを押すと、ガラス戸が軽く音を立てた。
チーン…
静かな雰囲気。
エアコンの音がかすかに響き、元気のないポップソングが静かに流れているだけだ。
零士は鮭のおにぎりと冷たい飲み物を一つ取った。
奇妙だ。シンプルだ。しかし、なぜか…楽しい。
レジに向かう途中、彼は初めて気づいた。
そこに誰かいる。
黒咲澪だ。
彼女は飲み物の棚の前に立ち、チョコレートミルクを持っている。
黒い髪は背中まで伸び、夜風に少し乱れている。
青白い黒い瞳は空虚に見えるが、死んだような空虚さではなく、考えすぎている空虚さだ。
彼女は零士を見た。
少し驚き、少しぎこちないが、目をそらさない。
まるで彼女がここで彼を待っていたかのようだ。
零士は無表情でおにぎりを少し持ち上げた。
「私は…ただ通りかかっただけだ」
最も平凡な答え。
もしかしたら少し馬鹿げているかもしれない。
澪は少しうなずいた。恥ずかしいからではなく、言葉を選んでいるからだ(澪はもっとうまく返す方法を知らない)。
「…知ってる」と彼女は静かに言った。
会話は再び途絶えた。
気まずくはない沈黙。ただ、空虚なだけだ。
しかし、中身のある空虚さだ。
零士が先に口を開いた。
「昨日、あなたは私を見ていた」
澪はすぐにドキッとしたが、否定しなかった。
「私は気になった」
彼女の声は静かだが、正直だ。
「なぜ?」
「…目」
彼女の答えはそれだけだった。
零士はまばたきをした。
彼は一瞬、赤い目が彼にとっては普通のことだと忘れていた。
しかし、この世界では、それは奇妙なことだ。
彼は正直に答えそうになった。
もう少しで。
しかし、彼はシンプルな言葉を選んだ。
「遺伝だ」
なぜか彼は心の中で小さく笑いをこらえながらそう言った。
澪はただうなずいた。信じてもいないし、反論もしていない。
彼女はただ、頭の中に新しいメモを書く人のように、その答えを受け入れた。
二人がレジに向かうと、眠そうなレジ係が交互に彼らを見た。
黒い髪に赤い目の零士。
黒い髪に黒い目の澪。
同じ世界から来たとは思えない二人だが、澪の心の中では、彼女は恐れていて、ぎこちない思いをしていた。しかし、彼女はそれを表情で隠していた。
彼らがコンビニを出ると、夜の空気ははるかに冷たくなっていた。
澪が先に口を開いた。短い言葉だが、重い。
「…もし私が何か他のことを尋ねたら…あなたは答えてくれますか?」
零士は彼女を見ていない。
彼の目は空っぽの暗い空を見つめている。
「…質問による」
彼の答えは中立的だが、拒否ではない。
澪は小さくうなずいた。
「わかりました。ごめんなさい」
彼女はゆっくりと歩き去った。
振り返らず。
強要せず。
零士は彼女の背中が遠ざかるのを見ていた。
心の中で、一つの考えが浮かんだ。
まっすぐで、平坦だが、本物だ。
「この人間…一体何なんだ?」




