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おれの彼女は、アイドルなのか?!  作者: とっぺん
①アイドルたちとのクリスマス
3/80

①-3 

スマホを取り出して、発信者を確認すると親父だった。


「もしもぉ~し。瞬くんかい?」


緊迫感のない、のんきな声が耳に伝わってくる。

俺のスマホにかけてんだから、俺が出るに決まってるのに、親父は必ずこう聞くのだ。


「瞬くんに話したいことがあるんだけど、もう家に帰ってくるかな?」


「ああ。いま駅に着いたとこ。夕飯食べてきた。てか、親父今夜は夜勤じゃなかったっけ?」


「ああ…今夜はね…くすくす……代わってもらったんだ」


くすくす…?

えらく上機嫌な様子だ。それに…よく耳を澄ますと、ガサゴソ後ろで動いているようなノイズ音が混ざる。


「あれ? 誰かいるの?」


「え!あ……いや、そうじゃないんだけど」


いるんだ…。

なんとなく俺は感づいたので「ケーキ買ってあるよ」と言ってみた。


「ああ、さすが瞬くんだね……助かるよ」


「じゃあ」


電話を切った後、俺はその場に立ち止まって、空を見上げた。

夜空には、星が転々と散らばっていた。

同じように見えても、全部違うかたちで、それぞれ目もくらむような長い歴史を持っているのだろう。


死んだ人は星になる。なんてよく言うけれど……あの中に母さんの星はあるのだろうか?


母さんが死んでから11年になる。

親父が再婚しても……もう、母さん恨まないだろ。

今や写真だけでしか、ちゃんと顔が確認できなくなってしまった母さん。

悲しいことに、日常に追われている間に少しずつ記憶は奪われていく。


ただ親父にとっても俺にとっても、母さんは最高の女性だった。それは変わらない事実だ。とにかく人を思いやる優しいひとだった。

生きてきた頃同様に、俺たち男2人が助け合いながら暮らすのを天国からサポートしてきてくれたのだと思う。


思い出されるのは、こうした冬の寒い夜、俺をだきしめて一緒の布団で眠った光景。母さんの胸が柔らかくって……俺は頬ずりしたっけ。

ぽんっと頭に浮かんだのは、さっきのサンタ姿のおっぱい。

ぶるぶるっと、水浴びをした犬のように頭を振る。


ちがうから!と、自分でツッコミをする。


確かに少し、母さんに似てなくはないけど……母さんはあんなに若くないし。

てか、33歳がどうたらとか言ってたな。まあ、それくらいになったら少し面影は感じるかもしれないけど…。

あの優しそうな口調も……良かったなあ。

ああー。少し優しくされるだけで、女の子を好きになってしまう俺の性格ったら。よく知りもしないのに。


止まって空を見上げたり、頭をふったり、ぶつぶつ言いながら歩く俺を、さけるように青い自転車が越していく。

とおりぬけるときに「キモッ」という声が聞こえた。


前を行く自転車を見ると、どこかで見たような?あれ、俺の自転車に似てるなあなんて。乗っているのは、どうやら少女らしい。腰まで伸びた長い髪が風にたなびいている。耳当てがキャラクターもののようだ。


暗くてよくわからないけど、たぶん勘違いなのだと思う。

「キモッ」て言われたことも。俺の自転車だって思ったことも。

青い自転車なんてよくあるしな。


俺の家は都心から8駅離れた住宅地のなかにある。

大きくはないけど、じいちゃんのころからの和風住宅だ。築50年くらいか。

普段は閑静な住宅街なのだが、今夜はクリスマスイブのためか、街中がソワソワしているようだ…。


駅から約10分ほど歩いて、家の前まで来た。

ガラガラと門を開けると、俺の例の自転車がでんっと鎮座していた。

いままで働いてきたよ~といわんばかりに、カラカラとタイヤが回っていた。まるでランニング後のように酸素不足な印象を受けた。

自転車を元の場所に直して、玄関に向かう。


鍵を出そうと鞄の中身をガサゴソしていたとき、門灯がついて扉が開いた。


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