⑦-5
ももてぃん…ああ…。
連絡するって言ってたよな…俺のバカちんめっ!
智毅のことやら、杏奈のことやらで、ももてぃんのことを…すっかり忘れていた。
彼女なのに。俺の人生初の!彼女なのに…!
(この先次第では、人生最後の彼女になる可能性もアリだけど↑ ヒュ~♪)
「はい……」おそるおそる出てみる。
「瞬くん……おはよう」
暗っ! テンション暗っ!
「ごめん…俺、いま色々立て込んでて連絡できなくて!」
「……うん、そうだよね。そう……わかってるんだけど。声が聴きたくなっちゃって。
ううん…本当は会いたくって」
「……」
かれこれ、ももてぃんとはもう…1か月以上会っていないような気がする。
俺も教育実習の準備でバタバタ…。
ももてぃんも本業のOLと、闇闇ガールズの地方公演が続いたりして、
デートの約束をしても、直前で潰れてしまっていた。
「会いたくて会いたくて…震える」
「うん…俺もブルブルだよ」
スマホを耳元にあてながら、俺は実際に震えていた。
この場にいるももてぃんを抱きしめて、そのおっぱいに顔を近づけてモフモフできたらいいのに…!
そして、チューもして、そのまま木陰で……なんてっ!!
俺は朝っぱらから、なんちゅう妄想をしてるんじゃいっ!
カアア…と顔が熱くなる。
でも仕方がないんだ。
ももてぃんの声を聴いてると、俺は頭のなかがボヤケて、どこかトリップしてしまうような気がする。
癒し系なんだもの。モフモフなんだもの。
「OLの方も……顧客の担当が代わったりして大変だし、闇闇ガールズの方も、トマトちゃんがいなくなった今、これからが正念場だし、いま頑張らなくちゃって思ってて…」
「うん」
「瞬くんも頑張ってるんだ…私も頑張らなくちゃって思うんだけど。寂しくてどうしようもなくって」
ももてぃんがかぼそい声で吐く弱音は、俺の心にヒタヒタと迫ってくる。
「ねえ…このままアイドル辞めちゃったほうがいいのかな。トマトちゃんみたいになってもいいかな?」
トマトちゃんみたいになる、ということは、すなわち彼氏と最後まで致しちゃうということだ。
その途端、魔法は溶けてとたんに変身(若返り)できなくなってしまう。
「33歳のアイドルだっていてもいいよね? 第一、アイドルにならなくたって…」
そのとき、頭に浮かんだのは「ももてぃん、ももてぃん」と嬉しそうな顔ではしゃぐ智毅の顔。と…
「ももてぃーん!!」とお揃いのハッピに、うちわをもって、
毎回ライブに応援にきている『ピーチな僕ら』という非公式の親衛隊の姿だった。
確かに俺はももてぃんと一刻も早くヤリたい!モフモフだってしたい!
だけど、それとこれとは別で…。
俺だけのために、夢をあきらめてほしくないと思う。
だから言った。
「ダメだ! ももてぃん、逃げちゃダメだ! ももてぃんというアイドルがいなくなったら、親衛隊だって悲しむし、とも…いや、俺だって寂しいっ!」
「でも……」ももてぃんの声は、防波堤決壊スレスレのような涙声になっていた。
「俺、待つからさ。だから借金返そうよ。それで、ももてぃん、その姿で俺と……しようよ」
「瞬くん……」
21まで清い体できたんだ! なにを今さら。この際、30だって、40だって、待ってやる…!
けど、ファーストキスは…もう杏奈に奪われてしまったわけだが…。
これは、墓場までのトップシークレットだ。
ももてぃんにだって、都さんにだって、親父にだって言えない。
言ったら、俺はあの家から追放される…!
「ありがとう、瞬くん。ほんと…に好き」
「俺もだよ」
「今日は残業で無理だけど、土日も……ライブ入っちゃってるけど…。近いうち、絶対会いたい」
「うんうんっ!」
「本当に……好きすぎる」
ももてぃ~~~~~~ん!!!
俺もなんだよ~~~!!!
今すぐ飛んで行って、抱きしめたいよ~~~!!!
と、叫びたかったが、ゴホンと咳払いをするだけにとどめた。
そしてクールに「また連絡するよ」と言って、通話を終えたのだった。
そして…そばにあった電信柱におでこをくっつけて、俺の燃えたぎっていた熱情を冷ます。
「好きすぎるだって! 俺のこと好きすぎるだって!!」
今まで、智毅とセットでぐりぐらだの、キモいだのなんだの言われてた俺が、
あの巨乳アイドルのももてぃんに、好きすぎるなんで言われちまいましたよおおっ!と大興奮だった。
おでこをガツンガツンと何度もぶつける。ハイ快感です…グフフ。
そのときだった…!
「ほ~ん。あんさんか~。ももてぃんにできた彼氏っちゅうのは」
背後から、聞きなじみのある、変な関西弁が!
振り返らなくてもわかるのだが、思わず振り返っちゃう俺…。
そこには、半纏を着て、頭ぼさぼさの猫村タミーが立っていた。
下にはミャーミャーミャーと騒ぐ猫たちの姿!!
「ええこと聞いちゃったわい」
そう言って、猫村タミーはニイイと笑う。
前歯にはノリがついていた…!(どうでもいい)




