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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
⑥夢と魔法と愛?の学園……静蘭へ
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⑥-6

静蘭の巨大門の前に着いたとき、ちょうど用務員のおじさんが、鍵を開けにきたところだった。


カールのおじさん的な容貌の、その人は俺を見て、はっと驚いた顔をした。

3mくらいある鉄の門をはさんだまま、俺たちは見つめ合った。


「……」

「……」


しばらく無言が続く。


「あの……今日から、お世話になる教育実習生の持田といいます」


「ああ……」


おじさんは理解したよ、という顔で南京錠の門をギギギギ…と音を立てて開けてくれた。

おれは軽く頭を下げて敷地に入る。

なんとなくお花畑に入ってきたようで、空気が甘ったるかった。

朝の空気とあいまって、視界がなんとなく、もやもやと霧がかって見えた。


あれ……面接のときってこんなだったっけ。

おれは目をこすった。


「不審者かと思ったよ」


「え?」


おじさんは俺を見ると、ニヤッと笑った。前歯が一本欠けていた。


「ここは乙女の園だからね……怪しい奴は入れないのさ」


さすが、静蘭女子学園!!明治から続くお嬢様学校だけあるぅ~。

と、俺が感心していると、


カールのおじさん(もうこう呼ぶことにした)は……ぼそっとつぶやいた。


「というか……入(はい)れないのさ。なんてったって、施錠している間は、この学校全体に魔法がかかってるからね」


ハイハイっ!きましたきましたー!魔法!魔法魔法っ!ww


もう…俺はすっかり慣れっこです(?)


大石のばあさんがやりそうなこってすよ。

どうせ忍び込んだら、ねずみ男にするとかこなきじじいにするとか…。

そんなレベルの魔法だろ。


俺は聞いてなかったふりをして、黙ってカールおじさんのあとをついていく。

……まてよ。

俺の頭のなかで電球がぱっとつく。

このカールおじさん、なんか詳しそうだ。

もしかしたら、大石のばあさんの弱点とか聞けるかもしれない……。


俺が口をひらきかけたとき、カールおじさんがさえぎった。


「夜勤明けの先生がもう職員室開けてるはずだから、あの旧校舎に行くといい」


「夜勤…?」


話しをきくところによると、この学校では月に3回ほど、男性教師のみが泊りこんで学校内を点検するという風習があるそうだ。

まあ……俺は幽霊とか信じないタイプだから、別に夜勤があってもかまわないのだが。

ときどき悲鳴が聞こえてくるらしいよと、カールおじさんはククク…と含み笑いをする。


「んじゃ、ここで。うさぎのナオミにえさをやらな」


カールおじさんは颯爽とその場を去っていった。

まあ…大石さんのことは、また聞く機会があるだろう。


俺が面接を受けた管理棟はそのまっすぐの正面奥にある。ちょうど目の前にして、右側が旧校舎。左側が新校舎で、垂直に建てられている。


入ってきた正面玄関のある建物は、理科室や音楽室などの実習を行う施設棟といったところだ。


校庭を囲んでロの字型になっている。


俺は、旧校舎に向かった。

その片隅に、俺の大学の2分の1くらい小さい体育館がある。


誰もいない校庭で、静蘭にただよう乙女の残り香のごとく甘い蜜のような霧が俺をとりまいてくる。


これが魔法の一部なのか……。


なんか足元がふわふわとしてくるような…いい気分になる。


旧校舎に着くと、俺が一番のりだった。

職員室は鍵が開いていて、俺はおそるおそるなかをのぞきこんで、静かに入った。


「おじゃまします……」


当たり前だが、誰もいない。

校長など偉い先生たちが座る上席とは反対の、誰の席でもない末席に、座り込んだ。


カバンから、挨拶文を覚えなおそうとノートを取り出した。


ノートを開いた瞬間、中から1枚の古ぼけた写真がひらひらと宙を舞った。


俺はそれを慌ててつかむ。


(写真…?)


のぞきこむと、杏奈の小さい頃の写真だった。

そこには、ランドセルを背負った杏奈と、ブレザーの制服を着た男が笑ってる姿が映し出されていた。


「だれだ、これ……」


杏奈は美少女の片鱗を残しつつもまだあどけない女の子で……小学校中学年あたりか…。


去年のクリスマスから、一緒に暮らし始めてから半年…。

俺が一度も見たことのない、心からの笑みを浮かべている。

となりのブレザー男に向かって。


ちくんと、胸に針が刺さったような痛みを感じた。

(あれ…いま、俺もしかして……)


その気持ちをごまかすように、その写真の男の顔をよく見ようとしたとき、


「おっはー!!!」


と元気いっぱいの奴の声が、職員室中に響き渡った。


赤西太一!!!


ちっとかすかに舌打ちをして、もう一度写真を見ようとノートに目を落とすが、


もう……何もなかった。


魔法が解けたのだ。


職員室の窓を走って開けにいくと、あの甘ったるい匂いともやのような霧はすっかり消えていた。


呆然と立ち尽くす俺に、赤西が「おっはー!」と畳みかけてくる。


「もっち~。早起きじゃん。もしかして、緊張して眠れなかった系?」


振り向くと、髪は整髪料でびしっと決めて、高級ブランドスーツを華麗に着こなした赤西がいた。


「おま……」


「あ、やっぱ地味……? ってか、ぷっ! 


もっちーってば、新橋のリーマンみたいじゃん! くたびれ感、サイコー! ひゅ~!」


あの魔法は、魔法使い(いまだ童○)の俺にしか見られなかったイリュージョンだったのだろうか…。


ホストのような女ったらしの赤西によって……解かれてしまった。


あと、入ってくるのが数分遅かったら……と思わざるをえない。


杏奈のとなりにいた男が誰だったのか、つきとめられたかもしれないのに。

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