10.彫像、彫像、そして大きな問題
魔境鉄の城ヴァウ王国
空は昏い赤に染まり、蝙蝠の羽音と魔族の哄笑が空気を震わせる。その正門に、旅装に身を包んだ二つの影がひっそりと侵入した。
レイジ(別名ザラビス)は静かに歩を進め、妹のミジャルンは巨大な門を前に、緊張しながらもどこか…滑稽なほどに狼狽していた。
ミジャルン「お兄ちゃん…本当に正面突破するの? 門番、あんなに大きいのに…」
レイジ「大丈夫。絶対に失敗しない作戦がある」
ミジャルン「お兄ちゃんの『絶対に失敗しない作戦』って、いつも死にかける羽目になるんだけど」
ミジャルンが抗議する間もなく、ドガーン! レイジはうっかりヴァウ魔王の巨大な像にぶつかってしまった。像は傾き、軋み、そして…バラバラバラ! 崩れ落ちて真っ二つになった。
ミジャルン(ヒステリックな囁き声)「お兄ちゃん!!! あれ魔王様の像…」
レイジ「しーっ!! 分かってる! 落ち着け!! 考えがある!」
レイジはパニックになりながらも(どういうわけか)冷静さを保ち、集中して自分自身を先ほどのヴァウ像と寸分違わぬ姿に変えた。
レイジ(石像)「ミジャルン! 早く石像になって誤魔化すぞ!」
ミジャルン「え!? 何の石像よ!? 何になればいいのよ!!」
レイジ「ええと…俺の背中の猫の像だ! 早く!!」
ミジャルン「猫!? マジ!? もういいや、ミャーオ!」
次の瞬間、ミジャルンはレイジの背中に乗った小さな猫の石像になった。その時、門番たちが駆け寄ってきた!
門番1「今の音は何だ?」
門番2「ヴァウ様の像が倒れただけだろう…変だな、以前は背中に猫なんていなかったはずだが」
門番1「ああ、新しいデザインかもしれない。ヴァウ様はそういうことをする」
門番たちは去っていった。彼らの足音が遠ざかると、レイジはすぐに元の姿に戻り、大きく息をついた。ミジャルンは草むらに転がり落ちた。
ミジャルン「お兄ちゃん! 今度からは普通の探知機を使ってよ! あんな奇抜なアイデアはもう勘弁!」
レイジ「だって、俺たちは超能力を持った普通の人間になりたいんじゃないか?」
ミジャルン「そうだけど…『普通』って石像になることじゃないでしょ…」
二人は旅を続け、王国の侵入方法を探し、そして、城の下に続く長いトンネルを見つけた。彼らはためらうことなく、その中に飛び込んだ。
ミジャルンは得意げに、もっともらしい理屈を並べ始めた。
ミジャルン「数学的に考えると、このトンネルは王国の重力ゼロ地点に繋がっているから、地下基地はきっと…」
レイジ「いいから、入ろうぜ」
ミジャルン「お兄ちゃん!! これから論理的に説明しようとしてたのに!」
しかし、レイジはすでに先を急ぎ、そして…ドスン! 暗闇の中で石壁にぶつかった。
ミジャルンは口を覆い、必死に笑いをこらえた。
レイジ(小声)「聞こえてるぞ、ミジャルン」
ミジャルン(笑いをこらえ、可愛い声で)「聞こえてないよ…へへへ…」
やがてレイジは手のひらの光で即席の照明を作った。
明かりを灯すと、彼らは地面に落ちているものに気が付いた。それは、折れた魔族の角だった。
レイジ「これは…スウルタの角だ」
ミジャルン「お兄ちゃん…彼女もここに連れてこられたってこと?」
しかし、それ以上考える間もなく、背後から重い足音が聞こえてきた。
レイジはすぐに明かりを消し、ミジャルンを壁際に引き寄せた。
レイジ「静かに」
ミジャルン(震える声で)「お兄ちゃん…二人いる」
................
