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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
③まりあ登場!
30/80

③-10

杏奈が「ほどけちゃったぁ~」とさして緊張感のない声でつぶやく。


そして…振袖を脱ぎ始めた!


「な、なにやってんだ! まだ着てろよ!!」


俺は急いで杏奈の腕をつかんで、止めにかかる。


「なんで? いいでしょ。脱いでも…」


「よくない!」

俺は腕を締め上げる。


「にいに! 腕が痛い! はなしてよ!」


その瞬間、リビングのドアが開けられ、都さんが能面のような顔でこちらをふりかえって見た。

「……なに、やってるの、かなぁ?」

その冷たい微笑みに、杏奈と俺は凍りついた。


はっと目の前を見ると。

杏奈は帯がほどけて、まるで花魁のように胸がはだけていた。

その両腕をつかんでいる俺。

そして「はなしてよ!」というきわめつけの言葉。


完全に誤解されたー(涙)

この現状は…俺が杏奈を襲ってる…光景そのものじゃないかー!


「あの、違うんですよ。クモがいて、ですね……で杏奈がキャーっつって俺に……抱き、いや、その紐が絡み合って…」


しどろもどろで言い訳する俺を、都さんが表情も変えずに見下ろしている。


「杏奈が脱がしてって言ったんだよ」


「よ、余計なこと言うな」


「いいから、杏奈。着替えなさい。いつまでもアイドルがそんな格好してて、見苦しいわよ。あと、瞬くん。今朝は杏奈のこと、送ってくれてありがとう」


杏奈はぶーたれた顔で、その場で脱ぎ始めようとする。


「部屋で着替えてきなさい」


都さんが階段の方を指さすと、杏奈は俺の方をちらっと見て、その場を立ち去った。


沈黙の間がしばらく続き、俺はドッキドッキ心臓が鳴り続けていた。

都さんは険しい顔で、階段方向を見つめたままだ。

言い訳ばっかりしてるのも見苦しいかもしれないけど、ちゃんと何があったか言わなきゃいけない。

俺は、意を決して声を出そうとしたとき、


「……瞬くん。杏奈はああいう天真爛漫なところがあって、人を振り回しがちなの。だけど、本当はビクビクしてとても繊細で臆病な子なのよ」


「……はい」


それはわかっている。約1週間過ごしてきたなかで、杏奈は普通の子よりも喜怒哀楽が激しいような気がしていた。

とても…ほうっておけない女の子だ。


「杏奈が瞬くんを気に行って、頼りにし始めているのはよくわかるの。瞬くん、とても良い青年だもの。私だって、瞬くん好きよ。とても面倒見がいいし、優しいし……」


いきなり褒められて、俺は顔が上気し始めた。

おおいに照れてしまう。

女の子だったら、両手をおおって「もぉ」と顔を赤らめて言いたいくらいだ。


「でも、杏奈のことを女の子として見ないで、あくまでも妹として見てほしいわ」


「……」


「あの子、昔ね…」


言いかけた都さんの言葉を、突然入ってきた親父がかき消した。


「瞬く~ん! いま、買い物行ってきたんだけど、駅前でなんか騒ぎがあったらしいよ。なんか、屋台の女の子が……って! なに、都さん。その顔!」


都さんが驚いて、親父の顔を見る。


「眉間にしわが寄ってるよ。きれいな顔が台無しだ。都さんは……笑顔が似合うんだゾ」

人差指で、都さんの眉間にちょんと、触れる親父。


「幸平さんたら…」ポッと顔を赤らめる都さん。


なんか……とてつもなく……気持ち悪い現場に遭遇してしまったゾ(真似)


俺の存在を忘れてその場でいちゃいちゃしはじめた俺は、そっとそこから立ち去った。

お腹が空いているが、とりあえず部屋に戻ろう。


親父の言いかけていた「屋台の女の子がうんたらかんたら」も気になったが、


都さんの「女の子じゃなくて、妹として杏奈を見る」という言葉が、胸にひっかかった。


俺はとっくにそう見ている。

なんだか、接触ハプニングがやたらとあったここ最近のことだけど、杏奈はあくまでも妹なんだ。

そう思って、対応してきたつもりだ。


つまり、恋愛対象として見るなってことを、都さんは言いたいのだと思う。


心配しなくても……妹となんか……恋愛なんかできるかよ!


俺はわけもなくイライラして、手元にあった枕を放り投げた。


杏奈も杏奈だ。あんなに俺を信じきるなよ。隙を見せるなよ。


俺はふぅっと大きなため息をつくと、帰ってきてからずっと触ってなかったスマホを手にとった。


と、そこには、ももてぃんのLINEが……届いていた。


「HAPPY NEW YEAR! 持田瞬さま。今年もよろしくお願いします」


ももてぃん……。

そうだ、俺にはももてぃんがいるのだ。

返事をするべく、俺は指を画面に落とした。そして…ほんの勇気も出して、

会える日を聞いてみたのだった。


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