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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
①アイドルたちとのクリスマス
5/80

①-5 

「きゃああああああああ……」

 

「うおっっ!!!」

一瞬ののち、闇がおとずれた。後頭部に鈍痛が走る。

特に意識はしていなかったのだが、俺は「それ」を両腕で受け止めていたらしい。


あれ?

「それ」は思ったより重くはなく、俺の腕のなかでビクンビクン震えていた。


昔飼っていた柴犬のりんたろうを抱きかかえているような…妙に懐かしい気持ちになる。俺は産まれてこのかた女の子を抱きしめたことはないのだが(自慢できることではないのかもしれないが)

案外こんな風に抱き心地が良かったりするものなのか。


俺の鼻のさきにある髪の毛からは、かすかに甘いチョコレートの匂いがする。

少しパーマがかった細毛のようで、俺の鼻息でふわんふわんとたなびいていた。

女の子って甘くてふわふわしてる綿菓子みたいだなあ……

いい気持ちだ♪しばらくこのままで……ゲヘヘ♪なんていう、


…至福の時間は長くは続かなかった……。


「こんのエロガキ! いつまでさわってんだよっ!」


ふわふわ女子は、どこから出したのか野太い低い声で、俺の腹にいきなりエルボーをかましてきたのだった。自分だってガキのくせに!と思う余裕すらなかった。


「ぐえぇっ」

俺はたまらず、お腹をかかえてその場で身悶える。


女の子は、長いパーマがかった髪をくるくる右手でいじりながら、


「もー超危険なんだけど。だから、あんな、一軒家やだってゆったのに、ママゆうこときいてくれないだもぉん」


さっきとはがらりと口調が変わり、今風のギャル(死語?)みたいに、だれに言ってんだか甘えたようにしゃべり始めた。


「あんな、もーやだ。アパートに帰りたいぃー」


両手をわざとらしく目に持って行って、くすんくすんと鳴きまねを始める。


こいつ……もしや、「なあに?」を「ナょ ぁ ιニ ? 」みたいに変換する、わけのわかんない人種か?!

俺がもっとも苦手とするギャル女子(死語?)なのか?!


「あらあらすごい音したけど、大丈夫なの?」

みやこさんが居間からしゃもじを持って、俺たちの方にやってきた。


「あらあ、瞬さん! 大丈夫?」


泣く(正確には泣きまねだが)自分の娘より、青白い顔で寝転ぶ俺を見て、まっさきに心配してくれるあたりが、いかにも義理のお母さんって感じだ。

俺は、笑ってんだかなんだか自分でもよくわかんない、又吉直樹のようなうっすらとした笑いをうかべる。


「瞬くんだいじょうぶかぁ?」

親父の間延びした声も、聞こえてきた。


それを聞いて女の子は吠えた。


「もおなんなの、みんな! あいつより、あんなのこと心配してよ!ひどいよぉ!」


自称あんなという女は、一向に泣きまねをやめない。

こいつ……マジで性格悪いな。。


「瞬さん、階段から落ちそうになったあんなのこと助けてくれたのよ。お礼言いなさい」


「イ・ヤ!」


「あんなったら……」


ふうっと悩ましげにため息をつくみやこさん。

いかにも思春期まっさかりの親に反抗する女子だ。大学で教育学を勉強している俺にはピンとくる。この時期は親子関係もいろいろ難しいんだよな。


「だってあんな、アイドルなんだよ! 顔に傷がついたりしたらどおしてくれるの?」


だから!そのしゃべり方やめろって!いい加減イライラしてきたぞ。

なにがアイドルだ! 

どうせ 自称なんだろ!! 

どうせ ブ○なんだろ!!


まだジンジン痛む後頭部を押えながら、俺はむっくりと起き上がる。


俺は一応、教師希望だ。昔から子どもが好きで、学校の先生になりたくて大学も教育学部に入った。

こういう躾のなってない子供を、一から教育したろか!!

そういった決意をもとに、自称あんなの方にギロリと目を向けた。


「なんだよ」と同じようににらみかえしてきた自称あんなの顔を見たとたん、

俺はマンガのように、口をあんぐり開けてしまった!



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