闇の中から、フクロン魔将軍と、鎖に繋がれた紫色の角を持つ魔族が現れた。
レイジは目を細めた。ただの囚人ではない。
その女魔族の顔は傷だらけだったが、そのオーラは強烈だった。
ミジャルン(怒り、囁き声)「あんなに強い魔族を…酷い!」
レイジ「ミジャルン、我慢しろ…」
................
しかし、ミジャルンの小さな怒りの声は、わずかに漏れてしまった。
フクロンはゆっくりと振り返り、目を細め、紫色の光を放つランタンを持ち上げた…
エピソードはクリフハンガーで終了:
ランタンの光が、レイジとミジャルンが隠れている影にゆっくりと近づいてくる…
続く…
まだまだ続く!
地下トンネルは静まり返り、自分の呼吸さえ轟音のように聞こえるほどだった。湿った壁は、レイジが作った微かなエネルギーライトの光を吸い込んでいく。
フクロン魔将軍の重い足音と、石の床を鎖が引きずられる音がゆっくりと響き渡る。
レイジは影から見つめ、瞳は暗い青色に輝いていた。
ミジャルンは息を殺し、レイジの手はいつでも戦えるように固く握られている。
フクロン(嗄れた重い声で)
「出てこい…貴様らのオーラは嗅ぎ取れる。お前たちはヴァウの軍勢ではないな」
レイジは影の中で小さく笑った。
レイジ「ふむ、鼻が利く。だが残念、見当違いだ」
(一歩踏み出す。彼の影は壁に伸び、冠を戴く悪魔のようだ)
「俺の名はレイジ」
(冷たい笑み)
「あるいは…超人、とでも呼ぶか。悪夢を現実にする名の方がお好みならな」
フクロンは目を細め、合図もなしに爆発的に突進してきた。
彼の巨大な拳が空気を叩き割り、床を砕く。レイジはほとんど見えないほどの速さで後方に飛び退き、軽やかに着地すると同時に宙返りをした。
ミジャルン(小さな悲鳴)「お兄ちゃん! 私はあの魔族を連れて逃げる!」
レイジ(振り返らず)「早く行け。このクソ野郎は俺が片付ける」
ミジャルンはまだ混乱している二本角の女魔族を引きずって逃げ出した。女魔族の目は虚ろで、連れ去られる間もぼんやりとしているだけだった。
トンネルには、金属が岩にぶつかる音、そして風を切る音が響き渡る。
闇の中の戦い
レイジは石柱の間を飛び回り、フクロンの爆発的な攻撃をかわしていく。魔族の一撃一撃が、床にクレーターのような跡を残していく。
フクロン「貴様…ただの人間ではないな…」
レイジ「俺は超人…シンプルなバージョンだ」
フクロンは咆哮し、体が膨れ上がり、背中から紫色の煙を噴き出す棘だらけの魔の手が現れた。
一本の手がレイジを左から薙ぎ払うが、レイジは消えていた。一瞬後、彼はフクロンの背後に現れ、肘で首筋を打ち付けた。ドスン! 魔族はよろめいた。
レイジは素早く回転し、宙返りをしてフクロンの顔を蹴り上げたが、棘だらけの手がそれを防ぎ、棘が鋭い音を立てて空気を切り裂いた。
レイジは軽やかに着地し、まるで練習でもしているかのように、呼吸は穏やかだった。
レイジ「その手、騒がしいな」
フクロン「ふん、生意気な!」
フクロンは再び攻撃を仕掛けた。今度は地下から、彼の腕が素早く地面を掘り進み、レイジの真下から現れた。
しかし、レイジはすでに察知していた。彼は真っ直ぐな一撃を叩き込んだ。
ドォン!
