③-6
昼過ぎ…。
家に帰ってから支度をして、待ち合わせの神社まで来た…。
「よおよお! 瞬! あけおめ!」
智毅がそう言いながら、向こうから駆けてきた。
遅れること5分、案の定寝起きといったところだ。
邪気のない笑顔を見たら、さっきの杏奈たちとのやり取りで、腹を立てていたことがどうでもよくなってきた。
「あけおめ」
智毅と一緒に歩き出すと、不思議と安心感がわく。
年末のクリスマスから怒涛の日々が続いたから、こうしてなんら変わりのない智毅との日常が、貴重に思えてくる。
毎年繰り返される新年恒例の行事。
杏奈が機嫌悪くなろうとも、こっちを優先させなきゃ、智毅にも悪い。
まあ新年そうそう、男と2人で初詣っつうのもかなりしょっぱいんだけどな。
智毅が言いにくそうに、俺に話しかけてきた。
「俺、昨日萌えキャンでリリカさんと、ついにキスした」
「おお!」
「手もつないだんだぞ」
「へー」
「あとは、押し倒すだけだ! なんちゃって」
そのとき、俺の頭に広がった光景は、昨夜の杏奈との……。
うおお…あれは事故だって!
決して俺が押し倒したわけではない!!!
頭を振る俺に、智毅が不思議そうな顔をする。
「瞬、昨日ちゃんと寝たか?」
「あ?」
「なんか、寝不足の顔してる。朝もちゃんと寝てきたんだろ?」
言うなら今かもしれない。
俺は智毅に家庭内のことを話すことにした。
いつかは話そうと思っていた。
今日みたいに、突然杏奈絡みのことが起きたら、ドタキャンってこともありえるし。
告白したのは、
杏奈はアイドルだってこと。そして静蘭に通ってるということ。
いろいろと大興奮すると思っていたが、智毅は意外にも冷静だった。
「へーそうなんだ。マリアンナねー。俺聞いたことねえや。ああ…静蘭に通ってるって、だから瞬、あのときいきなり腹が痛いとか言い出したんだな」
「悪い。智毅の楽しみを奪うような真似をして」
「いや、別に。教育実習もあるし、いつかは入れるんだろ」
ニタアと笑う智毅は、どうやら静蘭での教育実習を希望することに決めたらしい。俺は絶対に行きたくないけどな。
というか、智毅がいつもとは違って穏やかで、俺は少し拍子抜けする感じだ。
いつもは、いのししのように猪突猛進、興奮する奴なのに。
理由は…わかった。
「ああ……切ないよ。両想いになった今、リリカさんに会えない時間がもどかしい」
智毅は、萌えキャンで頭がいっぱいだった…。
「あの、困ったように笑うたれ目と、笑った時にできる笑顔…。超癒されるんだ。ああ…ああいう人が現実にいたらいいのに」
今の特徴を聞いていて、俺は当てはまる人を1人思い出した。
…ももてぃんだ…。
変身後のももてぃんは、智毅の好みにどストライクなのだ。
この事実に俺はしばらく言葉を失った。
昨日の闇闇ガールズの話も、話のタネでするつもりでいたが辞めた。
それこそ、荒ぶるタタリガミのごとく、興奮することだろう。
ももてぃんのことは…しばらく俺だけの秘密にさせておいてほしい。
彼女になるとかならない、以前に、ももてぃんとは静かに関係を育みたいのだ。
そう思う女性に巡り合えたのは、初めてだった。
行列ができていたため少し並んで参拝すると、
俺は少し「恋愛」のこともお願いしておいた。
彼女いない歴21年を、どうぞ更新しませんように…と。
ももてぃんと、少しでもいいから仲が進展しますように。
それと、教員試験も受かって、無事に先生になれることも忘れずにお願いしておいた。
あと…隣にいる智毅に、ももてぃん以外で!リリカさん似の女性が現れますように…ともお願いした。




