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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
⑤新年度はじまる!
49/80

⑤-9

なだれ落ちてきた本やらDVDやらが、俺たちの頭に降りそそぐ。


「いてててて…ん? なんだこれ……」


智毅が俺を壁ドンしてた右手を外して、落ちてきた本を拾った。

万事休すだ…!お、俺の(隠していた)性癖が……あうあう…。

目をつぶって、智毅の失笑に耐えようとした俺だったが……。


「おいっ、瞬! 誰だこれ? なんだよ!!これっ」


智毅があわてふためいた声を出して、瞑想?をしている俺をゆさぶる。


「リリカじゃないかっ! これっ!リリカじゃないのかっ!!」


目をうすく開くと、上気して真っ赤になった智毅の顔が見えた。


「へ?」


「リアルなリリカが俺の前にやっと……!俺の前に!……ぐすん」


智毅が右腕で目をこすっている。…泣いているのだ。

持っている本に目をやった。


…それは、ももてぃんが表紙になった「闇闇ガールズ」のファンクラブ会報誌だった。


「俺、夢見てるんじゃないよな……。リリカが、現実にいるなんて。俺のリリカが…」


変身した後のももてぃんを見たとき、確かに誰かに似ているような気がしたのだ…。

それは……「萌えっこキャンパスライフ」の小田島リリカだったんだ。

顔が…とかじゃない。雰囲気なのだ。

おっとりとした、ふわんとした包みこまれるようなオーラが、共通してるのだ。

言葉づかいだって、綺麗だし、なにより……2人は俺たちよりも年上の巨乳だった。


「うあああ…!!神様!ありがとおおっ!! 俺に!俺の前に、現実のリリカがっ!やってきましたよぅ!」


うああああ……と泣き叫び、窓にむかってお辞儀をしまくる智毅を、呆然と見ていた。

挙句の果てに、智毅は俺の胸のなかにもたれかかってくる。

やめろよ…。俺のシャツが濡れちゃうじゃないか…。

そう思うが、智毅をはねつけることがどうしてもできなかった。


よかったな…と声をかけるべきなのはわかってる。しかし、ももてぃんは俺の彼女なのだ。

その事実を知ったとき、智毅は…また絶望してしまうんじゃないだろうか…。


正直にいうべきなのか…。どうしよ、ももてぃん。


そのとき、「ちょっと、うるさいんですけど。なんかキモイ声が聞こえて、テレビの音が聞こえない~」

杏奈が俺の部屋に入ってきた。


そして俺の胸のなかでさめざめと泣いている智毅と、それに左手を軽くそえている俺を見て


「…………」


バタンッ。無言でドアを閉めた。


「ちゃう(違う)!誤解だ!!杏奈、誤解だからっ」


杏奈は再びドアを開けて「キモイぃ」と顔をゆがめながら入ってきた。


俺は、智毅の肩を両手で押しだす。智毅は、小指で目の端をぬぐっている。

そのしぐさが、なんともまあ…色気があるのなんのって。

まあ、それはどうでもいい。


「瞬。これ誰なんだ? 誰だよ、この子。俺も……このファンクラブに入るっ!」


杏奈がファンクラブという言葉にぴくっとなる。

そして、ずかずかと俺たちの方にやってくると、智毅から会報誌をひったくった。


「なにコレ? ……がーるずぅ??」


ああ…杏奈は、中学からアイドル活動をやってることもあって、普通の高校生よりも…

まあ、いくぶんかは……漢字が読めない…。


「やみ、だよ。英語でyummyってあるだろ。おいしいっていう意味なんだけど。そのヤミーとかけてるんだ」


杏奈は聞いてるのか聞いてないのか、険しい表情でページをめくっている。


「うっわ。なにこれ。趣味わるう。平成の変身少女軍団?私たちにみつぎなさい…?あなただけに天国見せちゃわよッ…ってなにこれ、なにこれ…だっさーい」


杏奈が情け容赦なく、ディスっている。ここらへんは毒舌まりあの影響もあるだろう。


あるページで手を止める。

「猫村タミー? ん? 猫村? タミー?」


タミーのインタビューをじいっと見ている杏奈。

そういえば、猫村タミーは杏奈とクラスメイトなんだったっ!!

変身後がのっているとはいえ、変身前とそう変わらないはずなのだ。


猫村タミーの正体がわかる前に、今度は俺が杏奈の手から本をひったくった。


ひらひらと、その間から挟まれていたチラシが舞い落ちる。

「闇闇ガールズ、七夕のおねがいごと。ご主人様~どうかわたしたちを恋する人間にしてくだちゃいっ~」


それを、蚊をとるように(さしずめ、まっ黒くろすけをとるメイちゃんのように)

ぱしんっと叩いてとったのは智毅であった。


智毅はそのチラシを顔の前にもってくると、まじまじと眺めた。

「……俺、行きたい。てか、俺もファンクラブ入会したいっ! 瞬、スマホ貸して…?」


魂が抜かれた虚脱状態でへへへ…と笑いながら、俺ににじりよってきた。


「ちょっと待て、ちょっと待てよ? 智毅。冷静になれ」


「えっ、にいに? まさかこのファンクラブ入ってるの? うそでしょ? なんで?」


それは……ももてぃんと早くヤリたいから…じゃなくてっ!(汗)

一刻も早くももてぃんの借金を減らすために…だから? ん、だから?


このとき、俺の胸のなかに一つの妙案が思い浮かんだ。

それは…悪魔のような……

いや、だめだ。そんなこと。俺はなにを考えてるんだ。そんな…。


「どうしちゃったの、にいに? なんで…こんな……落ちぶれアイドルなんかのファンクラブに…」


「落ちぶれじゃないっ!! 決めつけていうんじゃないっ」


怒鳴るつもりはなかったが、杏奈がびくっとたじろいだ。


「……杏奈が頑張ってるように、この子たちだって……。大事なものを捧げて、毎日努力して、ときにはバイトだってして、しゃっき、いや、お金を稼いでるんだっ。だから…そんなキモイとか落ちぶれとか、言うんじゃない」


「にいに……、なんでそんなムキになってんの?」


杏奈が傷ついたような顔で俺を見る。


「大事な人がいるんだ……だからバカにされたくない」


「……」


智毅は相変わらず、ふわふわとマイワールドにひたっている。

だから、俺たちの会話すら聞いていない状態だろう。

まさか、ももてぃんが俺の彼女だなんて……夢にも思っていないだろう…。


「にいにのバカ……。なんでこんな。……み~んな、だいっきらいだもんっ!」


杏奈はそう言って力任せに俺の部屋のドアを閉めた。


杏奈にはわかったはずだ。この闇闇ガールズの中に俺の……彼女がいるってことに。


杏奈のために買ってきたロールケーキが、ビニール袋からちらっと見えた。

あとで…親父から渡してもらおうか…。


俺は、大きくため息をついた。

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