金属が砕けるような音が響いた。
フクロンは自分の手を見つめた…内側から砕け散り、棘だらけの指先から黒い血が滴り落ちている。
彼の体は壁に叩きつけられた。
フクロン「貴様…一体何者だ…?」
レイジ(冷たい笑み)「大きな問題の、軽いバージョンだ」
レイジはゆっくりと歩み寄り、床に落ちているスウルタの折れた角を拾い上げた。
彼の腕が輝き、ミジャルンに思考を繋げた。
レイジ(テレパシー)「ミジャルン、どこにいる?」
ミジャルン(思考の中で)「森の中だよ、お兄ちゃん! 王国の近くの大きな木の下!」
レイジは頷き、瓦礫の中から飛び出した。しかし、地下トンネルから出ると同時に、
数百人もの魔族の兵士が四方から彼を取り囲んでいた。
「地獄を映す笑顔」
空気が重くなる。兵士たちはエネルギー槍と封印魔法を構えた。
レイジはただ静かに、目を暗くし…そして微笑んだ。
それは笑いではなく、微笑むはずのない何かが微笑んでいるような、そんな笑顔だった。
そして世界は一瞬、停止した。
先ほどまで叫んでいた兵士たちは青ざめた。
一人、また一人と、彼らは震え、泣き、理由も分からずヒステリックに叫び始めた。
兵士1「た、助けてくれ…その笑顔を止めてくれ…」
兵士2「あ、俺は…俺は彼の目に地獄を見た!!」
兵士3(大声で泣き叫ぶ)「地獄の神様、お許しください!!!」
レイジのオーラが四方八方に広がり、空気を歪ませる。
彼の影は巨大な翼のように広がり、一瞬、ザラビス、地獄の魔王の姿がぼんやりと見えた。炎の目、虚無の闇の角、そして光を飲み込む暗黒のシルエット。
全ての兵士が同時に気絶した。
残されたのは、風の音だけだった。
レイジは笑顔を消し、ため息をついた。
レイジ「ふむ。少しやりすぎたか」
彼はテレポートし、魔族の王国を後にした。今はただ、静寂が残るのみ。
大森林にて
ミジャルンは大きな木の下に座り、二本角の女魔族が気絶しているのを見てパニックになっていた。
ミジャルン「お兄ちゃん! どうして気絶してるの!? まさか、さっきのお兄ちゃんのオーラのせい!?
レイジ(頭を掻きながら)「多分…そうかも」
ミジャルン「多分って!? お兄ちゃんのオーラは地獄の嵐みたいなものなんだよ!? 今頃、王国の人みんな気絶してるよ!」
レイジ(ぼんやり)「ああ…そうなのか。五日もすれば起きるから、大丈夫だよ」
ミジャルン(呆れ顔でため息をつく)「お兄ちゃんは本当にそそっかしいんだから」
レイジ(少しの間沈黙)「…また、普通の超人になるのに失敗したみたいだ」
ミジャルンは半ば諦め、半ば呆れた顔で兄を見つめることしかできなかった。
レイジは木の下に横になった。
レイジ(心の中で)「…でも、みんな気絶しているなら、アシアを邪魔されずに助けるチャンスじゃないか?」
(少しの間沈黙、そして小さく微笑む)
「でも、戦いがないのは…つまらないな」
彼は目を閉じ、眠っているふりをした。
かすかな鼾が聞こえてくるが、ミジャルンはそれが作り物だと分かっていた。
ミジャルン(兄を見つめながら、小声で)「お兄ちゃん…時々忘れちゃうんだ。お兄ちゃんの言う『普通』は、『クレイジーだけどクール』って意味だって」
夜の風が優しく吹く。
そして、星空の下、レイジことザラビスの影は、まるで安らかに眠っているように見えた…実際には、彼の思考はすでに次の戦場へと向かっていた。
沈黙は弱さの証ではなく…強さが爆発寸前である時です。
読者の皆さん、こんにちは。あなたはこの物語の単なる目撃者ではありません。いつか天を揺るがす小さな炎なのです!




