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智毅と別れ、電車に乗って、家の最寄駅の改札まで来た。
正面に見える中央ロータリーには、普段鳥が集まってギャアギャア騒いでいる木があるのだが、冬の間は電球を巻きつけてライトアップするらしく、きらきら光るクリスマスツリーと化していた。
ああ…今日はクリスマスイブだもんな。
せめてチキンでも買って、クリスマス気分を味わうか…と思い、あたりを見渡した。
すると、コンビニの前で、サンタのコスプレをした女の子が立っていた。
合コンのときとは違って、今度は1発で目が合ってしまう。
あっと思う間もなく……。
すぐに「いらっしゃいませー。ケーキいかがですか…にゃん」
と言われてしまい、思わずたじろいだ。
見てはいけないものを見たような気がして、このままその場を後にしようかと足を向けた。が、振り返って女の子を見ると、真っ赤な顔でうつむいている。
「…もう。恥ずかしいよう」
この寒空のなか、チューブトップを着たミニスカサンタには、猫のしっぽがついており、寒くてしっぽまでぶるぶる震えているようだ。
くいくいっとスカートをのばそうとしているが、伸縮性がないため、どうやってもふとももまでの長さにしかならない。
髪はボブで、少したれ目だけどパッチリした目で……けっこう可愛い。
どんな事情で、働いているのかわからないが、寒いのにとてもかわいそうに思った。
同情しながら見つめていると、俺に向かって「買ってくれませんかぁ?」と切なそうな表情で聞く。
「でも、俺……あんまりケーキって好きじゃない……」
「ご家族のために……どうですか?」
「でも……」
「買ってくれない…ん…ですね」
そういったとたん、女の子の目からぽろりと水晶のようなものが零れ落ちた。
「(な、なみだ)?!」
驚いて、その場をとびのいた。
彼女はそんな俺を気にすることもなく、語り始める。
「私、実は魔法にかけられてて……」
「……(?!)」
「今夜0時までにクリスマスケーキ買ってもらわないと、魔法がとけて33歳のおばさんに戻っちゃうんです~~」
両手を顔に当てて、おいおい泣きだし始めた。
……?………。はい?
魔法? 33歳? 目の前の女の子はどう見たって20代前半に見える。
こんな嘘までついてケーキを売らなきゃならんのかぁ。
なんて…かわいそうなんだろう。
俺は財布を取り出すと、紙幣を確認した。なんとか3千円はあるみたいだ。
「買うよ。ただし、一番安いのにして。俺もうお金ないからさ」
「ありがとうございます~~~!!」
にこっと泣き笑いしてくれた女の子に、胸が一瞬ときめいた。
こんな子が彼女だったら、いいだろうなあ……手つないだり、胸でもふもふされたり…あ、いけないいけない。すっかり智毅の洗脳にかかっている。
けど俺だって……男なのだ。
たどたどしい手つきで、一番小さいケーキを箱詰めしてくれている女の子の胸にどうしたって目がいってしまう。うん、なかなかの巨乳だ(コホン)
「お買い上げありがとうございます」
と言って渡されたときに、一瞬手と手が触れ合った。
少しビリッとしたけれど、そのときは、静電気が起きたんだなとしか思わなかった。
「それと……これもしよかったら、来てください」
「…?」
手渡されたのは1枚のチケット。
見慣れない英語で書かれたアイドルのライブだった。
「わたし、実はアイドルなんです」
「へえ……」
「あなたの前で一生懸命歌いますから。どうか聞きにきてくださいね」
なんて…。
いかにも男たちに言い馴れている常套句。これに心を動かされるなんてない、と思っていたのだが、気が付いたらコクンとうなずいていた。
サンタの格好を指差して、
「風邪ひかないようにね」とおせっかいだけど言ってみた。
女の子は無邪気な笑顔でこう返してくれた。
「ありがとう!あなたもね!」
久しぶりに女の子と話すことができて、しかもその笑顔を俺に向けてくれた。
嬉しくて心が温かくなった俺は、はずむ足取りで家に向かう。
そのとき、胸にしまっていたスマホが振動を始めた。




