⑥-2
面接の日は、あいにくの雨だった。
おふくろが使ってたすがた鏡に、全身を映す。
俺は、面接用に買ったスーツを着て、ネクタイをきりっと締めた。
あれれ~?! ふつうに…格好よくねえか?///
自画自賛をして、その場でくるくる回ってみる。
静蘭に行きたくねえ!と騒いでいた俺だけど、
まあ…本音は、女の子たちにきゃいきゃい騒がれるのも…いいかな…なんて。
てかむしろ、楽しみになってきたような…気もするわけだ。
静蘭の学園長も、俺を希望してたっていうし…。
もしかしたら杏奈の義理の兄だっていうことが、学校側に伝わっているのか?
杏奈は…家でみる限り、情緒不安定な子に思えるからな。
兄の俺に実習に来てもらい、学校での様子をみてもらいたい…と思ったのかもしれない。
もしかしたら、いじめられてる?!
いや…あの毒舌お嬢まりあがいるから、大丈夫だろう……と思う。
面接は14時からだった。
赤西と飯村さんは確か午前中だったはず。
系列の静蘭女学園大学からももちろん、他の大学からも実習にくるので、
総勢で実習者は10人前後になるらしい。
黒山大学は隣ということもあり、おこぼれで実習できることになっているのだが、
毎年候補者の枠は1、2人で、今年みたいに3人というのは珍しいらしい。
飯村さんと俺はともかく、動機が不純な赤西がなんで書類選考で通ったのか。
基準がわからない。
それだったら、真面目に出席してた智毅でも良かったはずなのに…。
まあ……それを俺が考えても仕方ないな。
昼下がりの住宅街を、傘をさして静蘭に向かっていった。
うわさに聞いていたが、静蘭の敷地に入るだけでも一苦労だ。
ビーとなるチャイムを鳴らし、「14時から面接に来た持田ですが……」と告げると、
3メートルほど高さのある校門が、自動的に開いた。
俺たちの大学から見える静蘭は、白亜で統一された壁一面だけだった。
窓はあったが、本当に小さくてしかも上の方にあるもんだから、内部がまったく見えなかった。
ときたま屋上で吹奏楽のマーチング練習をしてるのが見えたりしたが、
スポーツをする姿や、プールに入る姿…もちろん…着替える姿なんて絶対見えないようになっていた。
今回、敷地に入って驚いたのは、その美しさだった。
管理をしている人(女性)がやってきて、「とにかくこのまま奥にずうっと行ってください。突き当たったとこが管理棟で、そこに学園長がいらっしゃます」と、いかにも言いなれたようにすらすらと俺に言ってきた。
「ありがとうございます」俺は頭を下げて、そのまま歩いて行く。
奥にすすむにつれて、中庭には噴水広場があったり、花壇があったり(そのなかの花はカラフルでとても美しい)。またさらにいくとこじんまりとした運動場が見えてきた。
ちょうど体育の授業をしているらしく、「待って~」「きゃはははっ」なんて、ソプラノボイスの歓声が聞こえてきた。
静蘭は運動場をとりかこむように、ロの字型に校舎が建っている。
少女たちを俗世間から覆い隠すように、しっかりガードしている印象をうけた。
そのうちの1つである管理棟に足を向けた。
通り過ぎる時に、校庭の女の子がざわめいた気がした(まあ、気のせいだろうが…)
杏奈のところのクラスだろうか……ちらっと横目で見たが全然わからなかった。
今日もしこの場所で会ったら、杏奈が驚く姿が目に浮かぶようだ。
俺がなぜここにいるのか…まったくわからないだろうし。
ちょっと、それはそれでけっこうサプライズで楽しいかも?
そうこうしているうちに、学園長の部屋の前まできてしまい、杏奈のことばかり考えてもいられなくなった。
深呼吸をしてノックをすると、短い沈黙ののち「お入りなさい」という渋い声が聞こえてきた。
ふう……緊張するぜ。




