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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
④ももてぃんの秘密(闇闇ガールズ含む)
40/80

④-10

俺が1階に、水をとりにいっているあいだに、

杏奈は部屋に戻ってしまったらしい。


こんな夜中に、妹とはいえ女の子の部屋に入るなんて…


逡巡した俺だったが、意を決してノックをしてドアを開けた。


ほんの短時間だったのに、杏奈はもうベッドですうすうと寝息をたてていた。


普段から悪態をついたりして元気いっぱいの杏奈が、憔悴しきって横たわっている姿は、見ていてとても辛い。

もっとも本人が一番辛いのだろうが。

毛布がずれていたので、肩までそっとかけなおす。


「早くなおせよ」

そっとおでこに手をのせた。

まだ熱い。冷えピタもとりかえてやろうか……

そんな風に考え、杏奈を上からじっと見下ろしていたとき、


杏奈がぱちりと大きな目を開けた。

そして真上の俺を見るなり、


「お兄ちゃん?!やだ! 来ないで! やだああああ!!!!!」


頭を抱えてうずくまる杏奈。


「杏奈?! どうした?」


「…………来ないで」


「どうしたんだ? 杏奈……うなされてるのか?」


俺は杏奈に目線を合わせて、肩をゆすぶった。


枕元のランプの電源を押すと、俺たちをとりかこむ闇がさっと散った。

杏奈もその灯りで、俺が誰だかわかったようだ……。


ハアハアと強い息遣いで俺にすがりつく。


「のど……かわいた」


俺はペットボトルのキャップをとって、杏奈の口元にあててやる。

こくっこくっと小さな音をたてて飲む杏奈。


「……おいしい」


「もっと持ってくるか?」


「ううん……もういい」


そういうと、俺に背を向けてベッドに入り込んだ。


「杏奈……早く治せよ。マリアンナのファンのためにも……元気な姿見せなくちゃ」


頭が動く。どうやらコクコクとうなずいているらしい。

そろそろ、自分の部屋に戻ろうとドアに向かう。

そんな俺に、杏奈が話しかけてきた。


「にいに……今日帰ってきたん…だ」


「あ……うん、まあな」


「フラれたんだ」


「あ、……うん。って違うから!!」


でも……よくよく考えたら、今夜はフラれた形になるのだ。

もしあのまま順調に行ってれば、俺はももてぃんの胸のなかで今頃……。

なんて、考えるのは空しいだけだな。


「せっかくのバレンタインなのに…かわいそう」


こいつ……!体調悪くても、あいかわらず憎まれ口たたくのか?

むかついたが、あの…ショックがぶりかえしたのか、思わず本音をもらしてしまった。

「そーだよ、かわいそうな男なんですよ、俺は……ハア」

ため息交じりで。


せっかくできた彼女が、魔法かけられててS○Xすると魔法がとけちゃうなんて……、杏奈に言ったら爆笑ものだろう。

というか、こんな話信じる奴いるか?


ていのいい、断り方だったのかもしれないな。今にして思うと……。

ももてぃんは…俺とするのが嫌だったのかもしれない。

ていうか、あんなに可愛くてバージンとかありえないだろ。


もんもんと暗黒方面に考え始める俺。

いや~落ち込みますわ。


「キスもできなかったしな……」


そう、キスくらいは決めたかったのだ。

バレンタイン・キッス。きゅ~~ん。この言葉だけでごはん3杯はいけそうなのにな。


「なんてな……、まあ、モテない男なんてこんなもんよ。ははは…!

杏奈も早く寝ろよ」


「ねえ」


「ん?」


「おでこの冷えピタとって……取り替えてほしい」


「うん、ちょっと待って」


俺は再び杏奈の方を向き直ると、おでこの冷えピタをはがしはじめた。

熱を吸い取ったのか、ずいぶんしんなりしている。


「とったぞ……って、え??」


という間もなく、杏奈が俺の首に両手をまわしてきて……俺の顔を自分に近づけた。

そして……

唇に、俺の唇を押し当てた。


「いたっ!」

勢いがよすぎて、お互いの歯がぶつかりあう。

杏奈が口元を押えている。「痛い~」


「あたりまえだろ。いきなりキスなんかするから……」



ってえええええええええええ~~~~~~!!!!!


お、おれ、いまキ、キスしたのか?!


って!杏奈!なにやってんだよ!!!


「お、おまえ……な、な、なに……」


動揺しすぎて、しっかりしゃべれない俺。


「もう……眠い……頭痛いから向こう行って」


布団にもぐって、手で追い払う真似をする杏奈。


「べつに……ただかわいそうって思っただけだし。お水のお礼だから」


「…………」


呆然とその場で立ち尽くす俺に「早く出てってよ!!」と杏奈がごほっごほっと咳をしつつも言い放った。


お水のお礼って……。

俺は部屋に戻るなりベッドに腰掛けて、震える手で唇をさわった。


少し、上唇が切れてしまったようだ、血の味がする。


ふいうちでどんな……気持ちだったか、もう覚えていない。

感触すら……ほとんど、感じることができなかった。


ファーストキス……そう、これが俺のファーストキスだった。


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