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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
⑧静蘭と闇闇ガールズ
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⑧-9

ジャケットを脱いだ飯村さん。


暑い日なんかには見なれた姿だったのだが、

こうして心細げに1人で立つと印象が違って見える。

スタイルだって、もともと悪くはないのだ。むしろ…ぼんきゅっぼんで…。

ももてぃんとも、争えるくらい。

まあ、おれはももてぃんの方が、ふっくらもふもふで好みだけどね。


飯村さんは、アイドルだよ!と言われても何の違和感もない…。

顔も…いつも伏し目がちなのを止めて、少し化粧を変えたりすれば

化けるかもしれない。


と、俺は全身を見まわした後、胸元から目が離せなくなった。


…うむ。白いブラウスのボタンが小さく見える。


はちきれそうなの!胸が!

そういうときって、ボタンが小さく見えるよね? ね?


俺はゴクンと喉を鳴らした。


飯村さんがその音に気づいたように、俺を見る。

依然として声は出せないものの、俺は(やめて)と首をぷるぷると横に振ることはできる。


飯村さんは、切なそうに目を細めると俺に向かって何かをつぶやく。


おちょぼ口になってから、イーと口を横に広げる。


(…う?…き?  …うき? うきってなんだ)


海に浮かぶブイ(浮き)のことだろうか…。

なんだって、今。


飯村さんはフフッと笑うと、意を決したように、上からボタンを1つずつ外していく。


知らない間に周りの人たちも物音立てずに、静かにその様子を見守っている。


ストリップってこんな感じなのだろうか。

なんだろう…焦らされるぞ。


部活少女のように、体操服をガバッ!と脱いで、脇に制汗剤をシュー!とかいう感じじゃない。


色気がハンパない。ボタンを外す細い指が、ときどき「あっ」といって滑るところとか。

想像力を膨らませる…。

なんだよ、このエロティックな指使いは。


実際は1分くらいだったとは思うのだが、3分は経っていたように思う。


レモンイエローのキャミソールを着た飯村さんの表情は、なんだか恍惚としていた。


(つ、つぎはブラジャーか…ゴクリ)


楽しみになってきた俺。

うおおお…、いかんいかん、そうは思うものの男子ですもの。へへへ…。


飯村さんは、腰元に手を伸ばすと、スカートのホックに指をかけた。


(えええ…! 下にいっちゃうのお?!)

俺は驚きと共に、目を見開いた。

ぱ、ぱんてぃー姿ですか?

教育実習生が…学び舎で、ぱ、ぱんてぃーを見せてしまうのでっか?


きゃぴー!と声にならない悲鳴をあげそうになった。

(というか、もともと声は出ないのだけど)


そのとき…。


ぱんぱん!

と大石のばあさんが手を打って、立ち上がった。


そのとたん、俺の魔法というか呪縛も解けて、

体がナメクジのようににゅるんと弛緩した。


「はい、合格ね。飯村さん、合格です。おめでとう」


「え…本当ですか」

飯村さんはホックから指を離すと、口元に両手をもっていき、顔をほころばせる。

嬉しそうだ。


「う、うそだ」


「はーい。なにか言いました? 持田くーん?」


ねっ転がったままの俺に、意地悪そうに問いかける大石のババア。

その視線につられるように、他のオーディション出場者の女の子たちも見る。


「あの人、なんで寝てるの?」

「そもそも誰?」

「ほら…あの……最初の挨拶のとき目立ってた教育実習生の…くすっ」


ヒソヒソクスクス笑う声。


「…あ、あが」

俺はこれ以上何も言えなくなってしまう。

真剣にアイドルを目指す彼女たちの前で、

大石のババアの罠だ!妖怪人間にされちゃうぞ!なんていいようものなら、

おれは完全に…ここにはいられなくなる。


本当のことなのに!

頭がおかしい人間扱いされて、おれはもう…廃人と化す。


マイノリティより、マジョリティ。

そんな世の中なのですよ、人間社会っつーのは。


大石のばあさんは、思いっきり外行きの笑顔を浮かべると、


「他の人たちも、合格です。みーんな合格です!とても良かったわ。

けれど、発声やオリジナリティをもう少し磨かなくてはいけないかな、と思いました。

いきなりデビューではなく、候補生として…闇闇ガールズに所属してもらいます」


きゃー!という歓声。泣きだしている子までいる。

マリアンヌ2人が抜けて4人。みんな候補生だという。

まあ、これも全部大石のばあさんの…シナリオ通りなんだと思う。


「飯村さん…。あなた、この静蘭に勤めるといいわ。教師のかたわら、アイドル活動してもらえるもの。

 どう?」


飯村さんは呆然としながらも「…はい」とうなずくと、

その場に崩れ落ちた。

そして、嗚咽をあげながら泣き始めた。


良かったな。

飯村さん…。もう…就職活動しなくて済むもんな。

てか、公務員は副業っていいの?良くないよね?

え?え?


そんな言葉と聞いたかのように、

(闇闇ガールズは変身するアイドルだ。顔と名前さえ変えれば大丈夫だよ。それに…うまくやるさ。

現に桃子だって、OLしてるじゃないか。

というかお前…。私を誰だと思っているんだ? 私は現代に生きる!魔女だよ! ヒヒヒヒヒ…)


頭にビンビン流れ込んでくる大石のばあさんの言葉は無視することとして(骨伝導の魔法?)

俺は、ちょっとのワクワク期待と、それ以上の絶望を…抱いたのだった。


そんなとき…。

「あ、終わっちゃった」

杏奈の声が室内に響いた。

杏奈のきょとんとした、あどけない姿が後ろのドアから見え隠れする。


(帰ってくるなああ…!)


「あら? また追加で応募者かしら?」


大石のばあさんが後ろのドアの方を振りかえった。


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