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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
⑧静蘭と闇闇ガールズ
73/80

⑧-3

まりあと俺とで支えながら、杏奈を保健室に連れていく。


「杏奈…貧血かも」とまりあが小声で言う。


「学校でよくあるのか?」


「たまーにね」


「……」絶句する俺。


「杏奈ってもともとがそんなに丈夫な子じゃないんだよ。それより早く」


まりあに促されて、1階に降りる階段前で、杏奈を背中に負ぶさった。

前も思ったけど、軽すぎる…。

いったい何を食べてるんだ。


俺の首筋に、ふうっと軽い吐息が耳にかかる。

甘ったるい綿菓子のような…匂いがした。


俺が保護者だったら、アイドル活動なんて止めさせるぞ。

体が弱いのに…学業とアイドルなんて、負担がかかりすぎる!

俺は鼻息を荒く吐きだした。


まりあはあっ!と思いだしたように言う。

「あとは…ショックなことがあると、ふらっと倒れちゃう…かな?」


「ショック?」


まりあはぎろりと俺をにらみつける。

「さっきタミーからキスされてたじゃん。杏奈はショックで、後ろから教室飛び出したんだけど。気が付かなかった? もっさん? ああ?」


最後の「ああ?」はドスがきいてとても怖い(ぶるぶる…)。


「キスなんかされてんじゃねーよ。スキがありすぎなんじゃないの」


まりあはそういうと、ひらりと階段の中段から1階に降りた。


「というわけで、私はこれから5時間目の準備があるから、後はもっさんヨロシク! 

確か何も授業入ってなくて、空きだったよね」


まりあはひらひらと右手で俺に手を振って、にこぉっと笑うと、そのまま廊下を駆けだしていった。


まりあの笑顔はそんなに見たことがなかったが……案外可愛い。


「なんだよ、笑うと可愛いじゃん」俺がぼそっとつぶやいた途端。


首に回された杏奈の腕がギリギリと俺を締めつけはじめた。


「イタタッ! なんだよ。起きてんのかよ!」


「起きて…ないもん…」


「さっさと降りろ!」


杏奈は締め付けをやめたが、俺の背中から下りる気配は一向にない。


仕方がないので、保健室のドアを開けて、近くにあったベッドに腰を下ろさせた。

ベッドに座った杏奈は、下を向いて俺と視線を合わせない。


「貧血かもしれないっていうから、今夜はレバーとかほうれんそうとか食べろよ。

アイドル活動も……ほどほどにな」


保健室は幸か不幸か、俺たち2人だけで誰もいない。

いや…誰もいないってシチュエーションはやばいだろ…ゴクリ。

ここは、ベ、ベッドだってあるわけだし!


と感じ、そそくさと立ち去ろうとした俺だったが…。


「ひっく……ひっく……」


聞こえてくるのは、杏奈の泣き声で……。

ぱっと俺を見た顔が、涙で濡れてて……。


俺は金縛りのように、その場から動けなくなってしまった。


「にいに……。キスなんかしないで……。杏奈の前でキスなんかやめて」


「あ、あれは…事故だったわけで! タミーだってノリだったんじゃないか」


「タミーとか言わないで!! 親しげに呼ばないで!!」


……ん? これって俗にいうヤキモチなのか…。

よくわからん。

それとも、杏奈特有のワガママダダッコなだけなのか…?


「キスなんて……あの夜…お前としかしてないよ」


「あの夜?」

杏奈がほえ?という感じで聞き返す。

しまったー!あの夜は杏奈は……熱でうなされて覚えてなかったかもしれない。

やっちゃったやっちゃったやっちゃった!


アタフタとする俺だったが。


「にいに…は、にいに、なんだもんね」


杏奈がため息交じりにつぶやいた。


「いつまでも、杏奈のそばにいてくれるわけじゃないもんね」


「……」


俺は何と言っていいかわからず、無言のまま杏奈を見つめていた。


杏奈は俺の顔をちらっと見て「そんな困った顔しないで」と言って微笑む。


「にいには杏奈のお兄ちゃん。大事なお兄ちゃんだもん。だから……」


俺の正面に立って「消毒させてね」そう言って…。


ちゅっ…と音を立てて、俺の頬にキスをした。


俺は何が起こったかわからず呆然と立ち尽くし。


そしてその瞬間、ドアから入ってきてそれを目撃していた飯村さんが、

持っていた書類を落とすのを、

スローモーションのように見ていたのだった。

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