⑧-8
「い、いい、飯村さん?」
そこに立っていたのは、
俺と一緒に現在教育実習中で、クラスメイトの飯村さんだった。
「わ、私も…参加していいですか…?」
消え入りそうな声で、顔を真っ赤にしている…。
とっても…恥ずかしそうだ。
いやいやいやいや!
何の冗談だよ!飯村さん!
俺は立ち上がって、飯村さんの方へ向かおうとしたそのとき、
つんのめってその場で転んだ。
ンギギギギギ…
足が動かない。しかも「…ァ」口を動かすものの、声が出ない。
首をやっと上に動かして、大石のババアを見ると、
俺を見て、くすくす笑っていた…!
ま、魔法にかけられたのか…? クソッ!
「あらまあまあ、あなたは確か飯村さんよね…?
教育実習にきてくれてる大学生さんだなんて、はじめてだワ。
うふふ…うれしいワ」
おっとりふんわり言うその姿に騙されて、
飯村さんはおろかその場にいる他の女の子たちも、
大石のババアを見る目が温かい。
ほわ~ん、とその場が和やかになってしまっている。
(..> <) みんな騙されてるよー!
叫びたくても、肝心な声が出ない。
「いまちょうど棄権者が出たものだから、今すぐオーディションできるわよ」
「ハイ」
「じゃあ、こちらいらっしゃい」
飯村さんはコクコクとうなずくと、
転がっている俺に一瞥をくれて、驚いたように二度見する。
俺は必死の思いで、顔をしかめて首をふるジェスチャーをするが、
どうやら飯村さんは、正反対のことを思ったらしく。
胸の前で、両手を握りしめグッとガッツポーズをした。
胸がぷるんっと震える。
照れくさそうに、顔を赤らめたまま…舞台へ向かっていった。
いかーん!
そう思うのに…。
ちょっと…意外に? けっこう良いかも…。と頭をよぎった俺は最悪なのかもしれない。
「じゃあ、さっそくはじめましょうか」
「ハイ」
スーツ姿でメガネをかけて、生真面目に返事をしている姿は
まるで面接しているようだ…。
「お名前は?」
「飯村李加子、21歳の大学生です」
その後も無難に質疑応答がされて、全部にハキハキと答えていく飯村さん。
飯村さん、なんでだよ。
君は、立派な教師になりたいがために大学に進学して、こうしてようやく教育実習しているんだろう。
俺と一緒に…!
なんで、こんなところに…きてるんだよ!
と思いつつ、俺の頭にはさっき見た、飯村さんのぷるんぷるんおっ○いの残像が残る。
ぷるりんぷるりん…って、ゆれてたなァ…。
はっ、いかんいかん!
「えーっと、特技は何かある?」
「……」
はじめて飯村さんが口ごもる。
「私は…この年まで……えっと、勉強が趣味で、
それも両親みたいな立派な教師になるっていう夢だけしかなくて。
これといった特技もなくって…えっとえっと」
体が震えだす飯村さん。
「でも、好きな人ができて、その人がアイドル好きだって」
好きな人…? 誰だ? まさか赤西太一か…?
飯村さんはそういうと俺の方をちらっと見る。
そうか、やっぱり赤西なんだな。
(言わないでね)と確認したげな目だったな。
くそ、赤西の野郎め!
こんないたいけで真面目な女の子まで毒牙にかけやがって。
俺はいまだに動かないからだの中で、メラメラと赤西太一への憎悪を高まらせた…!
「だから…! 脱ぎます!」
へ?
その場にいた人全員が、ポカーンとしていただろう。
「わ、私の特技は…ありません。
だから…体しかないんです…。
だから…好きなように使ってください…!!」
なああああああに、言ってんだよおおおおおおおお!
俺は(たぶん)充血してただろう目で、飯村さんに向かって、心の中で叫ぶ。
飯村さんは、スーツのジャケットに手をかけると、
おもむろに…。
脱ぎ始めてしまった…!!!




