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17.高い好奇心

桜神学園異聞


昼下がりの空は晴れ渡っていたが、吹き抜ける風は桜神学園の体力錬成場から立ち上る熱気を運んできた。今日はクラス対抗の基礎体力測定の日。レンジは異能クラスG組、ミジャルンは女子錬成クラスG組で、それぞれの場所で訓練に励んでいた。


レンジ、いや、正確には人間に擬態したザラビスは、最初の測定器具である赤いサンドバッグの前に立っていた。それは重く、分厚く、並の生徒では数発殴った程度ではびくともしない代物だ。レンジは小さく息を吐いた。「加減しないと」と心の中で呟く。拳を振り上げる……が、どこかぎこちない。その瞬間、ドォン!


赤いサンドバッグは、まるで濡れた紙を石で打ち砕いたかのように、粉々に爆ぜた。


その光景を目撃した者たちは、一様に言葉を失った。数人がぎこちなく拍手を送る。担任教師に至っては、褒めるべきか、それともパニックになるべきか判断しかねている様子だった。


レンジは薄く笑みを浮かべた。「あ……すみません、ちょっとやりすぎました」と軽く謝罪した。


続いて、はるかに強度が高く、上級生向けに設計された鉄製のサンドバッグの番が来た。


(少し本気を出せば、これも壊れてしまうだろう。かといって、弱すぎても目立つ。うーむ……よし、仮病を使うか……)


レンジは力を半分以下に抑え、鉄のサンドバッグに拳を叩きつけた。


カキン!


彼は即座にうめき声を上げ、痛みを誇張して手を振った。実際には痛みなど微塵も感じていないのだが。


「う、うぐっ……! い、痛てて……! こ、硬すぎるだろ!」


数人の生徒が吹き出した。


「マジかよ? 赤は一撃で粉砕したのに、これはダメなのか? なんだ、最初の勢いはったりか?」


「ハハ、ざまあ!」


ミジャルンのクラスでは、その笑い声が聞こえてきた。


「はぁ……」


ミジャルンは腕を組み、呆れたように呟いた。


「お兄ちゃん、楽しそうね……ふふ」


レンジは聞こえないふりをしながら、まだ痛そうに手を振り続けている。


生徒たちが笑い転げる中、その喧騒とは異なる視線が一つだけ存在した。


一人の少女。黒髪のロングヘア、無表情な顔、冷たい眼差し。


彼女はただ静かに観察しており、嘲笑に加わることはなかった。


その瞳は、何かを問いかけているようだった。


試験終了、上級生アリーナへ


体力測定が終わり、レンジとミジャルンは隣の arena へと足を運んだ。そこでは、Bクラスの上級生たちが訓練に励んでいる。


アリーナの中央では、ユカが長い木刀を手に立っていた。しかし、その木刀はどこか異質だった。まるで神聖な空気の流れが周囲を包み込んでいるかのように、微かな光を放っている。


「見て、ユカ先輩がソロで訓練してる」ミジャルンは目を輝かせた。


ユカの前に、一人の男子上級生が軽量の鋼製練習刀を構えて立っている。模擬戦が開始された。


ユカは滑らかだが、鋭い足取りで、まるで進むべき方向を知っている風のように移動する。対戦相手が先に攻撃を仕掛けたが、ユカは足を踏み込み、完璧な体重移動で体をかわし、


シュイン!


木刀が輝いた。


まるで、彼女の心臓から剣先へと温かいエネルギーが流れ込んでいるかのようだ。


技名:神聖の光(しんせい の ひかり)――己を信じる者の内に宿る光。


クラック!


対戦相手の刀が弾き飛ばされた。


ユカの次のステップは、相手を傷つけることなく、動きを封じ込めることだった。


クリーンで、エレガントな勝利。


観客から拍手が沸き起こった。


ミジャルン「わー! ユカ先輩、かっこいい!」


レンジは軽く手を叩いただけで、表情は変わらない。


しかし、その瞳は……ほんの少し温かかった。まるで、ユカがユカのままでいてくれたことに安堵しているかのようだった。


先ほどの女子生徒


あの少女は、学園の生徒ではなかった。彼女は、街で最も荒れていると評判の私立ノトキ高校の生徒だった。


名前:黒崎 澪(くろさき みお・17歳)


物静かで、冷たく、友達は少ない。


彼女はトラブルを起こすタイプではないが、世界は彼女に優しくなかった。


放課後、彼女は質素な自室に座っていた。


ノートパソコンを開く。インターネットを開く。


「レンジ」


彼女はその名前を何度も何度も入力した。


記事、フォーラム、SNS、学校のアーカイブ……あらゆる情報を探し求めた。


彼女の表情は依然として無表情だった……


しかし、その瞳には何かが宿っていた。それは、言葉では言い表せないほどの強い好奇心だった。


「……目が赤い」


彼女は静かに呟いた。


この世界では、赤い目は不自然だ。


カラーコンタクトなしではありえない。


あるいは……


「義眼? それとも……何か別のもの?」


澪は鉛筆の先を噛んだ。


彼女は会ってみたいと思った。


恋ではない。


憧憬でもない。


ただ、胸を刺すような好奇心から。


たとえ、彼と会話を始めるきっかけなど、一つもないと分かっていても……


しかし、彼女の中の何かが囁いていた。


「私は、彼が何者なのか知りたい」


そしてその夜、澪は瞬きもせずにパソコンの画面を見つめ続けた。


まるで、名前だけでなく……


……真実を探し求めているかのように。

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