①-8
あ、あうあう……と真っ赤な顔でためらう俺を見て、
都さんが噴き出した。
「瞬くん、冗談よ~。妹になるって子と、キスなんかできるわけないものねぇ」
「……」
呆然とする俺に向かって、「ねっ!」とたたみかけてくる都さん。
なんか、目が血走った真顔で言われると……超怖いんですけど!
これは、いわゆる牽制ってやつかもしれない。
杏奈は性格はどうあれ、かなりの美少女。これまでもいろんな男が寄ってきただろう。
中にはニュースになるような…ロリがつく危ない奴も。
都さんは、俺がそういう奴かどうか、いま判断しているところなのだろう。
明日から、年頃の男女がひとつ屋根の下。
心配しない親なんていない。
間違いが起こらないように、きっと見張るつもりなのだ。
おっとりしているようで、案外しっかりしている女性だな、都さんって。
でも安心してくれ。俺は教師志望だ。
第一、そんなロリコン趣味はない!(はずだ)
都さんにそう言ってあげようかと思ったが、あんまり必死になるのも、疑われそうな気がしてやめた。
まずは行動で示すのみ。杏奈に、妹以上の感情なんて抱いてないですよ。
……もし仮に、洗面所で杏奈と2人でいるところを見られたとしても
安心してください。
履いてますよ。(ニカッ!)
ぐらいは言ってやりたいものだ。。。
杏奈は、母親と俺のそんなやりとりを見ることもなく、どこ吹く風で、再びケーキを飲み干している。
都さんには悪いけど俺だって好みがあるんだ。
こんな……ガキは相手にしてられない。
そもそも杏奈は何歳になるんだ?
俺の心の声が聞こえたのか、まぐれなのか、
杏奈は「来年から高1。学校は静蘭に通ってる」とぶっきらぼうに答える。
静蘭ってあの……
敷地内に明治時代の教会があるっていう、超お嬢様学校か?
確か幼稚園から大学まで一貫教育だっていっていたな。俺の大学にも高校がソコだって子がいたっけ。
ん?まてよ、静蘭っていったら、俺の大学のすぐ近くじゃないかっ!!
席を立ちあがり、隣の杏奈を上から見下ろした、驚愕のまなざしで。
「あ?」
カップを両手持ちして、ズズズ…とすすっていた杏奈が頭上の俺を見上げる。
「一緒に通うとか、勘弁だからな」
だんまりを決め込む杏奈。カップをテーブルに置き、お得意の髪いじりをはじめた。下を向くその表情からは、感情が読み取れない。
「瞬くん、けっこう冷たいんだなあ……せっかく近いんだから、一緒に行ってあげなさいよ。お兄さんじゃないか」
親父が心底悲しそうにつぶやく。
親父にそういわれても……こんな美少女と毎朝通う俺の気持ちにもなってみろ!
ぜったいぜったい噂になる!!
あの……ぐりぐらの片割れがとか言われる!
「「貢いでんだぜ、あれ。いったいいくら積むと、付き合えるんだよ!」」
「「えー持田くんって、ロリ趣味なんだあ……しかも静蘭って…ひくわっ!」」
「「あいつが教師になるのか? あの……ロリ野郎が……」」
ざわわ…ざわわ……
幻聴が聞こえてきた……。目の前が暗転するような…まさしく血の気がひくような。




