④-8
放心する俺に、ももてぃんが更に話を続ける。
「こんなに好きになれる人に会えるなんて思ってもみなかったの……、
…S○Xして魔法を解くことももちろん考えた。
けど、それだと、私が12歳年上って事実は…変わらないままだよ。
私は、17歳のアイドルのまま、持田くんと青春やり直したい…!
アイドルが彼女なんて、持田くんも嬉しいでしょう?
それに私、17歳になったら……持田くんより、4歳年下になるんだよ!!」
ももてぃんの言いたいことはなんとなくわかる。
12歳ひとまわり年上が彼女と聞いたら、世間体的にも、「えっ?!」と驚かれてしまうのは必至だ。
俺だって、智毅がそうだったら、ちょっとびっくりするもんな。
(そういえばリリカさんは、何歳の設定なのだろう…)
けれど、俺自身は、ももてぃんそのものを好きになったわけであって…。
33歳のOLの桃子だって、17歳のももてぃんだって……
つきつめれば、大きなおっぱい……なのは変わりないし。
むしろ、33歳の方が……むっちりしてて、なんか俺好みっていうか……。
ってちが~~う!!
ももてぃんは、ももてぃん!!
魔法が解けても、好きなんだよ!!
だから、S○Xだってしちゃおうっ!!
これが本音なのだ!(ふぅ…言ってしまった)
賢者モードのままで、上記のことをももてぃんに伝えてみる。
(もちろん、おっぱいのことは言わない)
ももてぃんはそれを聞いて、うんうんとうなずいていた。
そして、涙目になって「ありがとう…」と俺に抱きついた。
だから、そんなことされると俺の理性が…ああ…もう。
目をつぶって、欲望と理性とのせめぎ合いをやり過ごす。
その結果…。
俺は……完全に賢者モードに覚醒してしまった。
こうなったら、ももてぃんの夢を一緒に追いかけてあげようじゃないか。
アイドルが彼女っていうのも、いいじゃないか。
俺だって、グッズ買って……貢献してもいいじゃないか。
俺は、ももてぃんの背中を何度もなでてあげる。
こんな思いしてまで、1人で頑張ってきたんだもんな…。
俺は胸のなかにいる彼女を、愛おしく感じる。
これが愛するってことなんだな…。俺の…彼女…。
抱き合っているうちに、1つ疑問が頭に浮かんだ。
「あれ? さっきトマトちゃんには、彼氏いるって聞いたけど」
ももてぃんは、俺から離れると、手で涙をぬぐい、
「いるけど……まだ…やってない。トマトちゃんはもう少しで400万払い終えるから頑張ってるんだって」
「そうなんだ……」
「トマトちゃんは、彼氏が本当に大好きで、もともと血を飲んでみたいなっていう願望があったんだって。それで吸血鬼になった……危ない子なの。魔法が解けないまま成就しても、それはそれで不安なんだけど」
「……確かに」
血を吸い過ぎて、彼氏が出血多量で死ぬこともありそうだ。
現に年末のライブに出てきた彼氏は、青白い顔でフラフラだったような気がする。
ももてぃんはキリッとした表情で俺に告げる。
「持田くん……!!私は、今180万払い終えたところなの。あと残るは320万。
頑張るからねっ!」
ももてぃんの必死な目が俺をとらえる。
目がそらせない。
「本当に、持田くんとS○Xしたいの!!」
「……いいから」
それ以上言わないでくれ…(涙)
今夜…俺はももてぃんを抱くことができない。
魔法使い決定!
しかもキスさえできないのだ。
辛いのだ。
「そろそろ帰るよ…」
俺は、不自然にならないようににっこりと笑って、立ち上がった。
そんな俺にももてぃんが近づいて、
俺の頬に、ちゅっとキスをしてくれた。
「お金……かかるんじゃ…」
「今夜はそれくらいさせて」
逆に俺からほっぺにチュっ!をしたらどうなるのだろう…。
それに……胸にさわるのはお金かかるのだろうか…。
あっ!と倒れるふりをして、ももてぃんのおっぱいにぶつかる…とか。
ヤダヤダ!俺ってば!なんて空しい…(涙)
「待って、持田くん!」
ももてぃんが小型冷蔵庫を開けて、箱を俺に手渡してくれる。
「これ……バレンタインの…チョコ」
あ! そうか、今日はバレンタイン!!
「ケーキ作ったから食べて」
「あ、ありがとう」
ももてぃんは、にこぉっと笑った。
その顔がまた……とてつもなく可愛くて…抱きしめたくなる。
そして俺は、欲望に負けて抱きしめてしまった…!
「好きだよ、ももてぃん」
「ももてぃん…でもいいけど、今は桃子って呼んでほしいな」
「桃子……」
「もち…じゃなくて瞬くん。大好きよ」
そう言って、俺の背中に腕を回してきたももてぃん、いや桃子。
(でも…まあ俺のなかではももてぃんと呼ぶことにするが)
切ないけど、初めて彼女と過ごす21年目で一番最高なバレンタインの夜だった。




